軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第949話 わたしたちの王さま⑧不審点<前編>

慌てて立ち上がりカーテシー。

こんな場所じゃなかったら、隅々までよく見て褒め称えたいぐらいに、正装したロサはカッコ良かった。

「シュタイン伯にシュタイン嬢、新年早々、こんなことに巻き込まれお見舞い申しあげるよ」

顔をあげると、父さまは横で手を胸にやり頭を下げた。

挨拶をしないところをみると祝賀会で言葉を交わせたのだろう。

「ユオブリアの熱き小さな太陽にご挨拶申し上げます。王子殿下に信じていただけて、それだけでありがたく思います。新年のご挨拶とお祝いは日を改めてさせていただきます」

「言葉を崩してくれていいよ」

わたしは手を胸に当て、軽く礼をする。

わたしは穢れに触れた。だから王宮に穢れを持ち込まないよう、外の詰所にいるわけだけど、王族のロサがそんな穢れのところに来ちゃっていいわけ?

不安になって尋ねる。

「殿下、わたしは穢れに触れました。こんな近くにいて大丈夫なのですか?」

「あはは、心配ありがとう。何か言われないように〝太陽の剣〟を持ってきたよ」

後から聞いたんだけど、〝太陽の剣〟とは王族の身を守る小刀のことで、穢れのような死と関わる何かを断ち切れるといういわれがあるそうだ。

わたしは王族が亡くなった時に、棺の中にご自身の剣を胸に置いて埋葬されるもの、それが今世のことを断ち切って新たな世に行けるという〝太陽の剣〟だという認識しかなかった。黄泉の国へ旅立つ時に効力を発揮するだけでなく、生きている間も使えるものなのね。

「リノさまは大丈夫ですか?」

「ああ。怪我はないし、驚いて気を失ったが先ほど目を覚ました。君のことを心配しているよ」

リノさま……。

「殿下、調書の途中ですので……」

ケルバーさんが胸に手を当て、少し頭を下げながらロサに言う。

「件の令嬢はシュタイン嬢に会って脅されたのが今日だと言っている。一通り話を聞き、もちろん祝賀会の録画も見たのだろう? 受付もされていなかったし。シュタイン嬢たちは今日城に来ていない。もうわかったはずだ」

「魔具の死角になるところで話したのかもしれません」

ロンゴが声を張り上げた。

「マルゴーレはどこでシュタイン嬢と会い、剣を渡されたか、証言したのか?」

「いいえ。シュタイン嬢に話を聞けばわかると一点張りでして」

ケルバーさんが答える。

「では、せめて、会った時のシュタイン嬢のドレスのことや持ち物など聞いてみろ。誰かがシュタイン嬢を名乗っていたのかもしれない」

ハッと胸に手を当て、ロンゴが出て行った。

「殿下、調書は我々に任せてください」

ケルバーさんが訴えた時、ノックがあり長身の騎士が入ってきた。

第三部隊の隊長だそうだ。ロサに礼をしてから告げる。

「殿下、こちらのことは我々にお任せください」

「こちらのこと? 婚約者を発表した場でこんなことを起こされた私が、関係者ではないと?

会場の入園者には持ち物検査はしたはずだ。それなのに、どうして刃物を持ち込めた?」

隊長はちらりとわたしの方を見る。

「持ち物検査はしております。ですが、収納袋を持っていた場合、そこまで確認することは難しく……」

なるほど、収納袋持ちということもわたしが首謀者と裏付ける要因になったのね。

「第三部隊隊長、カイラー・ラッペ」

「ハッ」

ロサが呼びかけると、隊長は胸に手をやりロサを見据える。

「初心を忘れない丁寧な捜査は私も感心している。だが、時には大胆に攻めることも必要ではないか? 特にこういった時間が勝負の案件は」

「ハッ」

「お前にはあのマルゴーレ嬢が剣の達人にでも見えたか?」

「い、いいえ」

「君はこの件についておかしいと思ったことはないか?」

隊長さんはわたしたちを目の端で気にしながら答える。

「……おかしなことだらけだと思っております」

「聞かせてくれ」

「殿下、場所を移して」

「いや、ここでいい」

隊長さんは短く息をつく。

「事は祝賀会中に、殿下とセローリア公爵令嬢が並び、貴族からの祝いを受けている最中に起こりました。エスコートのないひとりの令嬢がセローリア令嬢に近づき、小刀を振りかざし捕らえられた。その令嬢はシュタイン嬢にやれと命令された、弱みを握られ仕方なくやったと大声で泣き喚き散らしました」

光景が目に浮かぶ。陛下からの発表の後に、ふたりが挨拶をする。

我先にと若いふたりへ貴族たちが群がる。といってもあくまで貴族社会なので爵位順となる。伯爵の父さまもご挨拶できたのだろうから、続いて男爵家がお祝いし、友達となる子供たちが詰め寄せたことだろう。

そこにエスコートなしの令嬢が近づいていく。

「小刀は私が弾いた。リノ嬢の警護は誰だ?」

隊長は膝をついて謝った。

「申し訳ありません。これは第三部隊の責任です」

「責任を追及しているわけではない、誰が警護者だったのかを聞いている」

そうだよね、必ず一人はついていただろう。

「第三部隊パメラ・ロンゴです」

「その者は何をしていたのだ?」

ロサが武器を弾いたというところで、もうおかしい。

それが手だれの剣士だったのならいざ知らず、普通の令嬢っぽいものね。

「申し訳ありません。令嬢の前には出てお守りしたようですが、武器を弾く事はできなかったようです。すべては隊長である私の人選ミスです。申し訳ございません」

隊長さんはまた頭を下げた。

ロンゴがリノさまの専属警護をしていたのか。失態して犯人を捕まえるためにいきりたっていたのかな? それでわたしにあんな態度を?

陛下が何かに参加される時は第一部隊が寄り添う。陛下の警護は第一隊長が請け負う。きっとそんな騒ぎになり、陛下と第二夫人は第一部隊に守られ退室しただろう。