軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第988話 瘴気のお勉強⑬六芒星

食事の後、父さま、ノエルの転移で来てもらった兄さま、それからアラ兄を交え事後報告をし……。

重たーい沈黙が続いている。

みんな自分の思考の中に彷徨っている感じ。

声を荒げて怒ってくれた方がどんなにマシか。

「あの、ごめんなさい。本当にごめんなさい」

「……その件は保留にしよう。封印はどう解くつもりなんだ?」

ものすごく事務的に父さまに尋ねられる。

「封印の解き方を知ってるの?」

アラ兄の声も固い。

「知ってるわけじゃないけど、未来視のユオブリアが落ちた時と同じやり方で解けるんじゃないかと思う」

「同じやり方って?」

わたしはユオブリアの簡易地図を収納袋から出すフリをした。

地図の上に薄い紙を置く。うっすら見えるユオブリアの外枠を簡単になぞる。

「封印の魔法陣は恐らく六芒星。」

「ろくぼうせい?」

「上むきの三角形と下向きの三角形を重ねた形、これは六芒星というの。この魔法陣で封印しているんだと思う」

わたしは六芒星を紙の隅に書いてみせる。

誰かの喉を鳴らす音がする。

「瘴気の封印をどうやって破ったのか知りたくて、未来視で何があったか教えてもらった。襲撃場所が多かったからよくわからないと思ったんだけど、場所をひとつひとつ押さえていって気づいたの」

わたしは襲撃のあっただいたいの場所を、街の名前を言いながら黒丸で示す。

「そうすると2箇所足りないから違うかと思ったんだけど。調べていくうちにわかった。大きな被害はなかったけど荒らされているところはあって」

と三角のマークで2箇所の街をつけたす。

「頂点と、その三角形の交わるところ、そこが攻撃されていた」

わたしは点を線で繋ぐ。上向きの三角と下向きの三角が現れる。

すると自動的に三角形の交わるところにも線が通る。

「封印を解くにはその12箇所に何かをするんだと思う。学園の魔法陣を強くさせるのに、魔法陣を6箇所に土魔法で埋め込んだから」

場所がわかってその辺りを土魔法で耕せば、魔法陣をなんとかできるはず。

「封印を解くには何かしら必要なことがあるんだろうけど、その12箇所の封印を施された場所を耕すなりすれば、ひとまず封印が完璧なものではなくなるんだと思うんだ」

わたしのやることは仮説が多い。だけどその仮説で思った通りにことが運んだ時、仮説はもう少し意味を持つ。

「ミラーした瘴気を、もう一度ミラーすることはできそうなのか?」

「うん、問題ないと思う」

父さまの大きなため息。

「その12箇所への土魔法も、ひとりでやるつもりだったのか?」

「わたしも1000億分の1の瘴気がどんなふうに切り取られてくるかは確証はなかったけど、封印されているものだから、天と地に向かってスライスされているような形で呼び込むんじゃないかと思ってた。丸ごとだったらユオブリアの広さがあって大変だけど、縮小されたものなら、おおよその六芒星の点を土魔法でいじればいい。縮小された空間だから、そう距離はないと思った」

「封印が解けたら1000億分の1瘴気が溢れ出す。玉に込めるのはエリンとノエルに任せるとしても、瘴気の苦手なリディアがどうするつもりだったんだ?」

「……12箇所目いじるのを北の点にしようと思った。すぐにサブハウスに逃げ込もうと」

父さまは目を瞑ったまま頷いた。

「ひとまず、わかった。ここからは父さまが一緒の時に進めること」

「はい」

「では、リディアは部屋に帰りなさい。エリンとノエルには話がある」

わたしは無言で促され、部屋へと戻る。

兄さまが話してから一度も目を合わせてくれなかった。

部屋に戻りベッドに腰掛ける。

『なぁ、リディアはなんでみんなに秘密にしたんだ?』

膝の上に飛び乗ってきたレオが、わたしの目を覗き込むようにして首を傾げた。

「秘密にしたわけじゃなくて……なんでだろう。本当に報告がすっ飛んでて……自分のことしか考えてなかったんだね。とにかく瘴気を分散させなくちゃと思ってて、不可能と思えていたことがひとつずつできることが見つかって。それで最後はわたしの力でなんとかなるかもしれないと思ったら、気持ちが昂って。早くやってみたくて。できることかどうか見極めたくて。ミラーを使ってた」

「おいらたちもいないのに、やろうとしたでち」

「ごめん。本当にごめん!」

もふもふ軍団にも謝り続けていると、ノックがあった。

『フランツだ』

扉を開けるわたしの肩にクイが乗ってくる。

「兄さま」

「すぐ、失礼するよ」

やっと目を合わせたけど、笑顔はない。

「私にも話してくれなかったね」

「ごめんなさい。本当に他のことが見えてなくて……」

「ねぇ、リディー」

顔をあげると、場違いなぐらい兄さまがにこやかな笑顔になる。

「君を閉じ込めてもいい?」

うっ。

にこやかなのに、目が笑っていなかった。

「本当にごめんなさい」

「リディーは危うい。自分でそれがわからないのなら、私が君を止めるしかない。何をしだすかわからないリディーを閉じ込めるしか方法がない」

「兄さま、本当に気をつけ……」

「私のギフトとスキルで君を閉じ込めることは可能だ」

遮ってそんなことを言われる。

「覚えておいて。次はないよ」

目がツンドラ気候!

まずい、マジだ。……それに今までもそんなことは言っていて、冗談っていうか、願望的に受け取っていたけど、ギフトやスキルでできると断言したということは……兄さまには可能な願望であるわけで……。

「父さまからの伝言。明日は学園を休みなさい。昼過ぎからサブハウスで作業。父さまと私がつくよ。いいね?」

「……はい」

「おやすみ、リディー」

「おやすみなさい、兄さま」

兄さまは冷たい唇をわたしの額に寄せた。