軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第880話 忍び寄る悪意③お祭り屋台

下級生たちの教室の階をまわり、特別教室の並ぶ棟にも行った。

ただ練り歩いただけなのに、鼻緒が当たっているところが痛い。

他3人はなんともないみたいだ。ううっ。

4年生の教室が並ぶ階では、アダムがある方向からわたしを隠すようにしていた。アダムのやることだから、何か意味があるんだろうなーと思っていたけど。4年B組の前で、わたしたちは行く手を阻まれた。

「D組ってことは平民クラスか」

「にしては可愛いじゃないか」

とウォレスの手を取ろうとした。その手を払ったのはアダムだ。

「先輩、人としての礼儀は守りましょうか。仮にも学園の生徒なら」

アダムが凄む。

「な、なんだ、平民が偉そうな口叩きやがって」

と一人が進み出た。

「ん? 後ろにいるのはシュタインの妹か?」

「ああ、傷モノの?」

ヲイ。

「チビガリだし、髪も短いけど、顔立ちは悪くねーな。行くとこねーなら俺がもらってやっても……」

と言っている時に、後ろから飛び蹴りが入った。

カエルみたいに前のめりに伏せった。

「ウチの妹はなー、引く手数多だ。オメーにだけは絶対やらねー」

ロビンお兄さまだ。打って変わった声で

「嫌な思いさせてごめんな。こっちは締めとくから。宣伝、がんばれ」

そう励ましてもらう。

「行こう」

お兄さまにペコっと頭を下げたアダムに促される。眉が微妙に寄っている。

「学園では珍しく、たちの悪い素行の良くない者たちだ。絡まれたらとにかく逃げた方がいい」

アダムが教えてくれる。

「久々に平民だとか言われたね」

ラエリンが驚いたように言う。

「素行が悪いって?」

ウォレスが尋ねる。

「ご両親は真面目な金貸し業をされてるんだけどね。子供は何か勘違いをしてしまったようで……」

相変わらずの情報通っぷりを披露してくれた。

一通り校舎を練り歩き教室に戻れば、満員御礼だ。

たこ焼きも焼きそばも飛ぶように売れている。

あれは焼くところに目を奪われてという面もあるので、作り置きでは良さが半減してしまうなーと思った。

作り方は有志によってすぐに覚えられ、寮の厨房を手続きをして借りて作りまくったんだけど、その様子を映像の魔具で収めておいた。今、それを後ろの壁を利用して、そこに映し出し流している。みんな立ち止まって見上げている。

独特の丸い穴を開けたような鉄板の上でくるり、くるりと返していく様子はなんとも楽しいもんね。そうして出来上がったのがこちら!と、ソースたっぷりに鰹節もどきと海苔を散らし、そしてマヨソースも。

買ってすぐに食べ始める人が多く、それもまた効果的に働いているようだ。

アダムはちょっと外に出てくるとかで、わたしには絶対教室から出ないよう言われ行ってしまった。当番だから出ないよ。

綿菓子を作っているのはイシュメルで、その補佐をしながら会計をしているのはジニーだ。

焼きそばの麺は、始まりの村のダンジョン産のもの。

お手製パチンコのゴム部は数年前に開発されたという、植物の樹液とスライムの粉を混ぜたもので、わたしが思っていたゴムより伸び縮みはしないけど、なんとか用途を果たしている。

わたしは特にどのイベントを担当するわけでなく、フォロー要員だ。何か困った事案が発生したら助っ人することになっている。

「姉さま!」

エリンちゃん。後ろにはノエルくん、お父さま、お母さまもいた。

「うわー。おいしそう、楽しそう。姉さま、あれやりたい!」

エリンちゃんが指さしたのは射撃だ。パチンコ当てが正しいけどね。

射撃エリアにご案内。

アマディスがニコッと笑った。

「いらっしゃい! 1回5玉で300ギルだ」

300ギルもらって、パチンコと玉を5つ渡す。

的は木の板を動物の形に模したモノだ。

エリンちゃんは足を肩幅に開いて、堂々とパチンコを構える。片目をつぶって狙いを定め。当たった球は木の板を倒した。

『やられた〜』

倒れた動物から声が聞こえる。

エリンちゃんがオオウケした。

これね、賛否両論あったんだけど、最終的にゴーサインがでた。

的に当たると『やられた』と声が上がるのだ。

1発目から当てるとは!

お見事とみんなで盛り上がる。2発目、3発目……5発全て木の板を倒した。

エリンちゃんはぴょんぴょんその場で飛び跳ねて嬉しさを現した。

一瞬あまりの命中率に言葉をなくしたホスト側だけど、慌てて賑やかしをして場を盛り上げる。

「5発命中! おめでとうございます! 最高得点ですので景品はチョコ菓子です」

「やったー」

可愛く大喜びだ。

「次は僕だねー。姉さま、見ててね」

ノエルくんも300ギルを払って、パチンコと5つの玉をもらう。

ノエルくんも可愛いから、女の子たちから黄色い声が上がる。応援だ。

ノエルくんは早技で5つの板を倒した。

『やられた〜』『やられた〜』『やられた〜』『やられた〜』『やられた〜』

やられた声も壊れたおもちゃのように繰り返す。

一瞬、呆然としたけれど、慌てて拍手をしたり、当たった時用の小さな太鼓を使って音をかき鳴らす。

み、みんなでやってみて、中くらいの難しさにしたつもりなのに。

なんでふたりともパーフェクトにできちゃうのかしら。

「姉さま、見てた? 凄い?」

「うん、スゴイ!」

ノエルくんは景品のチョコ菓子をわたしにくれた。

「えっ。これはノエルくんのだよ」

「だから姉さまにあげる!」

「ずるーい、ノエル。あたしも姉さまにあげる! 一個食べちゃったけど」

あはははは。

「ありがとう。気持ちはもらうけど、できたら、ノエルくん、エリンちゃんに食べて欲しいな」

作った時に、いっぱい味見と称して食べていたから。

ノエルくんはにっこりと笑う。

「じゃあ、僕がいただくね」

そういって袋を開けて、ひとつ口にして。頬張ったまま、袋からまたひとつ出したチョコを、わたしの口元に寄せた。

クラスメイトの前で弟からあーんとチョコをもらうのはすこぶる恥ずかしい。が、ノエルくんの好意だからなーと口を開ければ、チョコが放り込まれる。

ノエルくんがそんなことをすれば、エリンちゃんがやりたがるのは、シュタイン家にいた時に学んだことだ。

エリンちゃんからもあーんと声つきでチョコを食べさせてもらうことになった。

「では母さまは〝輪投げ〟というのをやってみようかしら」

お母さまが華やいだ声をあげた。