軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第933話 Get up㉔フランツとデート<前編>

毎日やることが山積みで、やっと週末の放課後となった。

みんな明日のダンジョンに参加するとのことなので、朝、転移門前で集合の約束する。

そして、門に急ぐ。

フランツが馬車の前で待っていた。

「フランツ!」

「リディー、おかえり」

フランツはわたしの脇を持って抱えあげる。

「ちょ、ちょっと何やってんの?」

生徒だってパラパラいるのに!

「1週間ぶりだし、舞い上がっちゃった、ごめんね」

ん? 頭上で微かに? おろす前に頭にキスしなかった、今?

まさか、アダムが思い出したと言いつけたとか?

だって今までより、距離感が近い気がする。気のせい?

「それに、リディーから誘ってくれたのが嬉しくて」

反則的に可愛い顔をするっ!

頬を上気させ、うるっとした瞳。

なんか心臓バクバクする。

胸を押さえた手に、手を差し出される。

「さ、お嬢さま、こちらへ。シュタイン家ほど乗り心地は良くないでしょうけど」

フランツに手を貸してもらい、馬車に乗り込んだ。

馬車の後ろには、馬に乗ったガーシとシモーネが周りを警戒しているのが見えた。

首をこくんと下げて挨拶をする。

リュックを背負ったもふさまが乗り込んできて、わたしの膝の上にちょこんとおさまる。

家の馬車は手を加えまくっているからね。それ以外の馬車は、はっきりいって揺れるしお尻が痛い。

けれど、トスカとして旅してきたわたしには、この侯爵家の馬車もとても素晴らしい乗り心地だとわかる。

「手紙に書いてあったところ以外に、どこか行きたいところはある?」

わたしは首を横に振る。

フランツにはタルトのお店に連れて行ってとお願いしたのだ。

今はベリーのタルトが食べられるという。

タルト生地は我が領地発信のレシピだ。そのレシピを買い、王都で開いたお店が繁盛していると聞いたから、敵情視察も兼ねている。

領地ではタルトといってもおかず系のタルトの方が売れる。ある程度のお値段になってしまうので、平民には軽食として食べるには贅沢品で、食べたい時はおかずの一品として受け入れられている。

王都だと貴族の割合が多いから、甘いものでも成功しているんだろう。

「リディー、その髪飾り使ってくれて嬉しいよ」

えへへ。今日は、フランツとデートだから、もちろんフランツの作ってくれた髪留めをつけてきた。ドレスと一緒にプレゼントしてもらった髪飾りもあるけど、制服には派手すぎた。

「これを君に贈りたいんだ。今日はこれをつけてくれる?」

シルバーの繊細な飾り細工。派手ではないけれど、見る人が見れば輝きが違うのがわかるだろう。大人しめのものなので、制服とも相性が良さそうだ。

「えー、特別な日でもないのにくれるの?」

記憶のないわたし、婚約者だと知らされてないわたしならどう反応するだろう? そんなことを考えながら尋ねる。

「今日、私と出かけてくれるから、そのお礼だ」

「連れてってって言ったのはわたしなのに、それおかしくない?」

「おかしくない。つけてもいい?」

やばい、わたしは贈り物を用意してなかった。

そんなことを思いながらも、体の角度を変えて、つけてもらう。

「できた。ふふ。似合ってる。可愛いよ」

「……ありがとう」

木彫りの髪留めを返してもらって、シルバーの髪飾りが入っていた箱に入れ、収納ポケットに仕舞い込んだ。

「あの、本当にありがとう。それから、ごめんなさい。わたし、フランツに贈り物を用意してないの」

もふさまを撫でながらそう白状すると、フランツは笑った。

「私はリディーと一緒にいられるだけで嬉しいから、気にしないで」

「それはわたしもそうだから……」

「え? そうって、私といると嬉しいということ?」

まずい! 兄さま、誘導がすぎる!(>誘導されていません)

今はまだバレたくない。ちゃんと聞くまではね。

「そうじゃなくて。いや、そうなんだけど、違うっていうか」

あーーーーーーー、何言ってんだ、わたし。

馬車が速度を落として止まった。

フランツがとろけるように微笑む。

「着いたみたいだ」

ドアが開く。

もふさまもぬいぐるみになり、わたしはリュックにもふさまも入れる。

フランツが降りて、エスコートしてくれた。

タルト店は聞いた通り、列ができていた。

でも回転が早いようで、10分ほどで中に入ることができた。

個室をお願いする。前に並んでいた人たちはカフェ利用じゃなくて、持ち帰りの人が多かったみたい。ガーシたちはお店の外で待っていてくれるようだ。

もふさまたちも一緒だし、フランツ、そして護衛も一緒だから外出を許可してもらえたと思ったんだけど、後から聞いてドンびいた。

実はこの界隈にいる人たち、ほぼエキストラだったらしい。blackやウッド家の諜報員たちが街ゆく人々になり守ってくれていたんだと知って驚いた。

どんだけ過保護。でも狙われた回数を考えると心配はもっともだし、ありがたいと思わないと、とは思うんだけど。

わたしの外出でそんな迷惑がかかっていたとは、この時は知らなかった。