軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第889話 忍び寄る悪意⑫巻き込む

「2名さま、ご案内!」

と教室に招き入れられる。

中は上級生用の制服の生徒ばかりだ。大人が入ってきたらすぐにわかる。

「先輩たち、わたしたち困っているんです。助けてください!」

「どしたの、悲壮な顔しちゃって?」

わたしを呼び込んだ先輩は、おちゃらけた様子で言った。

「傭兵みたいな人に彼の弟がさらわれて、わたしの兄を人質にわたしを中庭に連れてくるように言われています。わたしたち、見張られているんです」

笑顔が固まる。

みんなどう受け取ればいいのかという顔になった。

まずったか。わたしは唇を噛みしめた。

「ドア閉める?」

「バカ、そうしたら余計バレるだろうよ」

「じゃあ、どうすんだよ?」

先輩たちの押し問答。

「わたしはここでジュースを買い、何もなかったようにゆっくり中庭に向かいます。一応、わたしの家族に連絡がいくようにもしていますが、わたしたちが出て行ったら、秘密裏にわたしの家族と、先生に伝えてください。

先生に言うときは複数の先生たちにいっぺんに。あとは普通にしていてください。すべてが終わるまで今のことは口にしないで。どこで誰が聞いているか、わからないから」

「……おい、弟の名前と髪の色は? 何歳だ?」

「……弟はゲイブ・マンド8歳。茶色の髪に、橙色の目だ」

「俺、先生に言う」

「俺、アランと家族が一緒にいるの見たことあるからわかる。シュタイン家に言う」

「みんな普通にしてろ」

そう言って、呼び込みにでも行くかのように、何気ない感じで2人の男子生徒が出ていった。

この果汁のお店が4年C組の出し物で助かった。

同じ4年生で、わたしのお兄さまたちと、彼のことも知ってること。それから上級生だけあって、理解度が早い。対処も心得てる。

わたしはオレンジ、4年生はグレーンのジュースを買った。

お礼をみんなに言って深く頭を下げる。

そうして、深呼吸をしてから、すまして教室を出た。

「あとはできるだけゆっくり中庭にいくよ」

4年生はうなずく。

唐突にサイレンが鳴った。

《警備兵が循環します。行く手を阻みますと捕獲されますので、お気をつけください》

なかなか物騒な案内だ。

わたしと4年生は目を合わせる。

誰かが聖樹さまにコンタクトをとってくれた。

恐らくアランお兄さまを探すんだ。同じ場所に弟くんはいるんじゃないかな。

生徒の反応はというと、昨日の警報は驚いただろうけど、今のサイレンで3回目だ。様子は違うものの、警備兵って見回りもするんだーなんて納得している様子。

出し物のある本校舎から出て、中庭側へと向かえば、人の流れは少なくなる。

「アランお兄さまのことは、どうやって呼び出したの?」

「ロビンが呼んでるって。俺が昨日ロビンとやりあったことは知ってるだろうから、負けたからそれを理由に使われてるって言えばついてきた」

「ロビンお兄さまはそんなことしないし、アランお兄さまもロビンお兄さまがそんな人の使い方をするわけないってわかってるはず」

「どういうことだ?」

「あなたが必死そうだから、のってくれただけだと思う」

4年生は足を止める。

「お、俺のためにか?」

「それだけじゃないと思うけどね」

みんな、学園の門が一般解放される時、狙われるのはわたしだと思っていた。

ところが、ロビンお兄さまが狙われた。それも傷つけてもかまわないぐらいの感じだった。アランお兄さまもそれを見ている。

アランお兄さまとロビンお兄さまは双子だ。自分と間違って襲われたのではとも考えたはずだ。というか、自分も狙われる可能性があると。それからそうやって捕らえられて、家族を脅す材料になるとも。わかっているはずのアランお兄さまが彼について行ったということは、何か意図があったのではないかと思う。

え?

いきなり景色が変わった。

わたし外を歩いていたはず。

そこは木漏れ日のような、緑と光で構成される空間だった。

「リー」

目の前に座り込んでいたのはアランお兄さまだ。

「アランお兄さま! ご無事で」

お兄さまが抱えているのは……茶色の髪の年下の男の子。眠ってる?

『リディア・シュタイン、久しいな』

声が響く。誰?

ここにはわたしと抱えているもふもふ。お兄さまと、眠ってる男の子しかいないのに。

『聖樹さまの空間だ』

もふもふが体を捻って教えてくれた。

聖樹さまの?

ってことは聖樹さまの声?

『捕らえられていたお前の兄と、ゲイブ・マンドを保護した』

ゲイブ・マンド、4年生の人質とされた弟だ。

「あ、ありがとうございます。ご機嫌よう、聖樹さま」

わたし的には会う?のは初めてなので、お久しぶりですとは言えなかった。

でも、それより。

「アランお兄さま、何があったの?」

「……デヴォン・マンドが必死だったから、何かあったと思ったんだ」

デヴォンというのはあの4年生の名前だろう。

口調から、やっぱりわざとついて行ったのがわかる。

「デヴォンは2年前までA組だった。伯爵家で、家も融資業をしていて裕福だった。ところが2年前の謀反騒ぎで、マッド家の末端が本家だと偽り教会に賄賂を贈っていたことがわかって、それに気づかなかった責任で男爵に落とされた。その時に荒れて、成績が悪くなり……B組になったんだ」

学園はクラス替えはないけれど、試験による成績が激しく悪いと、クラスを落とされたりするらしい。逆に成績がいいとあがれることもある。

わたしはD組、最下位のクラスでもあり、平民クラスとも呼ばれたりする。

学園では皆平等をうたっているそうだ。建前は。けれどバリバリな貴族社会のため、子供たちにもそれは垣間見られる。平民の生徒を守るために、平民はどんなに成績が良くてもD組となる。

わたしは貴族。入園試験に遅れて入試の点数が悪くてD組になった。

けれどそれは遅刻したからであって、成績は悪くない。

それで学年が上がるごとに、クラス変更を望むか聞かれたそうだけど、わたしは断ってきたようだ。

成績がシビアにわかってしまうクラス分け。落とされたら、それはキツイことだろう。