軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第989話 瘴気のお勉強⑭瘴気部屋

学園を休んだら、速攻でアダムから伝達魔法がきた。

アラ兄たちに休むことを伝えてもらったんだけど、何かあったかと思わせてしまったみたいだ。瘴気を分散させる研究のために休んでいると返信しておいた。

父さまと兄さまは午前中お仕事なので、というか、仕事しなくちゃなのに午後に無理やり時間を空けようと、無理をさせているに違いない。

わたしはといえば、することは思い浮かばず、ベットにゴロンとしうとうとして過ごした。

そういえば半日だけど、こんなにのんびりするの久しぶりかも……。

『リディア、リディア』

もふさまに呼ばれていた。

あれ? なんか掌を揉まれている?

ん?と目をやっとあけて。

え。兄さまの端正な横顔が見える。

夢見てるのかな?

小さな頃なかなか起きないでいると、よく母さまがそうしてくれた。手のツボっぽいところを指で押して、特に痛がるところはないか調べていたのかな? 悪いところがあると呼応して、同じ圧力でも痛んだりするから。それを見ていた兄さまや双子兄が真似してた。

マッサージ師はきれいな顔でわたしに視線を定める。そして微笑んだ。

「リディー、起きられるかい?」

顔が近づいてきて、頬にちゅっと。

え?

え?

えええ?

「に、兄さま、本物ーーー?」

わたしは半分起き上がって、お尻で反射的に後ろへと下がる。そして無意識に頬を袖で拭いていた。

「リディー、逃げるの? それから拭いた? 傷つくなー」

「に、兄さま、なんで部屋に?」

「時間になっても降りてこないから迎えにきたんだ。アオから寝ているっていうから起こしに入った」

ね、ね、寝顔みられた!

「に、兄さま。これからは寝ている時はわたしの部屋に入らないで!」

「どうして?」

きれいに首を傾げる。

そんなの! 神に祝福されたアーティストが作り上げたように美しい兄さまは、起きたてだって、寝ている時だって、たとえ歯軋りする人だとしてもかっこいいだろうよ。けどねー、一般人は違うの。

まだ鏡も見てない、そんな顔を晒すのはいやーーーーっ。

「しゅ、淑女の部屋に勝手に入ってはいけないでしょ!」

「淑女は淑女でもリディーは私の婚約者だ」

「こ、婚約者ならなおさらです! 節度を持ってください!」

もう遅いけど、顔を両手で隠す。

「顔を洗ってきます」

洗面台に駆け込む。

顔の赤いわたしがいる。

手を下に敷いて寝ていたようで、指の痕がついている。

せめてよだれを垂らしていなかったのが救いだ。

顔を洗ってから、頬を二回叩く。

ちゃんとしなきゃ。

わかってる。昨日の微妙な空気で別れたことを気にした兄さまが、きっかけを作ろうとしたんだということは。

でもどうにも恥ずかしくて、うまくいかなかったーーーっ。

感情の制御がうまくいかない。

……多分あの時から。マシュー先生のあの言葉は、未だにわたしをこんなに揺さぶるんだ。ちょっとは成長できたと思っていたのに、全然だな。

あまりこもっても兄さまを心配させるね。

それに父さまも待たせているだろうし。

もう一回、頬を叩く。

ちょっと力を入れすぎた。でも気合が入った。

よし。

「お待たせ」

出ていくと、兄さまをはじめ、もふさま、レオ、アオ、アリ、クイ、ベアが勢ぞろいしていた。

「サブハウスに行こう」

兄さまの差し出した手に手を乗せる。

「フリンキー、みんなをサブハウスに」

「イエス、マスター」

次の瞬間、サブハウスにいて。エリン、ノエル、父さまが揃っていた。

サブハウスを出ると、もうそこから空気が淀んで見えた。

父さまが顎を触りながら、領地の方に見える淀んだ何かに目を凝らしていた。

「これが封じられた瘴気か」

「封じられていても禍々しいものですね」

兄さまも重たい感想を漏らす。

「姉さま、ここからまたミラーするの?」

「いいえ。まず新しい空間を作って、そこにこの瘴気を丸ごと移す」

「移す?」

「ミラーをすると新しい空間が自動的にできると思っていたの。でも、指定するか、自分のいる空間にそれが現れるみたいだから、まず空間を作る」

「空間を?」

「ルームを作る感じね。それで移す」

「ロビンに聞いたところだと、リディアはミラーの作業で消耗して見えたそうだが?」

「初めて使ったからかな? でもね、1000億分の1のミラーで魔力を使ったのは1000だった。

ルームを作るのは、前より魔力を使わなくなったし、今回はその量を移すだけだからそこまでも使わないと思う。魔力は増えてるから、その後にその移した分から300分の1をミラーして、封印を解いても魔力はなくならないと思う」

父さまが静かに頷いた。

「ひとつひとつ、魔力を確かめながら進めよう」

「はい」

わたしは息を吸い込む。

「瘴気部屋、作成」

目をつむる。

瘴気を置くだけだから広さだけあればいい。ドアがひとつ。あ、そっか。仮想補佐網を作ればいいんだ。それで封印を解いたらすぐに部屋から出してもらうようにしておけば。

広さだけあればいいからか、割とすぐに完成した。

「できた」

父さまたちを招き入れる。

「な、何もない……」

ノエルが周りを見回している。

「仮想補佐網を作るね。そうすれば、封印を解いたあと、すぐにわたしを外に出してもらえるから」

「なるほど。その前に魔力は?」

「5000減った」

「仮想補佐網はどれくらい魔力を使うんだ?」

「多分3000くらいだと。ハウスさんとアオだけにまず繋げる。それなら全部で4000ぐらいなはず」

父さまが頷いた。

ノエルとエリンに仮想補佐網の名前は何がいいか尋ねる。

「え、あたしたちが決めていいの?」

頷くと双子で顔を見合わせている。テレパスしてるのかな?

「じゃあ、瘴気の〝ショウちゃん〟」

……瘴気の、ショウちゃん……。

双子が満面の笑みだから、いいか。

「瘴気部屋のマスター・リディアが命ずる。〝ショウちゃん〟あなたがこの瘴気部屋の管理者よ」

ショウちゃん……そう口にした時、なぜか胸のおくが痛んだ。

部屋全体からホワっと何かが出てくる。魔力が行き渡っている。

「ショウちゃん、ハウス管理人・ハウス、サブハウス管理人・アオと繋がって」

アオが硬直してガガガっと機械的な音が出る。

またガガガと音がして、ハウスさんの声もした。

『マスター、瘴気部屋・ショウちゃんと繋がりました』

「繋がったでち」

ショウちゃんは、まだ誕生したばかり。みんなに聞こえるような声は出なかったけど、わたしの中に「YES、マスター」と響く。

「完了」

瘴気部屋は整った。

「父さま、呼び出した瘴気をこちらの空間に移すわ」

「その前に魔力を見なさい」

あ、忘れてた。少しも辛くないから大丈夫だと思うけど。

「4500減った」

父さまが頷く。