軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第976話 瘴気のお勉強①編む

地下基地には、ロサと兄さま以外が勢揃いしている。

みんな瘴気に興味があるようだ。

対外的にはバッカスについての定期報告会としている。

トルマリンさんは先生役で来てもらっているのに、みんなに丁寧に頭を下げた。

「皆さまは魔法を使われたことがありますね?」

そんな言葉から授業は始まった。

「私は本来、魔法と呪術の成り立ちは同じだったと考えています。発動させる燃料として使うものが魔力なら魔法、瘴気なら呪術だったのではないかと。その頃は魔法も術を編んで使っておりました」

ダニエルが手をあげる。トルマリンさんに許しをもらい発言。

「術を編むとは、魔道具にするときの魔法陣、もしくは設計図のようなことですか? 恥ずかしながら魔道具の設計図に関して、そういうものだとぐらいしか知らないのですが」

「はい、その通りです。魔法士も昔は皆、術を編んで魔を使っていたそうです。それがいつの頃からか編むことを簡略化し、イメージすることで補って使うようになったとか」

イザークが手をあげる。

「魔法は簡略化されていったのに対し、呪術が編むことをやめなかったその違いはなんだったんでしょう?」

「恐らく、魔力と瘴気の性質に違いがあるからだと思います」

魔力と瘴気の性質の違い?

「魔力はとても素直でなじみやすい。ですから意のままに動きやすいのです。魔素もすぐに反応しますし、変な言い方になりますが、魔力は集まろうとする力が強いのではないかと思っています。魔素が集まりひとつのことを成そうとする性質が強いのではないかと。

逆に瘴気は一見素直そうですが、扱うものの力量をはかっているようなところがあります」

「力量をはかる?」

アダムがいぶかしむ。

「はい。魔法は無茶なことをしても発動しないだけだと思います。が、瘴気は術者を蝕みます。まるで扱う資格がないのだと言わんばかりに」

……瘴気、こえぇ。

もふさまはわたしの膝の上で大きなあくびをする。

「む、蝕むとは?」

「体の中に入ってきて悪さをします。手に痛みが出る、目がぼやける、そんな一過性のものならまだいいのですが、脳にまわられるともうどうにもなりません。廃人と化す者も少なくない。それで呪われた術と言われるようになったという人もいます」

ルシオが喉を鳴らす。

「ですから瘴気を扱う時、まず習うのは毅然とした姿勢です」

「姿勢?」

ロビ兄が声をあげる。

「はい。姿勢を正し、まず見た目から隙がないことを瘴気に見せます。それから各々仕草による決まりごとを作ります。これも自分を保てるよう、瘴気に支配される前にいつでも自分の意思に戻れるよう自衛のためです。とにかく瘴気に支配されないよう、見た目から、仕草から、言葉から守りを強くするのです」

呪術師って何気にすごい。

「瘴気に使われてはなりません、自分が使い手だと、こちらが術を使うのです」

そうか、トルマリンさんもアイラも独特な手法を使いながら何か唱えていた。

あれは自分を守るボディーサインだったんだね。

でもナムルはもっとナチュラルに瘴気を使っていたように見えたけど……。

「魔道具を作ったことがある方はいらっしゃいますか?」

わたしと、アラ兄、ロビ兄が手をあげる。

「3人ですね、ありがとうございます。まず、瘴気ではなく魔力で〝編む〟ことを体験してもらいます」

「魔力で?」

「魔力で魔力を編むということは……」

イザークがトルマリンさんを見上げる。

「はい、それも魔法を使うと同じことです。皆さまがいつもイメージ補強で使っている魔法を、術を編み魔法陣を描いて使っていただきます」

「それは詠唱と同じですか?」

アダムが聞いた。

「詠唱? ……そうですねぇ、似ていますが役割が少し違います。

編んだり、簡略化している魔法を使っているところに詠唱をのせると、効果的に使えます。けれど詠唱だけでは魔法は発動しません。詠唱で魔法が発動するわけではないのです」

詠唱はブースターってことか。

「瘴気にも詠唱があるのですか?」

イザークが尋ねる。

「はい。そのために言霊に込めることを習得します」

はー、そういえば言ってたな。言葉を大切にしてるって。

簡易黒板にトルマリンさんは4つの図柄を描く。

魔具の設計図には欠かせない、「火」「水」「風」「土」のマークだ。

「これが火、水、風、土を現します。自分の属性のある図柄をひとつ真似をして描いてみてください」

わたしは水のマークを紙の中央に描く。

「まず、何を使うか宣言をします。

そして、魔素を集めます。この記号が魔素です。これで図柄の外側を一周させます」

トルマリンさんは真ん中に風の図柄を描き、その外側に丸く魔素の記号を書き込んでいく。

「魔素を集め、私の魔力を動かした時に、魔素が一定方向に流れるようにさせるのが風を起こすということです。魔素は漂っていますが、火がついたり、しずくになったり、風になったり、状態が変わることはありません。なぜだと思いますか?」

みんな漠然とした質問に首を傾げる。

「お嬢さまはどうですか?」

「……安定した状態だから?」

「素晴らしい、その通りです!」

トルマリンさんが頬を上気させる。

玉の器を作る時にいろいろ考えたからね。

それで魔素みたいのは、前世でいうところの元素じゃないかと思ったんだ。

物質は動いてない安定した状態だからその形状を保っている。

「動かない安定した状態が魔素です。それを動かすには不安定な状態へと変えなくてはいけません。魔素ひとつでは安定していて何もできません。けれど不思議なことに魔素を7つ集めると、安定しなくなるのです」

魔具作りの式のカッコ前の記号は7で、その数だったんだ!

その式にいつも図柄や記号を当てはめていただけで、意味は知らなかった。