軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第847話 潜入⑪玉のレシピ

水源をみんなで探っていく。

プールに流れ込んでいる水は、ドラゴンが張りつけられていたところの壁の上から、壁を伝って落ちてきている。それしか見あたらなかった。

「上にあるのか」

壁をよじ登ろうとしているガーシに、もふもふが背中に乗れと言った。

しばらくするとバスケットボールサイズの透明の玉をガーシが持ち帰ってきた。

水源と思われる小さなプールにこれが浮かんでいて、もふもふからこれを取れと指示された気がする、と。そのプールには下に流れていく管しかなかったそうだ。この玉から水が出ていたように思えたという。

『我も見るのは初めてだが、これは恐らく精霊だ』

精霊? おお、ファンタスティック!

玉を覗き込んでよく見ると、ほとんど透明だけど、ほのかに水色っぽく色づいているところがあり、よくよく見れば、小さな小さな女の子が玉の中で眠っているようにも見えた。

『弱っておる。我の力では強すぎるやもしれん。聖力をかけてやってくれんか?』

もふもふはわたしを見ている。

「光魔法ってこと?」

『それでもいいだろう。友も魔力が戻っているわけでないから少しでいい。ここまで弱っているとなると長期戦だ。少しずつ回復させる必要がある』

もふもふの言う通りにして、光魔法を注いだ。少しだけ水色が強くなったように感じるけど、中の少女はたゆられているだけ。

『トスカよ、感謝する。やはり精霊だ。神力と聖力を宿した神聖力を持つ精霊。この者に水を出させていた。水の精霊なんだろう』

「神聖力とは神力と聖力を宿したことをいうのですか?」

アダムが丁寧な口調で、もふもふに尋ねた。

『そうだ。精霊を捕まえてきて、神力と聖力を注ぎこませ、高位ドラゴンから瘴気を。そして世界樹の葉で現世に安定させる。こうしてここで〝玉〟は作られていたのだな。この精霊の力が弱まり、長くつけておかないと、神力、聖力がたまらなかったのだろう』

みんな言葉が出てこない感じだ。

「組織は世界の 理(ことわり) に詳しいんだね」

呟くと、いくつもの視線がわたしに向けられた。

「確かに。バッカスはそんな情報をどうやって仕入れたんだろう? 精霊なんてもう、物語の中にしかいないと思っていた。しかもそれを使役するなんて」

そっか、神力と聖力の合わさった水を出させていたのだろうからね。

……ドラゴンの生き血を100年。精霊もやっぱりそれくらいこの玉の中で?

精霊の入った玉を取ってしまったからか、水はもう流れてこなくなっていた。

「ここの頭が鍵だな。精霊を使役する方法があるものなのか、容易いのか、それも調べないとだ」

「頭はあの弁護人だろう。誘き出して捕まえたいところだ」

ロサとアダムが次々に言った。

「ねぇ、〝蜘蛛の巣〟は潰したことを公けにするの?」

「そうだな、あちらは公けにする。派手に壊しているだろうし。見せしめの意味も込めて」

「だとしたらここは近いもの、ここのトップはここにも入られたかと思って心配して戻ってくるんじゃないかな?」

「……そうだな。もし戻ってきたら絶対に捕まえないと」

「鼻が効きそうだから、部下に確めさせるだけかもしれないぞ」

アダムが注意を促す。

「待ってるだけじゃなくて、仕掛けた方が手っ取り早いんじゃない?」

『何か思いついたのか?』

クイが嬉しそうに言って、わたしの肩に乗ってきた。

「そのトップは、玉に加護の力を込めたくて、記憶を失う前のわたしならそれができるって思ってたってことよね?」

「ま、そうとも言えるかな?」

アダムが頷く。

「わたしは今、王宮にいることになっているのよね?」

わたしの視線の先でイザークが頷く。

「あのネックレスは王宮にある」

わたしはニンマリしてしまった。

「ロサかアダムが王族にでも化けてさ、加護玉が欲しいってバッカスに言うの。いくらでも出すとか言って」

「まさか、君。自分が囮になるとかいうんじゃないだろうね?」

フランツに肩を持って揺すられる。

「そんな怖いことごめんよ。違うわ。必要なものは用意するとか餌をちらつかせれば、ドラゴンを変えようと思ってたんだから乗ってくるんじゃないかな? ここにおびき寄せるの。そして一網打尽!」

どうだと胸をはれば、みんな力なく笑った。

「はは。その案は使えないけど、発想はいいね」

「なんで使えないの?」

「加護玉を作るには、君が必要だから」

「わたしが加護玉の作り方を知ってるって思ってるの? っていうか、知ってたの、わたし?」

「正しくは知ってると思われていた、だろうね」

「それじゃあ、わたしが記憶を失って、奴らは困ってたってわけね」

よくやった、わたし!

記憶がないのは不安要素であるけれど、玉を作るのにあんな残酷なことをしていたり、記憶のないわたしに植えつける情報が酷かったり。子供を拐ってきていたり。いちいち嫌な感じしかない組織なので、そいつらに意趣返ししてやれたなら、よくやったとさえ思う。

そしてもう一度考えて、あれって思う。

「案、使えるじゃん」

みんな、それは思いついていたように嫌な顔になる。

「やっぱり囮になる気じゃないか」

「違うってば。なんでも用意すると言えば、オタクの王宮にわたしがいるでしょ、わたしを差し出せとか言いそうよね? そしたら連れていくとか言って、そこで捕まえればいいじゃん。わたし、囮になる必要もないし」

「その点については場所を変えてから話し合おう。

ここは外から見て何事も起こってないように偽装する。

ここに入ってくるものは一人残らず捕獲だ。

ここの魔石は全て場所を移す。そして偽物を置いておく」

「弁護人、ここの施設の頭を捕らえるのが目標だ。トスカはなるべく早くにユオブリアに渡って、瘴気を払ってもらうこと。目先のことはこれくらいかな?」

ロサとアダムがまとめた。