軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十話:一蓮托生

二千万円。

1982年の日本において、それは千葉の住宅街に立派な一軒家が建つほどの、途方もない金額だった。隣に座る母・佳子が、息を呑むのがわかった。

だが、忠夫は眉一つ動かさず、静かに首を振った。

「ええわかりました。‥‥でも現金でいただくつもりはありません」

「……ほう」

天童が忠夫を探るように少し目を細めた。

「……その二千万円分、全額を『任天堂の株券』でください。」

一瞬の沈黙。

「……株やと?」

「……僕は数年後、この会社の価値が今とは比較にならないぐらい上がると確信しています」

忠夫は、天童の凝視を真っ向から受け止めた。

「僕は自分の知識と任天堂の未来を信じている。だからこそ株を持つことによって、一蓮托生のパートナーになりたい。」

天童は忠夫の目を凝視した。

一瞬の後、天童の口元が歪み、笑い声が上がった。

「……クハハッ! 面白い! 自分の知恵を信じ、ワシの器量まで試すか。ええやろう。……ワシの持分から用意したる」

「ありがとうございます。‥‥早速と言ってはなんですが、さらに価値を上げる為の提案があります」

「提案? 言うてみなさい」

「……東京大学の助手に、今川優という人がいます。彼を、このプロジェクトに引き込みたいんです」

「イマガワ……? ‥‥植松、知っとるか?」

植松が考えながらも首を横に振る。

「……いえ」

「彼がいれば、このハードはただの玩具ではなく、世界を変える『知能』になります。結果として原価をさらに抑えながら、性能を強化する……。それを可能にするのが、彼の構想するシステムです」

天童は不敵に笑い、忠夫を見た。

「……おもろい。君がそこまで言う男や、ワシが場を作ろう。……植松、忙しなるぞ」

1982年、夏。

ビルの一室で、日本のコンピュータ産業の運命を塗り替える「密約」が交わされた。窓の外に広がる入道雲の下、忠夫の耳には、未来が加速度を上げて動き出す爆音のような音が聞こえていた。