軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

毒です。毒です。毒です。

紫小蜂の奔流――――

いや、 嵐(・) と形容するに等しい程、無数の紫小蜂が入り乱れていた。

第一形態のような統率感はまるで失われており、荒々しく無作為に飛び回っている。

それが逆に攻撃を当て辛く、加えて飛行速度が尋常ではない程に素早い。

それ故に、我々を翻弄するに至る。

「ちっ……やり辛ぇ!」

[毒の状態になりました]

「……っ!」

俺達の想像通り、紫小蜂には毒が含まれており、体当たりを掠めるだけで毒が全身に回る。

体感1秒毎2の毒効力を持ち、元気の御守りのステータスにある自動体力回復の1秒毎1を上回るダメージが、徐々に蓄積されていく。

バンッ!

バンッ!

ドッカァァァァァン!!!

それに加えて制限された足場での戦闘。

下手に動き回る事も出来ず、徐々にリソースを削られる。

「皆さん、体力回復ポーションは残っていますか」

「大丈夫――――と言いたい所だけど、このままだと底が尽きるかも!」

「同じく!」

この状況を打破するには、やはり本体に大ダメージを与える他無い。

だが、この嵐の中、再度穴をこじ開けようにも即座に閉じられてしまうだろう。

結局、他の紫小蜂に邪魔されて火力を出せず仕留めるには至らないのがオチだ。

「皆、少しづつ前の岩に飛び移ろう。そして、ボス本体まで出来る限り近付くんだ……そこに、爆弾愛好家の爆弾をぶち当てる」

爆弾愛好家の『巨黒爆弾』は、あくまで近距離の存在を爆破させる為の遺物。

もしその爆弾を当てさえすれば、ヴェスパ=レギナを怯ませ、大きな隙が生まれるかもしれない。

「無茶です! それだと、私達も巻き込まれます!」

しかし最大の懸念点は、その爆発に俺達も巻き込まれる可能性が高いという事。

常に紫小蜂が飛び回っているという事は、もし近場の紫小蜂にでも当たれば即爆破してしまうだろう。

「――――無茶を承知だ。どうせ、このままだと確実に負ける。なら、一縷の望み賭けるのみよ」

「赤月、俺はやれるぜ。自爆覚悟であの女王蜂を爆殺する!」

「――――いや、それは最終手段だ。爆弾愛好家以外は、周囲の紫小蜂を少しでも殲滅し巻き込まれる可能性を少しでも減らす」

ぶっちゃけ、本当に滅茶苦茶な作戦だ。

成功確率なんて無いに等しいのかもしれない。

だが、その成功確率を ゼ(・) ロ(・) にしては駄目だ。

それは降参も同義、負けを受け入れているのと同義だ。

「……分かりました。やってみましょう」

「無理だったら無理だったで、もう一回挑めばいいしね!」

俺達は覚悟を決めて、少しづつ前の岩へと飛び移る。

1歩、また1歩と嵐の中を掻い潜り、ヴェスパ=レギナの前まで、着実に進んでいく。

道中、数多くの紫小蜂が突撃するも、近付く者全てを撃ち落としていった。

「あと少し……あと少し……!」

「――――よし、ここが限界だ」

爆弾愛好家はヴェスパ=レギナの正面に立つ。

俺達は1個隣の岩に乗って、爆弾愛好家の周辺に飛び回る紫小蜂を全力を撃ち落としにかかる。

一瞬、そう一瞬でも良い。

攻撃されないであろう余白を生み出せれば、それだけで勝ちに近付く。

「…………………………」

爆弾愛好家は深呼吸をする。

タイミングは1度きり、失敗すれば全てが瓦解し、攻略は負けに終わる。

「……………………ここだ!」

爆弾愛好家は『巨黒爆弾』を取り出す。

そして、大きくヴェスパ=レギナに向かって投げ出した。

ドッカァァァァァン!!!

「キェィィィィィィィィ!!!」

ヴェスパ=レギナはその衝撃に耐えきれず、大きく怯み、仰け反った。

「終わりだ!」

俺達はその隙を逃さず、撃てるだけの弾全てを注ぎ込み、連射する。

『巨黒爆弾』を投げた直後の爆弾愛好家も、即座に『推進弾発射砲』に切り替えて発射、2度目の本体爆破を成す。

「キェィィィィィィィィ!!!」

ヴェスパ=レギナは甲高い悲鳴を上げる。

その瞬間、無数の紫小蜂が一斉に力を失い、地へと落ちていった。

そうして巨大な女王は、ボロボロに崩れ去り――――

絶命した。

[ダンジョンボスを撃破しました]

[毒蜜女王 ヴェスパ=レギナを倒しました]

[『毒蜜女王の毒腺輪』を入手しました]

[『蜂王の統率環』を入手しました]

[5000HGを入手しました]

[ランク25になりました]

[ダンジョンの入り口まで転送します]

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

『ノドカ山脈』

「やった……やった……よな?」

「あぁ、俺達は賭けに勝った」

「――――うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

爆弾愛好家は感極待って叫ぶ。

俺達は確かにあの地獄のようなダンジョンを攻略した。

あの無茶とも呼べる作戦を見事遂行し、誰1人欠ける事無くクリアを果たしたのだ。

「よ、良かった……」

「ですね……上手く行って……良かったです……」

激闘を終えた感動というのは計り知れないものだ。

それも俺達が全滅する事もあり得た死闘。

そこから生還したという事実が、嬉しさを爆発させる。

「……で、ここ何処だ?」

だが冷静になって見渡してみれば、周囲には数々の山脈が連なる高所だった。

湿った密林の空気とは違う、乾いた風が頬を撫でる。

表記も『ムシムシ密林』ではなく、『ノドカ山脈』へと変わっていた。

「……あ〜もしや、あのダンジョン『巨壁回廊』と同じカテゴリーの奴だったんじゃないか?」

そう思えば全てに納得が行く。

そもそも『蜜密洞窟』に行くまでに、俺達は結構時間をかけて歩いていた。

やけに多い蜂のモンスターに、脅威の4階層、強すぎるダンジョンボス――――

「つまり……私達は知らず知らず、関所のダンジョンに挑んでいた……という事ですか?」

「良く私達倒されなかったね……」

軽く適当なダンジョン攻略するつもりが、中々重めなダンジョン攻略になってしまったな。

……まぁ、勝てたから結果オーライという事で。

「……ひとまず、皆お疲れ様だな」

「お疲れ様です」

「あ〜疲れた〜」

「まだあんま実感ねぇけど……勝てて良かった」

思えば……前に『巨壁回廊』を攻略した時も、木こりとの即席パーティだった。

皆と一緒にダンジョン攻略するのも面白いな。

「……あ、2人共、せっかくだしフレンド申請送っておくわ」

「ありがとう〜」

「有り難く頂戴します」

[プレイヤー 黒豆がフレンド申請を承認しました]

[プレイヤー 鬼巫女がフレンド申請を承認しました]

「あ、俺も送っておくぜ!」

「爆弾愛好家さんは……いえ、受け取っておきます」

「え、何その反応……」

和気あいあいとして良い雰囲気だな。

実の所、俺はこのゲームをソロで攻略しようとしていた。

だがこれを見ると、パーティでの攻略も悪くない。

「じゃ、お先にログアウトするわ」

「おう! 今回はありがとな!」

俺は満足気にログアウトした。