軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第884話 忍び寄る悪意⑦月夜

お次は1のDの花幻想だ。

入場料300ギルでワンドリンクとタオル?

アイスティーを選んだ。蓋つきのコップにて渡してくれる。氷が入ってた。

あ、これ、このタオルみたいの、スライムもけもけ?

と単語は浮かんできたものの〝スライムもけもけ〟ってなんだっけ?って頭の中が迷子になる。

「変わった手触りね」

お母さまが鼻に寄せて匂いを嗅いでいる。

「母さま、それスライムの膜だよ」

お母さまがタオルをお手玉したのを、ノエルくんが受け止める。

「母さま、正しくはスライムの膜を使った何かを作るときに、火や水の入れ方を間違えるとできるものなんだ。水分をよく吸う。〝足湯〟があるみたいだから、それに使うんだね。考えたな」

とアランお兄さまが解説。

まあ、そうなのねと言いつつ、お母さまは触りたくないみたい。ノエルくんに預けたままだ。

足湯?

会場はそう広くないはずなのに、だだっ広い草原に見えた。

花が至るところに咲いている。

顔を近づけると、微かに花の香もするじゃないか。

ちょっと小高くなったところに木があって、そこはごろ寝スペースらしく、小山には横になっている人が多い。

おお、川が流れている。川に模しているところにみんな膝下をつけている。気持ちよさそう。足をつけているのは女生徒が多く、男の子たちが目をやらないようにしているのが窺えた。

「母さま、足湯、行こう」

エリンちゃんが誘えば、お母さまは足を出すのはちょっとと断った。

わたしたち兄妹とお父さまで足湯をすることにする。

みんなで並んで足をつける。

あったかい。そして痛い。

足に傷ができているからお湯が染みる。

けれど、歩いて疲れた足のだるさは抜けていくように感じる。

お母さまは後ろのベンチに座っている。

思わぬところで、みんなで並んでほっこりした時を過ごした。

スライムもけもけは一度押さえるだけで水分を全部吸い取ってくれる。へー、これは便利だ。

スライムは魔物認定されているそうだ。弱い魔物だけど、繁殖力がすごいので増えると厄介。それゆえに、5つ以上近くにいたら討伐対象。

スライムは使い道がけっこうあるそうで、それに弱くもあるから手に入れやすい。それで魔法戦という授業で、スライム討伐研修があり、スライムを討伐し、その膜を使って便利グッズを作るというのをやるのだけど、最初は失敗することが多く〝スライムもけもけ〟を作ってしまうそうだ。その残骸を利用したのね。あったまいい!

ギリギリまでガーシとシモーネはわたしの護衛をしてくれるというので、教室まで送ってもらった。お父さまたちとは花幻想の出口で別れた。もふもふに頭を下げていたのが印象に残る。

シモーネには足をちゃんと手当てするように言われて頷いた。

教室に戻ればみんなで今日の売り上げを計算していた。今日1日分で利益が出たって! おおーー、みんなで抱き合ってぴょんぴょん喜ぶ。

そのうちにチャイムがなって、門が閉められ、一般参加の方たちが帰ったことを知らせてくれる。

先生から着替えてみんなでまとまって寮に帰るように言われた。

隣の教室で急いで着替えて、みんなで固まって寮に帰った。

急いで晩ご飯を食べる。

そしてクレープの追加を作っていく。

たこ焼きと焼きそばは男子たちが請け負ってくれている。クラスの方のもいっぱい売れたからね!

急いでお風呂に入り、ベッドに飛び込む。

明日も早いからな。

ぬいたちにはクレープを焼いているときに、ご飯を食べていてもらった。

もふもふがカーテンの隙間から覗き込むようにして外を見ていた。

「どうかした?」

『今日は月夜だ』

のそのそとベッドから這い出て、窓の外を見上げれば満月だ。

「本当だ、まん丸」

『我は散歩に行ってくる。リディア、我が戻るまで、絶対に部屋から出るな』

え?

ええええええええ????

もふもふは窓をすり抜けた??

窓を開けてないのに、もふもふの姿がない。

「さ、眠るでち」

みんな驚いてない。

「もふもふ、窓をすり抜けなかった?」

『主人さまだ。可能だろう』

え、そんな認識なの?

わたしはベッドに、ぴょんと飛び込む。

「もふもふはこうやって、夜に散歩に出たりするの?」

『会議とかで出ることもあるよ』

会議?

もふもふ会議??

何それ、気になるんですけどっ。

みんな上掛けの中に入ってくる。首回りがあったかい。

あ、足の指と足裏手当てするの忘れた。

明日起きて痛かったら、光魔法で直しちゃおうかな。魔素を使ってやればバレないよね。っていうか、お母さまがいたんだから、お母さまに治してもらえばよかったんじゃない? 馬鹿だなー、わたし。

なんて思っているうちに眠っていたようだ。

前日と同じように、もふもふにペロペろされて起きる。

『朝だぞ』

「おはよう、もふもふ。散歩は楽しかった?」

伸びをしながら尋ねる。

『運動にもならなかった』

そりゃ散歩だから、それでいいんじゃない?って思うけど、もふもふには違うのかな?

と、床につけると足が痛んだ。

見てみると、足の親指と人差し指の内側は皮がすりむけたようになっているし、親指の裏、他の指の付け根のところに水膨れができている。

光魔法で治しちゃえ。

精霊さんにかけているので、光魔法は手慣れてきた。

魔力を使うと使ったってバレるらしいから、漂っている魔素を使う。

魔力が馴染んでいる場所だとそういう使い方ができた。

よしっ。

今日も張り切っていくぞ!

食堂に降りていくと、みんなで固まって学園に行くように言われる。

何かあったのかと聞くとどうもそうみたい。

「ほら、昨日警備兵が侵入者を捕まえたでしょ?」

あ、そういえばあった、そんなこと! 目の前で!

その仲間がアベックス寮に入ろうとしてたんだって!

大陸違いの外国人で、ツワイシプ大陸は魔力の多い子が生まれやすい。学園祭中は誰でも学園に入ることができる。ここ数年、学園を守るシステムがダウンしていると噂を聞き、大胆にも学園に乗り込んで子供を連れ去るつもりだったようだ。

けれどそのひとりが捕まってしまう。そこで、子供たちの寝泊りしている寮に忍び込み拐おうとしたという。おっそろしいーーーーっ!

「でもさ、もう捕まえたのなら安全なんじゃない?」

と誰かが言って、その通りだと思った。別の誰かが

「まだ捕まっていない仲間がいると思われているんじゃない?」

と推理して、なるほどと頷く。

「要するに用心しろってことよ」

とまたまた誰かが意見を口にし、そうだね、用心するに越したことはないね、と思った。