軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第912話 Get up③可視化

「……聖女さまの未来視の記録はどんなふうに管理しているの?」

ダニエルに尋ねる。

「話されたことをなるべく記録。夢をみた順に番号をつけている。

それを時間軸に沿って並べ替え、まとめている」

なるほど。未来視を見た順番でナンバリングしてあって、内容の時系列に沿ってまとめてあるのね。

その他にたとえばそれが東の出来事だとしたら、東のキーワードの紙にそのナンバリング番号も書いていくようにして……とダニエルが頭が良くて記憶力がいいからできるまとめ方もしている、と。

それでわたしも「読んでみたいし、まとめていく手伝いをしたいのだがいいか」と尋ねた。

もちろんと歓迎され、ちなみにどういうふうに管理をしたいのか聞かれ、わたしはその用紙にインデックスをつけたいと言った。

たとえば東で起こったことなら水色のポストイットをつける。キーワードごとに色のポストイットをつけていく。長さ、そこに赤で線をいれるなどでいくつものバリエーションを稼げる。要するに書類にタックインデックスをつけたい。

そうすればダニエルの頭の中か、キーワードに番号を書いてあるアンチョコを見なくても可視化できるようになる。

「なるほど。誰が見ても一目瞭然。それに統計をとらなくても、同じタックでどれが多いとかもわかるようになるってことか」

ダニエルは可視化の利点に気づいたようだ。

それから代々の聖女さまたちの残したものは、わたしでも観覧可能かを尋ねる。なぜかと聞かれて、他の聖女さまと、すぐに力を使えるようになった9代目の聖女さまの違いがないかを調べたいからと言ってみる。

もちろん神殿や王族もやっていることだろう。

でもわたしはテンジモノらしいから。その視点で何か気づくことがあるかもしれない。

ロサは手配しようと言ってくれた。神殿側は渋ると思うけれど、交渉してみるとルシオが言った。

よし、今できるのはこれくらいかな。

ダニエルが紅茶を入れ直してくれた。

貴族のお坊ちゃんなのに紅茶を入れられるし、それがとてもおいしい。ダニエルがいるときは密かな楽しみだ。

「そういえば精霊の様子はどうだい?」

ロサに尋ねられた。

「球自体はすっごくちっちゃくなっちゃったよ。精霊の大きさで包み込んだような球体になってる。それでも起きないけど。一応、光魔法は毎日かけてる」

「精霊のことは神殿に何か残っていたか?」

イザークがルシオに尋ねた。

紅茶の香りを楽しんでいたルシオは、カップをテーブルに置く。

「一応、これは位の高い神官しか知らせないことだと、胸において欲しい。

精霊とは聖霊王と女神の子供のことだ」

「聖霊王と女神の子供?」

「ああ。神力と聖力を宿す神聖力を持つ12体を、精霊と名づけ地上に降ろしたそうだ。光、闇、火、水、風、地、時、空、鉱、氷、知、星」

「あの精霊は水かもね」

わたしが言うと、もふもふを含め、みんなが頷く。

「神も聖霊も地上に降りることを許されていなかったが、どちらの力も持つ精霊だけは許されたという」

「あ、神や聖霊王が地上に降り立つことはないって言ってたの、あれガゴチの若君の願いのガゴチ対策で言ってたんじゃなくて、本当のことだったのか?」

ブライが驚いている。

「……ブライは創世記を知ってるよね?」

「バカにするなよ。ラテアスさまの弟子の神さまに作られた世界って話だろ?」

ルシオはその通りと頷く。でも表情には陰りがある。

「私も創世記を学んではいるけど、神殿と全く同じなのかな? ルシオの知る創世記を聞かせてくれないか?」

「創世記や神話は神殿から伝えられたものなので、変わりがないと思いますよ。ただ……」

そう前置きしたルシオには迷いがあるように見えた。

「……では、創世記のことをお話しましょう。

創造神ラテアスさまには、多くの弟子がいらっしゃいました。

ラテアスさまは課題を出されました。生命を育めるような小さな箱庭を作るように、と。

弟子たちは張り切って趣向を凝らした箱庭を拵えました。けれど、たったひとりだけ、考えれば考えるほどわからなくなってきて、追い詰められた方はいけないことをしてしまいました。お使いで行ったことのある世界で見た〝箱庭〟をそのまま形にしてしまったのです。

多種多様の生命が存在し、魔素が溢れる箱庭でした。

ラテアスさまも、にっこり微笑まれました。

弟子の見習い神さまは、とても嬉しくなって、持ち帰って拵えた箱庭に生命力を注いでしまいました。自分の作った箱庭が動き出すのを見たかったのです。

でもそれは、いけないことでした。

神でなければ生命力を与えることは禁じられています。

見習い神さまのやったことです。普通なら生命力を注いだとしても育むのに時間がかかり、育ったりしないはずでした。

けれど見習い神さまが拵えたのは〝初め〟から〝終わり〟までが存在する筋道のある箱庭でした。

結果、あっという間に箱庭は生命を育む〝世界〟となっていました。

生命が生まれてしまった箱庭は見守っていくしかありません。

禁忌を破った見習い神さまは封印され、師匠であるラテアスさまがこの世界を管理されることになりました」

多くの人に語ってきたんだろう。とても滑らかで聞き入ってしまった。

「そうそう、確かそんなんだったな」

ブライが腕を組んでうんうん頷いている。

「そうか、一般的にはそこまでなんだな」

と、ロサが言う。

「というと?」

ダニエルが首を傾げた。

「ルシオ」

ロサがルシオを呼ぶと、ルシオは自虐的に笑った。

「はい、神官と王族にだけ教えられる、後半があります」

「後半?」

ルシオは頷く。

あ、ロサはわたしたちにも創世記の後半を教えるために、会話を促していたんだなーと気づく。そしてそれがルシオの望んでいたことだと。