軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第904話 忍びきれなかった悪意⑪囮<前編>

次の日はフォンタナ家とD組のみんなとダンジョンへいくはずだったけれど、家に帰ることになった。王宮から呼び出されたからだ。

ガゴチの件だろう。

世界議会も交えているから、場所が王宮なのかな?

お父さま、ふたりのお兄さまたちも一緒だ。

王宮入りだけど、服装は簡素なものでいいと言われた。

それでもすんごいドレスなんだけど。正装と呼ばれるドレスとなったらどんなものになるか、空恐ろしい。

広めの一室に通された。ガーシとシモーネはお城の騎士と一緒に、扉前で警備のようだ。

部屋には多くの人がいた。テーブルと椅子があり、みんな座っている。

アダムもいた。

わたしはアダムとお父さまに挟まれて座る。お父さまの反対側の横にふたりのお兄さまたちが腰掛けた。

アダムに教えてもらう。

前の空席に座るのがロサ。

その右隣が宰相。ダニエルのお父さん。左隣が魔法士長。イザークのお父さん。その隣が総騎士団長でブライのお父さん。次が神官長でルシオのお父さん。

それぞれどこか似通っている。

席に着くとメイドさんがお茶を運んでくれた。

リュックを背負ったもふもふも一緒だ。

わたしの膝上にいる。

王室はもふもふが聖獣だと知っているそうだ。だからお城に入れてもらえた。

お茶を一口いただいたところにドアが開いて、ロサとロサの護衛の騎士が入ってきた。

みんな立ち上がったので、わたしも立ち上がってもふもふを椅子に置き、礼をとる。

騎士のひとりがロサの斜め後ろに立って、他の人は室から出て行った。

「楽にしてくれ」

王子殿下の声にみんなが頭を上げて、席に着く。

「ガゴチの将軍と前将軍の起した、学園でのシュタイン伯子息と令嬢の事件の解決、並びにガゴチとカザエルの繋がりを明らかにするように、陛下から命を受けた。これらの件については私が指揮をとる。よろしく頼む」

学園でもないし、仲間たちがいるのとは違うからか、全く違う声音に感じる。

カザエルというキーワードにお父さまが反応した。

ロサが立ち上がる。

そしてうちの家族に向かって頭を下げる。

突然のことってのもあるけど、王族が頭を下げるとはあってはならないことらしく、周りが慌てている。

「すまない。リディア嬢を囮にしたのと同じことだ」

「殿下には、ガゴチがカザエルと繋がっている情報があったのですか?」

お父さまが冷静な声で尋ねた。

ロサは頷いて認める。そしてわたしに向き直る。

「ガゴチ将軍の子息より、前将軍が学園祭を訪れる情報を得た」

それは知ってる。本人から聞いた。

「将軍たちはリディア嬢を執拗に得ようとしていた。かなりの確率で学園祭中にガゴチがリディア嬢に接触する可能性があった」

「それは聞いていました。だから学園祭に参加するのかと、何度もわたしに確かめられたのですよね?」

家族からもだけど、ロサやアダム、生徒会メンバーから個々に聞かれた。

「そうだ。けれど、伝えていないこともいくつかあった」

「……ガゴチは終焉に関係しているんですね?」

言われる前に尋ねていた。

お父さまが息をのみ、ロサは 苦笑(にがわら) いする。

「なぜ、そう思った?」

「ガゴチを引きずり出したかったんですよね? 表舞台で裁き、終焉のコマにならないよう逗留させたかった。違いますか?」

ロサは頷く。

「それなら筋が通るからです。みんなにあれだけ学園祭に出るのかと確かめられた意味が」

ナーバスになっているようなので、努めてビジネスライクに話す。

「巧妙にいつも罪を免れるガゴチを引き摺り出す、いい機会だった。場所は学園。生徒には守りがあり、安全圏である。警備兵はどんな猛者でもねじ伏すことが可能。前もってわかっていたので網がはれる。

けれど絶対安全というわけではないし、身体的安全であっても心に傷を負うこともあるかもしれない。だからターゲット……標的になるわたしに告げるか最後まで迷ったってところでしょうか?」

ロサに視線を定めれば、彼は頷く。

「その通りだ。どうしてもガゴチを引きずり出したかった。君が標的になるのをわかっていて、そこまではシュタイン伯に告げなかった。ただガゴチが来て何があるかわからないとしか伝えていない」

そうか。だから家族から何度も確かめられはしたけれど、学園祭参加を許された。ターゲットの可能性が高いことは言われていたからな。

結果的に囮となったのかもしれないけど、わたしも参加したかったから酷い!とは思わなかった。

「それがご子息たちにまで被害に遭われ、本当に申し訳なかった」

「おれ……私たちがガゴチに目をつけられたのは全く別のことなので、悪いと思わないでください。逆に世界議会まで巻き込み、陣を敷き守ってくださり、捕らえてくださったことに感謝します。これでリー、妹に手出しできませんよね?」

ロビンお兄さまが発言する。

ロビンお兄さまなんか命の危険があったのに。それよりもわたしの心配なんて。胸が熱くなる。

ロサは少し視線を落とす。お兄さまの最後の問いかけには答えない。

「何はともあれ、将軍たちは議会預かりとなる。驚いたこともあったが、3人とも無事でよかった」

それはロサの心からの声だ。

「学園から、生徒への殺人未遂、誘拐、恐喝があったとガゴチ前将軍と将軍を訴えた。世界議会の裁判で裁かれることになる。その前に2年滞留分の裁判が溜まっているそうだから、判決が出るまでに時間がかかりそうだ」

そうしてもう一度座り直し、話してくれた。

捕らえられたガゴチの将軍たちの話を。

彼らが学園で何をしようとしていたかということを。