軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第826話 失くした時間

「これだ」

「え?」

「これは君の両親が残したものなんかではない。魔力を封じるものだ。バッカスの組織が作る、魔法を込めて作るあれと同じだ。それで君の魔力を封じている。……魔具のように完璧にできるわけじゃないんだな。だから君から微かに魔力が漏れているんだ」

「ど、どういうこと?」

「これは組織が作った、組織風に言えば〝魔力封じ玉〟で。両親の残したものだと言えば、君が肌身離さず持っていると思ってついた嘘っていうこと。だとすると、組織が話した君の境遇も疑わしいね。君の両親が組織のお金を盗んで逃げたんだっけ? それも君を置いて。それも作り話だろうね」

え?

「それなら、わたしの本当の両親は? わたしは今までどこでどうやって暮らしていたの?」

言ってから気づく。イザークにだってわからない。そんなこと言われたって困るよね。

「ごめんなさい。困らせるつもりはないの」

「これは堪えるな、確かに」

イザークは小さい声で何か言う。

「え?」

「あ、いや。君の嫌がることは、みんなしたくないと思っている。

記憶を思い出したくないと聞いた。

本当の両親のこと、今までのこと、記憶を取り戻したくなった?」

一瞬だけ。本当に一瞬だけ、イザークに話すか迷った。

けれど、会って数分なのに。ロサたちの仲間だからか、信頼していた。

「……みんながわたしを好きだって言ってくれたの。記憶を失くしてから〝好き〟って感情は取り戻したと思う。みんなわたしが好きだから、わたしのことを考えて楽しく過ごせるようになんでもするって。

わたしもそうしたいって思った。わたしの記憶は組織潰しや、みんなが探している子を救うことに繋がる何かを持っているかもしれない。そう思って、取り戻してもいいかなと思うようになった」

「……そうか。この魔力封じの玉、壊してもいい?」

「壊すとどうなるの?」

「君の魔力が封じられなくなる。君は魔法が使えるようになる」

「壊したら、そのことが組織にわかると思う?」

イザークはあっという顔をした。そして顎を触る。

「なんとも言えないな。もしかしたらわかるかもしれない」

「それなら、今はやめとく」

「わかった」

「魔力はどれくらいあるんだろう?」

「かなりあると思うよ?」

「本当?」

す、すごい。魔力なしって貶められていたけど、わたしに魔力がちゃんとあるなんて!

「俺は魔力専門なんだけど、君は元々瘴気が少ない気がする。ゆえに瘴気が君を蝕むのではないかと思う。それでルシオに見てもらうといいと思うんだ」

「ルシオって誰?」

「俺たちの仲間で、神官なんだ」

「神官さま? 神官さまは瘴気のことがわかるの?」

「瘴気については、呪術師の方が専門なんだけど、彼らはユオブリアから出られないから、ユオブリアに行った時に見てもらうのがいいと思う。その前に、ルシオは少しなら瘴気のことがわかるから」

「みんな得意なことが違うんだね。イザークは魔法士だっけ? なんで魔法士になったの?」

「俺の親が魔法士なんだ」

「それじゃあ、それを見て?」

だとしたら、とても素晴らしい魔法士なのだろう。

魔法士としても、イザークの〝親〟としても。

イザークが同じ道を歩みたくなるぐらい。

……わたしはどうだったんだろう?

「……小さい頃は反発してた」

え? 憧れたわけではないの?

「誰かのためにばかり力を使って、家にもなかなか帰ってこないし。兄は誇らしげにしていたけど、俺は不満だった。一緒にいてほしかったんだ。それがある日、ある領地に行かなくてはいけなくて、そこの子息と俺が同い年だからって一緒に連れて行ってくれたんだ」

その時の映像が蘇ってきてるかのように、イザークはほんの少し上を見上げる。

「父と一緒に旅ができて嬉しかった。母が報告していたのか、父はいつもいないのに、俺のことを良く知っていて……。旅先で……友達ができて、その友達が変なことに巻き込まれていて。それを正しに行った。

あの時俺は子供だった。世間のこともよく知らない。でも父は俺たちの好きなようにやらせてくれた。後ろで見守っていてくれた。どうしても力が及ばない時、魔法で助けてくれた。

その時わかったことがある。父は俺を放っておいたんじゃなくて、信じて見守っていてくれたんだと。

それから、魔法の可能性。俺のオーラは見分けることができて、魔法が使えた。そのおかげで誰かの力になれることがあるってことに。

俺はこの力を授けてもらった。だからこの力を必要とする人のために使いたいと思って、それができるのが魔法士だと思ったんだ」

イザークはわたしに視線を戻し、にこっと笑った。

イザークもイケメン。王子さまよりじゃなくて、野性的な方。そしてクール。

「こんな澄んだオーラは、とても愛された人しか出せない色だ。これは今までたくさんの人のオーラを見てきた俺が断言する。

君は家族や友達、仲間、いっぱいの人から愛され、愛してきた人だ。だから怖がらないで。怖い時は俺たちを頼って。

そして取り戻そう。失くした時間を」

「イザークは魔法士であることに誇りを持っているんだね」

ありがたいけど、素直にそう言えなくて、違うことを口にする。

「……そうありたいと思うよ」

「みんなかっこいいな」

容姿だけじゃなくて、考え方、生き方がかっこいい。

わたしもそんな風になりたいな。

ポポ族の真っ白の羽を思い浮かべていた。

いつも穴の中にいて、空を見上げるのはゴミを外に捨てに行く時だけだった。

気持ちはいつも下向きだったけど。

みんなと会って、わたしは変わった。

どんな過去でもわたしは向き合おうと思う。

みんなみたいに、今からでもかっこいい生き方をしたい。

自信と誇りを持って、空に飛び立ちたい。