軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第952話 わたしたちの王さま⑪状況整理

「それにしても、本当に何がしたかったのか」

「どうするつもりだったのか、だろ?」

ダニエルの呟きをイザークが指摘する。

「そうですね。リディア嬢は祝賀会に参加するはずだった」

ルシオは腕を組んでいる。

「穢れにあわなければ、お城に行ってたよね?」

とダニエルに言われ頷く。

「あの人混みだ。知らない者同士が会えたかどうかは疑わしい」

イザークが唇の下に人差し指を置き、考える表情だ。

「ま、祝賀会が始まるよな」

ブライが気軽な感じに促す。

「そしてデルコーレが騒ぐ。セローリア公爵令嬢は倒れて大騒ぎだ」

実際誰も怪我をしていないのは見て取れたけれど、驚いたリノさまが気を失われて会場はますます騒がしくなったそうだ。

ブライが身振りを添えて言ったので、臨場感がでる。

「デルコーレがリディア嬢から示唆されたと 嘯(うそぶ) く。会って話をしたかどうかは置いておくとしても、リディア嬢もそうだったかを確かめられ真実をいうだろう」

ま、ダニエルのいう通りだ。わたしが会場にいれば、あの武器を振り回した令嬢の言ったことは本当か?と聞かれるだろう。

「言った言わないになるわな」

ブライが促す。

「リディア嬢はずっとフランツと一緒にいるだろう?」

イザークに確かめられ、わたしは静かに頷く。

「そりゃそうだ。女性はエスコートなしはあり得ないからな」

ブライが頷いている。

「そういえばデルコーレ嬢のエスコートは誰だったんだ?」

イザークが誰にというわけではないだろうけど尋ねる。

アダムが軽く目を伏せる。思い出そうとしている顔。

「えっと、名前が出てこない。ほら、この間おとなしい婚約者に駆け落ちされた」

「ネモフ男爵家3男、ワジム?」

ダニエルが言って、アダムが手を打つ。

「そうだ、ワジム・ネモフ。17歳。男爵家3男。調書を取られて怯えまくっているらしい。婚約者が他の人と駆け落ちして気落ちしている時に、知り合いの15歳の娘さんが学園にも行ってないから友達が少なくて、祝賀会に行きたいけれどエスコートしてくれる人がいない。でも令嬢は父親のエスコートは嫌がって。

それで相手のいない3男に、エスコートだけお願いできないかって話が回ってきたらしい。ワジムもいつまでも気落ちしているわけにもいかず、仕事の話もしていかなくてはと、顔を繋げる意味でも祝賀会は渡りに船で引き受けた。

会場内で逸れたそうだ。探している途中で顔を繋ぎたい人を見かけ挨拶をしている間にあんなことが起こった。その時のネモフ子息の様子は本人の言った通りに見えるようだ。会話していた人たちから確認が取れている。

それにおとなしい令嬢に見えただけに、取り押さえられ喚き散らす姿に真っ青になっていたって」

え、婚約者に駆け落ちされ、紹介で令嬢のエスコートを引き受けてみれば、参加した会場で刃物を振り回話される。えー、運が悪いというか、気の毒な話だ。

「ワジム・ネモフは関係者じゃない?」

一応わたしは確認した。

「今のところ怪しいところはない。って、デルコーレもロンゴも特に怪しいところはなかったんだけどな」

アダムは幼い感じに口を少し尖らせた。

「っていうかさ。リディア嬢はフランツと一緒にいる、だろ。それなのに、会ったとか脅されたとか、どう言い繕うつもりだったのか、そこがわかんねーよ」

ブライが1番の疑問を口にした。

「それに脅されて殿下の婚約者に刃物を振り回すなんて。それだけで処分の対象でしょう。処分されるより恐ろしい脅されることがあるって、どんなことなのか知りたいです」

ダニエルは冷静だ。

「成人してないから修道院送りで済むと思ったのかな?」

黙りこくっていた兄さまが口にする。

「公爵令嬢だし、殿下の婚約者だぞ。そんな方に刃物を向けてそれくらいで済むと思うものか?」

イザークが反応。

「っていうかさ。え、何、みんなデルコーレが企てたと思ってんの?」

ブライが不思議そうに言った。

「そこが気持ち悪いんだ」

とアダムが呟く。

「え?」

ブライが尋ねる。

「計画性もないような稚拙なものに思える。それがデルコーレの衝動的に浅はかな思いに突き動かされてなら話は通る。

けれど、彼女は脅されてやったのだと言ってる。

脅された内容は言わないらしいけど、公爵家の令嬢、しかも王族の婚約者に刃物を振り回す。完遂しても未遂でも罰は免れない。未成年だって極刑もあり得る。それより恐ろしい脅されることってなんなんだ?

それでも、デルコーレが考えて、やってしまったことなら、意味は通らないが、考えが及んでないと思うことができる。

けれど、ロンゴの登場でバックがいることが窺える。

バックがいるなら、もう少しまともなオツムのはずだ。それがあんなお粗末な方法で。だとしたら、そのバックは何が目的なんだ? さっぱりわからなくて、気持ち悪い!」

「騎士も含めて後ろに企てた人がいるんでしょう。でもその目的がよくわからない」

第三部隊隊長とほぼ同じ見解だね。

一般的な思考からすると、いくら考えても意味が通らないから気持ちが悪い。

「まあ、殿下の評判を落としたいが、まずあるよな」

「確かに婚約発表で刃物沙汰だ。騒がしい御代の始まりとか言われそうだよな。けどさー。王宮の祝賀会だ。陛下や殿下がいらっしゃるから警備もちゃんとしている。それをあんなお粗末な実行犯が。捕らえられるのはわかっていたと定義する。ロサ殿下の始まりが何かと騒がしいと言われるはあるだろう。それからシュタイン嬢の無実はすぐにわかるだろうけど、実行犯たちの浅はかさが露呈するだけだ。そこがわからない!」

アダムは理解力が深い人だからか、こういう意味の通じない案件はイラッとするようだ。

「案外、ものすごく単純そのままに、本当にセローリア令嬢へのやっかみだったりしてな」

みんなが一斉にブライを見る。

「な、なんだよ」

「案外、本当にそうだったりして……」

わたしたちは顔を見合わせる。

「いや。それだとリディア嬢の名前を出す意味がわからない」

「ま、そのうちわかるだろ。騎士たちが名誉挽回のために張り切るだろうから」

イザークが落ち着いた声をあげる。

そっか、そうだよね。

推測はいくらでもできるけど、結局本当のところはどちらかが口を割らないとわからないのだから。

なぜかみんなして同時にカップに手を伸ばし、お茶をいただいた。