軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第875話 アクション⑫パーフェクトブラザー?<中編>

ここ、ドレスショップ?

「お待ちしておりました。バイエルンさま」

「これから食事に行くんだ。ひとつは着せてくれるか? もうひとつは王都のシュタイン家に届けてくれ」

わたしのリュックを奪い、フランツはソファーにどっしり座り込んだ。

「かしこまりました。本日はバイエルンさまに合わせて、青いドレスをお嬢さまに着ていただきましょうか?」

フランツは答える。

「マダムに任せるよ」

「承知いたしました」

姿勢のいい骨格見本のような女性は、このショップのオーナーで、ここのドレスをプロデュースしているんだって。

挨拶の後、わたしを一室に促す。

フランツはわたしに手を振っている。

用意されたのは青いドレス。

今日のフランツのベストとズボン、そしてスカーフを彷彿させる色だ。

あまり見ないグラデーションがかかっているドレス。裾にキラキラした細かい宝石が縫い付けられているようだ。

胸のところはレースがいっぱい。

着替えるのを手伝ってもらい、全身映る鏡でチェック。

「お痩せになられたようですね」

と言って、立ったまま後ろで詰めてる?

手には薄手の白い手袋。

今度は椅子に座らせられ、薄くお化粧してくれる。

終わって立ち上がると、靴まで用意されていた。

少しだけかかとのある靴。

手伝いに入ってくれていた人たちからほぉっと息がもれる。

「とてもお美しいです。シュタイン令嬢」

マダムはにっこり笑ってくれた。

「ありがとうございます」

マダムの先導で部屋から出れば、フランツが立ち上がり、眩しそうに目を細める。

「とても綺麗だ、リディー」

教会でして見せたようにカーテシーをすると、フランツは驚いている。

「思い出した?」

「え?」

マダムたちもいらしたからか、フランツはわたしの手を取り、マダムたちにお礼を言った。会計は済ませているようだ。

みんなに見送られて、馬車に乗り込む。

馬車に乗れば、わたしにというより、レストランを予約してある。そこでぬいぐるみを解いてはどうだろうと提案した。レストランはすぐ近くらしい。

リュックの中から元気な返事が聞こえる。

「さっきカーテシーをしていたね。何か思い出した?」

頬を上気させるフランツ。

「いや、まったく。あのお辞儀は、教会でお嬢さまがやっているのを見て、真似したの」

「そっか、体が覚えているんだね。慣れたカーテシーだったから、思い出したのかと思ったんだ」

そういうことか。

「フランツはドレスを2着もわたしに買ってくれたの?」

付属品もだ。お値段ついてないからわからないけど、オーダーメイドっぽいよね。ものすごく高いんじゃないだろうか?

「贈りたかったんだ。迷惑かな?」

わたしはドレスの中で足をぶらんと揺らす。

「さっきも買い物につきあってくれて、全部買ってもらっちゃったし。ドレスってとんでもなく高いんだよね? 靴もだよ。家族のように暮らしていたけど、家族ではないんでしょう? いいの?」

フランツは迷っているような目をした。

「私たちは……何度も立場を変えて出会った」

「立場を変えて? 何度も?」

不思議に思えて首が傾ぐ。

「初めの出会いは、君の大きな 翠色(みどりいろ) の瞳が私を覗き込んでいた。君の瞳の中に小さな私が映り込んでいた」

フランツは自嘲気味に笑う。

「川原で気持ちをもう隠さないと決めた、2度目の出会い」

フランツはゆるく笑う。

「思いもよらぬところで、私の胸に舞い降りた君。会いたすぎて幻を見たのかと思った」

ふぅと息をつく。

「そして、私を忘れた君と、今度は出会った」

フランツはわたしに視線を合わせる。アイスブルーの瞳から目が離せなくなる。

「そうやって何度も君と出会いを繰り返した。その度、新たな君を知った。きっと君もそうだったと思う。私はね、また君に私を知って欲しい」

「フランツを?」

フランツは頷く。

「私は君に笑っていてほしい。いつも楽しくて、ワクワクしていて、好奇心旺盛のままで。君の〝楽しい〟を忘れてしまったのなら、新しく〝楽しい〟を見つけ出そう。私はその手伝いがしたい。買い物も、ドレスも、これから行くレストランも、君の楽しいが見つかるといいなと思っている」

あれ?

「フランツは、わたしが思い出さなくてもいいの?」

フランツはこれから見つけ出そうと言った。

「どっちでもいいよ。忘れたなら新しく作ればいい。君の大好きをいっぱい見つけよう」

心がふわっと軽くなる。

気にしないようにしていた。思い出さないとと気合を入れるとかえってストレスになって思い出せないような気がしたから。

でも、みんながわたしが思い出すのを心待ちにしているはわかるから。

どこかに焦る気持ちがあった。

けれどフランツはどっちでもいいって言ってくれた。

忘れたなら新しく作ればいいって。大好きなものをいっぱい見つけようって。

えへへ。

今のわたしを認めてくれる。それが嬉しい。

馬車が止まる。

「さ、食事だ。このレストランは評判がいいんだ」

そう手を差し出してくる。

わたしはその手に手を乗せ馬車を降りる。

レストランに入ると、従業員さんがズラッと並んでいて、揃って頭を下げた。

おおー、ビップ扱い!

一室に案内される。個室だね。

え?

広い部屋に8人がけぐらいのテーブルに向き合って椅子が2つ。

その他に壁にテーブルがいくつも寄せられていた。

それからどんどんお料理が運ばれてくる。

わたしたちの前のテーブルだけではない、壁に寄せられたテーブルにもどんどん置かれていく。取り皿も山ほどおかれ、飲み物もピッチャーがいくつもコップも。

え。これ2人分で? バグるんだけど。

「さ、みんな出てきていいよ」

リュックからぬいたが飛び出てきた。

そのサイズのまま動き出す。

『わー、肉だ!』

それかい!

もふもふもぬいサイズのまま、テーブルの上にタンとあがってくる。

「それじゃあ、いただこう」

フランツの声に、みんなでいただきますだ。