軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第895話 忍びきれなかった悪意②お褒めの言葉

「このままだと報酬ももらえないし、捕まる。捕まるように、あなたたちには情報をいくつも秘匿していたのよ? それなのにかばうの?」

水色の鳥が飛んできた。

頼りない方が開封し、主導権の方に見せている。

手ぐらい縛られるかと思ったけど、そんなこともない。

子供相手だから油断しているのか、制御できると思っているのか。

ま、どちらにしてもなめられている。

「鳥が戻ってきたところを見ると、弟くんがいなくなったことを伝えなかったのね」

そう呟くと、頼りない方が少し目を大きくする。

「なんでわかる?」

「もし書いていたら、そこで捨てられたはずよ。バレたとわかって逃げるでしょう。連絡はこなかったはず」

だから書いている時まずいかなって思ったんだけど、主導権がいれば不利なことは依頼主に言わないかと思い直した。

「ばれたと思ったら、あなたたちに罪を押しつけ、知らぬ存ぜぬで押し通すでしょうね、ガゴチの人は」

主導権の目も少し大きくなった。

ここが交渉どころだ。

「弟くんを拐って脅した罪は消えないけれど、協力してくれるなら、罰が軽くなるよう口添えするわ」

「ほう、どういう協力だ?」

「学園内で依頼主と会わせて」

「今もあんたたちを外に連れて行けと言ってる。ここで違えたら警戒するだろう」

主導権が嘘を言っているようには見えなかった。

もふもふも特に動きはない。

アランお兄さまと目を合わせる。デヴォンはちょっとハラハラしているようだ。

「外に出たらオレたちをどうするとか言ってませんでした?」

お兄さまが情報を得ようと尋ねた。

主導権はふと視線を下げる。

「親と会うようにするだけとかなんとか……」

わたしはアランお兄さまと目を合わせた。

やっぱり、ジェイのことを知りたいと思っているんだ。

アランお兄さまが拳を握る。

「それなら、こう伝達魔法を送ってください。オレがあんたたちが知りたいことを話すから、妹を解放してくれ。そうしないと学園内で魔法を使い、騒ぎを起こすと言っていると。依頼人にしか話さない、ともね」

危ない橋ではあるけど、それ以上のことを思いつけないので、アランお兄さまに頷く。

彼らは捨て駒だから、バレたなら捕まってしまえと、返信のない可能性がある。

守りがあるといっても、学園から外に出るのは憚られた。

けれど、学園から出たところで捕まえる方がよかった?

いや、ユオブリアであのふたりが出てくるかわからない。また間に人に入られたら、同じことになる。

やはり、学園内で引きずり出すのが得策。

ジレジレした時が過ぎる。

デヴォンの額には汗が浮かんでいた。

主導権がペンを持った。

頼りない方が主導権を見上げる。

「そいつらのいうこと聞くんですかい? バレますよね? その後どんな制裁を受けるか!」

頼りない方は依頼人が怖くなったみたいだ。

「顔見せしてる」

「え?」

「こいつらを外に出すぐらいと思ったが、どうやらそれ以上のことを孕んでいるようだ。数年前に学園から子供が拐われたこともあるから、学園の守りが薄いって聞いて確認しなかった。昨日のやつらが捕まったと直前に聞いて、嫌な気はしてたんだ」

「え?」

「たまたまじゃない。もう守りがしっかりしてるんだよ、学園は。そっちのガキと弟を捕まえられたから、できるって誘導されたんだ。弟は生徒じゃねぇー、一般人だ」

「ええ?」

「だから俺たちも嵌められたんだよ。うまく学園の外に出せればいいし、ダメだったら捕まるのは俺たち。依頼人を特定する証拠もない。俺たちが捕まるだけだ。そりゃ脅して外に出すわけだけど、外で何があってもそれは俺たちがするわけじゃねーし、大したことじゃねーと思っていたけど、かなりまずいことになりそうだ。今ここであんたたちの要求を飲めば、それを未遂にしてくれるんだろ?」

