軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第835話 〝もふもふ〟と〝もふもふぬい〟

寝過ごした?

飛び起きる。

外は真っ暗。

もふもふが舐めて起こしてくれたのだ。

部屋の外がざわざわしている。

間に合ったみたいだ。

「もふもふ、おはよう、ありがとう」

身支度をしながら聞いてみる。

「もふもふは〝お遣いさま〟なの?」

もふもふは毛繕いをしている。こちらを見たりもしない。

うーん、謎。

それに〝お遣いさま〟ってなんのお遣いなんだろう?

神さまかな?

わたしはベッドを整えてから、部屋を飛び出した。

「ト、トスカ?」

部屋から出てすぐに名を呼ばれて、わたしはびっくりした。

「おはよう。お屋敷の中なのに、護衛してくれてたの?」

外に立っていたのはシモーネだ。

「寝てないの? これから襲撃なのに?」

「いや、トスカ、君は」

「ちゃんと出立までに起きられたわ」

わたしはシモーネの手を引いて、階段を降りた。

わらわらと戦士たちがいて、もちろんそこにはロサを始めとして、アダム、フランツ、イザークもいて。みんなわたしに目を止め、目を大きくする。

「おはよう」

深夜であっても、目覚めてから最初の挨拶だからね。

「……おはよう、トスカ」

フランツは目をすがめてもふもふを見た。

もふもふもフランツを見返している。

「早起きだね」

「出立だからね」

わたしはすまして答えた。

「……トスカ、ここに残って欲しい」

真正面からきた。ダイレクトに逃げ道がないようにズバリと!

周りの人たちのざわざわが消える。

「わたしも行く!」

「君は足手まといだ」

フランツは歯に衣着せずに指摘する。

そ、そんなのわかってる。

「そうだけど、何か思い出せるかもしれない。お願い!」

「……制圧して、組織の者を施設から出したら、連れて行くよ。わざわざ組織の奴らがいるところに行くことはない」

アイスブルーの冷たい瞳に浮かぶのは〝拒絶〟だ。

フランツには何を言っても無駄だ。

これは一旦引いて、荷物にでも紛れ込むしか……。

その時首の後ろにトンと軽い衝撃が……。

「ごめん。こうでもしないと君はついてきそうだから……」

目が覚めるとベッドの上だった。

もぞっと体を起こす。

もふもふが、わたしの膝上に乗ってきた。

まだ暗いけど……。

「わたし、置いて行かれたの?」

目の奥がじわっとする。

わたしはもふもふをのかして、ベッドから降りる。

ドアを開ければシモーネが立っていた。

「トスカ……」

「みんなは?」

「……出立されました」

「シモーネは知ってたの? みんながわたしを置いていくって知ってたの?」

シモーネは決まり悪げに頷く。

「なんで? シモーネはわたしの護衛、味方でしょ? なんで、わたしの味方になってくれなかったの?」

「味方だからだ」

「大前提に、トスカを危ない目にあわせたくない。それが何よりもの最優先事項だ」

お屋敷内は静かだった。

「わたしはどれくらい寝ていた?」

「……30分ほどだ。お腹は? 食事にするか?」

「いらない!」

わたしは部屋に戻る。

衝撃を感じた首の斜め後ろを触る。

痛みはない。多分、ここら辺の急所をピンポイントで加減して気を失うようにしたんだ。

みんな危ない場所だと思ってる。だからわたしを連れて行かないんだ。

危ない場所なら、みんなだって危ないじゃないか。

危ないなら中には入らない。でもどうなったのか、怪我してないか、一刻も早く知りたい。

「もふもふ、お願い! わたしを〝蓮の葉〟に連れてって」

もふもふは毛繕いをしている。わざとらしい。

「わたし、もふもふが賢いこと知ってるし。言葉も話せるでしょう? 何度か頭に響いてきた。あれはもふもふでしょう?」

前足を舐めている。

「それに、そのリュックの中の子たち。夜中によく話してるよね、リーって子のこと」

もふもふの背中のリュックが不自然に動く。

「わかってるんだから。ぬいぐるみじゃなくて生きているんでしょう?」

もふもふはすまして後ろ足を舐めだす。

わたしは昨日もらった、紙で包んであるお菓子をポッケから出した。

「ぬいぐるみの子たちは甘いもの好きなんだよね? クッキーが食べたいって言ってたもんね」

夢かと思っていたけど。

「ほら、クッキーだよ。あげる。食べていいよ」

包み紙を広げてベッドの上に置く。

リュックの中がもぞもぞしている。

「じゃあ、わたし後ろを向くね」

心の中で、20秒だけと言葉を付け足す。

後ろを向き、ゆっくり1、2、3と心の中で数を数えた。

20数え終わり、体を回転させると、ぬいぐるみたちがクッキーに群がっていた。

水色ペンギンがわたしに気づく。

「後ろ向くって言ったでち!」

「うん。20秒って言い忘れた」

ムゥーっという顔をするけど、可愛い。むくれても可愛い。

「ゆっくり食べて、邪魔しないから」

もふもふは深いため息をついていた。

みんな食べ終わって満足したみたい。

人懐っこくて、わたしの手や膝の上に乗ってくる。

「わたしはトスカ。あなたたちのお名前は?」

「……アオでち」

水色のペンギンは言った。

『レオだ』

青いツルツルのドラゴンちゃん。

ドラゴン……なぜだか胸がわさわさする。

でもこの子は青い。青いのだから大丈夫。

『アリ』

アリクイの小柄な方の1匹が、黒曜石のキラキラお目目でわたしを見上げる。

『クイ』

アリクイのこっちも小柄な方の1匹がわたしの耳元で名前を教えてくれる。

『わたくしはベアです』

サイズの大きなアリクイのぬいぐるみは、上品に言った。

「ぬいぐるみみたいになれるのね、スゴイね」

だって触っても何しても全く動かなかったし、息もしてなかった。

そういうと、みんな一様に照れている。可愛い。

指で撫でると、気持ちよさそうにした。うううっ、可愛すぎる!

頬擦りしてもいいかときいてみれば、お許しをいただいたので、みんなを抱きしめて頬擦りする。どの毛もいい感じで。なんか安心するやつだ。

しばらく撫でくり回して、やっとそんな場合でないことを思い出した。