軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第990話 瘴気のお勉強⑮倍

「それじゃあ、ミラーハウス空間から瘴気部屋に瘴気移動」

ドヨーンとした封印された瘴気を思い浮かべ、それを瘴気部屋に引っ張り込む。ミラーの力を使ったのとは違って、難なく、するんと持ってこられた。

おお、何もなかった空間に、ドヨーンとした何かが存在している。

みんなの喉が鳴る。

「魔力は?」

父さまに聞かれてボードを見る。

「マイナス15」

「減ったという意味だったな?」

わたしはそうだと頷く。

「ここからどうするんだ?」

「瘴気部屋に小部屋を作る」

「小部屋?」

「しょうちゃんの中に小部屋を」

そちらにみんなを引き連れて移動。父さまに言われる前にボードを確認。

「マイナス1500」

父さまは腕組みをしている。

「瘴気部屋の瘴気のどれくらいをこちらに移すんだ?」

「300分の1にしようと思う」

ドームひとつなら距離にして300メートル四方以内だ。12個の封印にヒビを入れるのに12箇所も見える範囲。

「1000億分の1のミラーで魔力は1000だったか?」

「うん。その300分の1ぐらいしか使わないと思う」

「慎重にな」

わたしは頷く。

「瘴気部屋の瘴気を300分の1ミラーする」

おおおおおお。

できたね。

「姉さま、やったー!」

エリンが可愛い声をあげた。

「リディア、大丈夫か? いくつも魔法を使ったな」

「ミラーを使うと、……魔力10減ってる。魔力自体はそうでもないけど、何かを消耗するみたい」

「少し休みなさい」

もふさまが大きくなった。わたしは甘えて、その毛皮の上に座り込む。

みんなにも飲み物を配る。お菓子はいるかを聞くと、軍団以外はお菓子はいらないとのことだ。わたしは聖水を少し飲んで、聖水いりチョコ菓子を食べた。

「さらに300分の1だと〝見える〟範囲だな」

兄さまに写した地図を見せてと言われて、わたしは写し紙を渡した。

「どっちが北かわかるかい?」

そこは抜かりない。ここに呼び込む時にドアから一番近いところを北と合わせている。伝えると兄さまは地図の向きを逆にする。

「ここからは私がやるよ」

「兄さまは土魔法持ってないでしょ?」

「この距離なら走っていけるし、風でなんとでもなりそうだ」

「姉さま、僕たちもできるよ」

「そうよ、休んでて」

「リディアは瘴気部屋に行きなさい」

「一瞬だけ、300分の1の瘴気がどれくらいか感じてからにする。ショウちゃんにそうしてもらうから」

そう告げると、父さまと兄さまは顔を合わせている。

一度はどれくらいか経験しておかないとね。

「それにしてもこれが1000億分の1のさらに300分の1か。玉にどれだけ入れられるかわからないけど、その数だけですごい数になりそうだね」

「それなんだよね、問題は」

わたしは聖水をもう一口含んだ。

『玉はそこまであるのですか?』

ベアに首を振る。

「うーうん、ここまで数がいるとはなー」

「バイ玉の反対のスキル持ちがいたらよかったのにね」

「兄さま!」

「ん?」

「もう一度言って」

「え?」

「もう一回!」

「ええと、バイ玉の反対のスキル持ちがいたらなって思ったんだけど……」

『誰かいるのか?』

『知り合いか?』

もふさまとレオの言葉をアオが訳す。

「わたし、バイ玉知ってた……」

「そうだろうけど、それがどうかしたのか?」

父さまに問われる。

「わたし、前に〝マイナス〟したの。自分のスキルを」

「え?」

「〝プラス〟を知ってるから、〝マイナス〟できた」

「ん?」

「倍をスキルにすれば、半分ができるはず!」

「どういうこと?」

「わたし、縮小できる!」

「え」

「ええ?」

そうだ、なんで思いつかなかったんだろう。

「兄さま、ありがとう!」

「リディア、どういうことだ?」

「わたしバイ玉を知ってる。倍にするスキルを知ってる。そのスキルをわたしにプラスすれば、わたし四則計算、それから二乗に平方根。わたし瘴気を小さくする手伝いができる」

「フランツ、リディアの言ってることはわかるか?」

「四則計算まではわかりますが……。リディー、それは君ができることだとしても、君は瘴気に携われないだろう?」

「あ、うん、そうだね。でもなんかこれは魔具が作れるんじゃないかな?」

「だとしたら、それはアランに相談して決めよう。今の段階ではまだできないことだ。今は封印がうまく解けるか。解けてそれをエリンとノエルが玉に込められるか。私も魔法陣でやってみようと思ってるけど、それを目標としよう。で、どうですか、父さま」

「そうだな、フランツのいう通りだ」

「そっか、そうだね」

わたしも頷く。

兄さまがどんな技を使っているのかわからないけれど、簡易地図の六芒星の頂点と線の交わるところを光らせる。

それが上へ上へとあがっていく。六芒星を保たせたまま拡大。ドヨーンとした何かの先とほぼ同じ大きさになると、その光を下へとおろす。

エリンとノエルが走り出し、その点の下を土魔法で何かした。するとドヨーンの色味が少しだけ濃くなった気がした。

父さま、もふもふ軍団たちもその点目掛けて行った。

次々と地面に何かするたびにドヨーンは色を濃くしていく。

もふもふ軍団たちもパンチしたり、蹴ったり、掘ったり、〝衝撃〟を加えればそれはヒビ入れた何かになったようだ。恐らく封印も1000億分の1の300分の1、だからね。みんなが戻ってきたところで、エリンたちは渡しておいた玉となる魔石を収納袋を逆さまにして地面に山と築く。

「全部やる必要はないからね。今日はできるかの確認でもあるから」

「こっちは大丈夫よ。姉さまこそ、ショウちゃんに瘴気確認後、すぐに瘴気部屋本体の方に移動させてもらって」

「そうする。みんな、よろしくお願いします!」

ショウちゃんに再び指示を出し、身構える。

「じゃ、いくよ」

兄さまが最後の頂点の地面に風魔法を打った。

ん? こよりみたいな細い白い煙?

地面から細い白い蛇が空を目指してあがっていくような……。

それが少しずつ色を濃くして、暗い色を帯びる。

どこかからきしっと何かが軋むような音がする。

音なく何かが割れている。封印の表面の何かが割れている?

割れた何かはハラハラと地面に落ちて……ドヨーンとした何かがますます暗くなっていき、目の前に真っ黒の雲があるかのような錯覚。

あ、ダメだ。

「移動!」

わたしは叫んだ。

最後まで確認できなかった。瘴気部屋でひとり、大きく息をする。