軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第905話 忍びきれなかった悪意⑫囮<中編>

まず学園へのいく人かの侵入者。それは全て将軍たちから依頼された人だった。

最初にケラのクラスの串焼き屋で捕らえられた金髪の人。

ただわたしに話しかけてきたように見えたけど。

あの人は魔法でわたしに、魅了のようなものをかけようとしていたらしい。

かかると言うことを聞きやすくなるそうだ。

スキルで魔力を多く使うものらしく、魔力検知に引っかかった。それで生徒に状態異常の魔法を使おうとしていたとしてお縄。

夜にアベックス寮に侵入しようとしてもふもふに捕らえられたのも、その仲間。

将軍たちとしては捕まるぐらいの人を選び声をかけた。わたしを学園の外に出せた人に賞金出すと言ったそうだ。

成功したらめっけもんだけど、そうはならないだろうと思っていて。そうやって捕まらせることに意味があった。捕まったからもう安全だろうと気を抜くように。

本命は傭兵崩れのふたり。生徒を使って弱みにつけ込み、脅してわたしを学園から出すつもりだった。そこで将軍たちがわたしを拾い、ガゴチへと。

でも、様子見とわたしの顔を見に来たときに、ロビンお兄さまと鉢合わせをし、お兄さまたちがジェイの子に違いないと思えて、即座にロビンお兄さまの命をとる算段をつけた。その人たちは捕まった。思ったより学園の守りがしっかりしていたと驚いたそうだ。学園の守りの弱点をついた、生徒を使ったやり方にしておいてよかったと思った、と。

入れ知恵されたやり方で、傭兵たちは学生とその弟を捕らえ、弟を餌にアランお兄さまを連れてこさせ、お兄さまを餌に今度はわたしを連れてこさせた。

そこからはわたしたちが体験した通りだ。

外に連れ出せとしたが、お兄さまが傭兵のバックの存在に気付いたようで。

ロビンお兄さまが命を狙われたのだから、思いついて当然と言えば当然だが、と注釈入りで。

学園の中で会いたいと言ってきた時点で、寝返ったなと思ったそうだ。それでも乗ってきたのは、なんの証拠もないという自信からだった。わたしたちが何を思いついたのか知りたい気持ちもあったし、ジェイの居場所を聞き出してやろうと思ったからだという。

障害電波も出て、そして魔法も使えない部屋で立ち会えば問題ないと思った。

けれどそんな思惑を掻い潜ったやり方で、最初から音楽室には世界議会の人を含む人がいて、捕まることになった。

「それだけの報告なら、私たちを王宮に呼び寄せる必要もないですよね? 何か問題が起きたのですか?」

静かに報告を聞いていたアランお兄さまが、押さえた声で質問する。

「世界議会はすぐにでもガゴチの将軍たちを、エレイブ大陸に連れて行きたいとしている。我らはその前にガゴチからの情報が欲しい。カザエルとどこでどう、どれくらい繋がっているかを」

ロサはそこで一息入れる。

「将軍にその話をしたところ、条件を出してきた」

「条件、ですか?」

「リディア嬢に頼みがあるとのことだ」

なるほど、それで保護者も一緒にここに呼ばれたわけだね。

「ロクでもない話に決まっている! 囮にするだけではなく、終焉から免れるために、娘に犠牲になれと?」

お父さまが立ち上がって声を荒げた。

みんな辛そうな顔になる。

「お話は聞きました。娘がガゴチに協力をすることはありません。お暇します。皆、帰るぞ」

お父さまがかなり怒っている。

王子殿下の前で声を荒げるは、帰ると言い出すは。

全部わたしを守るためなわけだけど。

「シュタイン伯、お怒りはごもっともです。けれど、ガゴチの願いが何かなのだけでも聞いていただけないでしょうか?」

「殿下、話を聞いたら、妹は絶対に従うことになるのでは? そうしなくては終焉、世界が終わると言われたら、逃げ場はありません。すべてを妹に委ねるとは、酷すぎやしませんか?」

アランお兄さまもお怒りのようだ。静かに怒っている。

一理も二理もある。

条件があり、それをしないとカザエルのことは話さないよーと言われたら、わたしは従うべき、になってしまう。

「それは私の名にかけて、聞いてくれるだけでいい。リディア嬢にしか話さないと言っているんだ」

「結局、追い詰められるのはリーじゃないか!」

ロビンお兄さまが、ロサを憤慨するように言った。

ロサの目の下のクマが。堂々と話しているから、元気な様子に見えるけど。よくよく見れば堪えているのが身体に現れている。

追い詰められているのはロサもなのかもしれない。

「お父さまも、お兄さまたちもありがとう。確かにどんな条件だったとしても、それが終焉に関係していて、それを知らくてはならないとなったら、わたしの意思とは別に条件をきく流れになるし。人からどうしろって言われなくても、わたしの気持ちからいって対処することになると思うわ」

聞いてくれるだけでいい、ロサは本気でそう思って、そう実行する気でいるけれど、わたしが感情のある人であるだけに、聞いてしまったらわたしの中で何かが変わるだろう。

そこをちくっと刺しておく。

ロサも、隣のアダムも下をむく。頭のいい人たちだからそこは百も承知なはず。けれど、そうしたのもわかる。

「わたしにしか話さない。条件がある。このことを聞いただけで、わたしの中でこの件は始まってしまいました」

「リディー」

「リー」

「リー」

家族たちから辛そうに名を呼ばれる。

「でも心配しないでください。わたしは記憶のないリディアだから、記憶のあるリディアより大切なものは少ない。だから嫌なことは嫌だし。嫌なことならそうでない道を見つけるわ」

「「リー」」

双子のお兄さまたちが声をそろえた。

「ただこの状況で話を聞くのは憚れます。カードを全部出してください。

わかっていて、伝えられてないことがあるんですよね?

終焉にガゴチとカザエルが関係しているとは、どうやってわかったんですか?」