軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第814話 笑うことを忘れた少女⑬似顔絵

「人が途切れた時に、中に入って、食糧庫に隠れました」

「食糧庫には水玉があるから、それをもらった」

わたしの後に、ジンが理由を説明する。

「水玉はどうして?」

アダムに尋ねられた。

「煙を見て慌てて外に出た人も、いずれ火は見ていないと気づいて中に戻ってくるかもしれないから。その前に外に出られてたら一番いいけど、人が戻ってきたら水玉を使って、その人たちが〝火を見て水玉を使ったのか?〟って思ったらいいなと思いました」

「そういえば、水玉みたいな玉は魔力でしか使えないはずなのに、なんでトスカが投げたやつは水が出たんだろう?」

ジンが不思議そうに言った。

「あれって、魔力操作もだけど、壊れれば作動するんじゃないの?」

「そういうのもあるかもしれないけど、水玉は魔力じゃないとダメだろ?」

「え。言ってよ!」

「え? 知らなかったのか? 自信満々だから、何か策があるんだとばかり」

危なかった。なんで作動したのかわからないけど。

顔のいい3人組は顔を見合わせている。

「エレイブ大陸ではきちんと伝えられないことが多いのかもしれないけれど、魔力がないってことはないんだ。魔法を使えるまでの魔力がないから、魔法が使えないだけで。けれど、スキルやギフトはあるんじゃないかい? ギフトは必ず持っているはずだよ。それは魔力が少なくても使えるはずだ」

「俺はギフトまで意味のないものだったからなー」

ジンが落胆したように顔を伏せた。

「そんなことはないよ。きっとギフトを生かせる道がある」

ロサが力強く言った。ジンは微妙な表情だったけど、その言葉を噛みしめている気がした。

「話は逸れたけど、みんな少ないのだろうけど魔力はあるから、それで水玉も作動したのかもしれないね」

ふーん、そういうことか。

水玉の謎も解けたので、その後の逃走劇を話した。

ただわたしたちも、もふもふに乗って逃げてしまったから、その後どうなったかわからないんだよね。

ただピンピン玉級の水玉だったのに、〝最大の〟って看守が言ってたことや、どうやらわたしを独房から出したり、売りつけようとしていたのは、最下層の看守の独断ぽいことを話した。

それから看守が〝今は魔法が使えない〟ってわたしのことを言っていたとも。

それにしてもわたし、なんで会ったばかりの人たちに、こんな自分の情報を話してしまっているんだろう?

〝アリの巣〟は前から怪しいと目をつけられている場所だった。

鉱山崩落の危機の知らせがあった時、怪しんでいた国は直近の街から衛兵を派遣した。救助もそうだけど、同時に中のことも調べたかったようだ。

最初に〝アリの巣〟から出てきた人たちは近くの街の商会に物資を求めた。移動用の馬車なんかも頼んだみたいだけど、商会は国から待ったがかかったので、食料や野宿に必要なものなどは届けたけれど、移動する何かはすぐに用意できなかったなど言って誤魔化した。

子供がいっぱいいて、とても鉱山だとは思えなかった。それにどういうことにしても、まだ年端もいかない子供を働かせているとしか思えなくて、立ち会った人たちは憤慨していたようだ。

衛兵が来るまでの間に、子供は心配した親が迎えにきただのなんだの言ってどんどん少なくなり、最後は責任者として残っていたものも姿をくらましていた、とのことだ。

〝アリの巣〟は地上に出ている食糧庫やゴミ置き場は浸水しているぐらいだけど、他の階層は一度水で埋まったらしい。魔法士により水が取り除かれ、みんな逃げたようで中に閉じ込められた人はいなかった。それを聞いて、長い息がでた。

よかった。地下に水、危険! わたしがやったことだけど!

水が入ったり抜かれたりしたことで圧がかかったのか、その後、ズドドドンと響く音がして、入らないようにロープで囲まれていたところが崩落したそうだ。

そしてわたしたちに協力してほしいことのメイン。看守の顔を似顔絵にしたいので詳しく教えてくれとのことだった。

おー、犯人の似顔絵とか描くやつか。ん、犯人?

あれは警察が。警察?ってなんだっけ。

「ねぇ、ミミ、警察って知ってる?」

「けいさつ? うーうん、聞いたことない。トスカってよくわからない言葉使うよね。記憶を忘れても覚えていることだから、忘れていることを探る手がかりになるかもね」

そうか。ミミたちが知らないだけかもしれないけど、特殊な言葉だったりしたら、なにかヒントになるかもしれないな。

「どうかしたのかい?」

アダムに尋ねられた。

「警察って知ってます?」

「けいさつ? ……いや、知らないな」

「そうですか」

がっかりだ。アダムなら物知りだから知ってるかもしれないと思ったのに。

「けいさつがどうかしたのかい?」

「似顔絵を描くって聞いて、警察がやるやつかって思ったから……」

アダムとこちらを気にしていたようなロサが、揃ってフランツに視線を移す。

「フランツは知ってる?」

「あ、いや。私も知らない」

「そうですか……」

もふもふがわたしの膝の上に乗ってきて、頬を舐めた。

慰めてくれてるのかな?

「ありがとう。大丈夫だよ?」

わたしはもふもふの頭を撫でた。

似顔絵描きは面白かった。

魔法士さんだという人は、最初は髪型はどうだったとか、おでこ、眉、目、鼻、口、頬、顎など詳しく聞いて、描きこんでいく感じで、それをわたしたちに見せ、もうちょっとこうだったと言えば、その絵が動いて修正されていく。

それがすっごく楽しかった。だって、描いた絵が動いていくんだもの!

わたしはみんなより多くの看守と会っていたようで、その点は役にたったんじゃないかと思う。でもわたしは人の顔を覚えるのが苦手で、すっごい特徴あるところしか覚えてなかったんだけど、ね。

そうして、わたしたちの今後の話になった。