アランお兄さま、デヴォンと顔を合わせる。

驚いたことにデヴォンも頷く。弟くんが怖い目にあったのだから、罰を受けさせたいというかと思ったけど。

「そうよ。あなたたちが学園内で依頼人とわたしたちを引き合わせてくれれば、あなたたちは未遂ってことで届け出るわ」

主導権は頷いて、書き留めている。

交渉は成立だ。

「おい、知りたいことを話すって、大丈夫なのか?」

デヴォンが小さい声でアランお兄さまに尋ねている。

「ああ、元々そのつもりだったし」

「っていうか、デヴォン、ありがとう。あなたはここで離脱して」

「あのなー」

水色の鳥が飛んでいった。

「弟くんを誘拐されて仕方ないのもわかるけど、お兄さまを連れ出したのも、それを餌にわたしを脅したことも、忘れないから」

ちょっと恨んでるのよ設定にすれば離脱しやすいかと思って言ったのに、デヴォンは重たく頷いた。

「方法はあったんだ。あんたが他の生徒に助けを求めたように。俺にもできることがあった。でも俺は信じてなかったんだ。学園のことも、みんなのことも。ひとりくさってたってのも言い訳だ。俺は結局、何も信じられていなかったんだ。だから何も残らなかった」

猛省しているっぽいので、悪いことをした気分になった。

「何も残らないはひどいな。……オレたち友達だろ?」

デヴォンは泣きそうに笑う。

「お前を人質にしたんだぞ、怒れよ」

「いや、巻き込んでごめん」

「なんだよ、それ」

「目をつけられたのはオレとロビンだから。お前は巻き込まれたんだ。だから後で話そう」

お兄さまはニッと笑った。よくロビンお兄さまがするみたいに。そして続ける。

「聖樹さま、デヴォンを保護してください」

えっと目を見開いたデヴォンが消えた。

傭兵崩れのふたりも驚いている。

「い、今のは?」

「これが学園の守りです」

わたしはすまして答えた。

聖樹さまはやっぱりわたしたちを気にしていてくれた。

だからアランお兄さまの要求をのんでくれたのだ。

水色の鳥が戻ってきた。

「音楽棟に来いだってよ」

将軍だったのは伊達ではないってことね。音楽棟は独立した棟だ。

外から人がくればわかる立地条件にあるし、壁を乗り越えれば外に逃げやすい。

防音仕様だから、扉を閉めれば音を拾われることもなく、録音などの妨害音も出ているはずだ。録音などしたい時は教師に願い出ることになっている。

引きずり出せたら、企んだことを認める会話を録音するつもりだったけど、録音ができないってことか……。

逆にいえば……。

他にそういうことのできる施設は、演劇クラブや講堂にもそんな機能が備わっていたけど、学園祭でどちらも使用中。

アーティストの才能を守るためと、テストなどでの悪用を避けるためだそう。

ちなみにテスト中は不正行為ができないような魔法が各教室で発動するらしい。それでも掻い潜った不正行為があるのでは?と言い出す人が後を絶たないらしいけどね。魔法を使えないON・OFFができる教室も数多くあるとか。

「おい、音楽棟に行ってからどうするつもりだ?」

主導権に尋ねられる。

「音楽棟のどこ? 第1音楽室?」

主導権は手紙に目を走らせる。

「ああ、そうだが。それがなんだ?」

「なぜ、わざわざ4階まで。嫌がらせ?」

少し大きな声になってしまった。だって4階ってけっこうしんどいからなー、階段あがるの。

ま、それはそれ。

音楽室に行って、あちらさんの出方次第にはなるけど……。

「そうね。知りたいことを教えてやってもいいとか言って、でも依頼人にだけってあなたたちは締め出すつもりよ」

「なんでだよ?」

「恐らく、依頼人の知りたいことを知る方が危険だと思うから」

主導権の顔が引き締まった。

「……わかった。もう一人の坊主のことはなんと言えばいい?」

「わたしたちを捕らえたんだからもう用済み。しばらくは出られないようにして教室に置いてきた、とか言えばいいのよ」

ちなみに拘束してなくていいのかと尋ねそうになったけど、誰かに見られた時説明が大変だし、拘束されない方がいいので、口にはしなかった。

「末恐ろしいガキだな」

口の端がニヤッと上がる主導権。

「お褒めの言葉と受け取っておくわ」

隣でお兄さまがそっと息を吐いた。