軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第813話 笑うことを忘れた少女⑫バッカスのこと

わたしからの情報が一番少ない。

なにせ記憶がないし、アリの巣は2箇所目だけど、袋に入れられて独房から独房への移動だったので、そのほかの情報がない。

すみませんって感じだ。

次はどうやってあそこから逃げたのかという話になった。

わたしたちは計画と、アクシデントが起こり、結果的に逃げ切れたことを話した。

途中でバレたのでゴミとなって外に出る計画に変更したことも。

マトンが下を向いている。

馬に乗せてもらい、馬は山の中腹の川のところで足を止めたんだと伝えれば、みんな安心したように息を吐き出した。

馬が用意されたことを、彼らは驚かなかった。不審そうにもしていない。

「もしかして、あの銀髪の人って仲間ですか?」

尋ねると、3人は複雑な顔をする。

「仲間っていうか……協力者ってとこかな。彼はバッカスに多少の伝手があったから、機会があったら中を探ってもらうようお願いしたんだ。売られそうになっている子たちがいて、表立って助けるわけにはいかないから逃げ出すようけしかけたと聞いた」

ってことは、わたしたちのこと本当に最初から知ってたんじゃん。バッチリ見張られていたの?

「わたしたちのこと、最初からわかってたんですね?」

気持ち悪いので、聞いておく。

「5人の子供ってことはね」

フランツはそれに何か問題あるのかといいたげだ。

「あたりはつけていた。けれど最初からそう尋ねたら怖がらせると思って、窺っていた」

アダムが認める。

「バッカスという組織が大きいのはわかったよね? 〝アリの巣〟にいた者たちは他の組織の施設に収容されただろう。君たちのことが組織中に通達されているはずだ。だから君たちを保護したい目的もあった」

「保護?」

「どうやって生きていきたいかは追々考えていくとして、しばらく我々と一緒に行動して欲しい。守りたいから」

「私たち組織に探されているの?」

ミミがヒステリックに叫んだ。

隣のミミの肩に手を置く。

「怖がらせたいわけじゃないけれど、その可能性は高い。なんてったって、君たちはエレイブ大陸の中央支部を崩落させちゃったんだからね」

なぜか嬉しそうなロサとアダム。

「その後に戻って水玉を使ったの? 逃げきれたのに、どうして戻ったんだい?」

アダムが言って、ズズッと前のめりになる。

「俺が……俺がバラしたんだ」

マトンの顔が泣きそうに歪んでいた。

「俺、絶対うまくいかないって思った。途中で見つかるって。でも食糧庫まで行けそうになって。ものすごく怖くなって。それで見回りの看守に言いつけたんだ。みんなが脱走しようとしてるって」

「……なるほどね」

納得いったように大きく頷いている。

「それで君たちは逃げられたのに、彼を助けるために戻ったの?」

「トスカがマトンに、どうしても聞きたいことがあるって」

「トスカが?」

マトンがわたしを見た。

「俺に?」

バツが悪いとはこういうことだよな。

「わたし、最初からマトンを疑ったんだ」

「え?」

「だからさ、あの時、大人に見つかって殴られて仕方なく言ったのかもしれないのに、あの部屋に大人が探しに来た時、マトンが自分が助かりたくて言いつけて、自分は助かるつもりでわたしたちを売ったんじゃないかと思ったんだ。最初から疑ったんだ。ごめん」

「え、いや、その通りだし。……トスカが謝る必要なんてないよ」

「うん。最初に疑った通りだったから、一発殴って終わりにしようと思ったんだけど、そうだったとしても疑ったのは悪かったから謝るよ。ごめん」

わたしが謝ると、ジンも言った。

「俺もなんだ。大人が来た時、マトンが助かりたくて言いつけたんだと思った。殴られたからかもって、トスカに言われるまで思いもしなかった。ごめん、マトン」

「俺もだ、ごめん」

「私も。ごめん」

なーなーで来ちゃったけど、ちょっとずるかったね。反省して心から謝った。

「な、何言ってんだよ。俺が、俺が裏切ったのに。俺のこと助けに来てくれて……」

「……マトンに仕方なく言ったのか、最初から裏切ったのかを聞きたくて、マトンを救出したんだね?」

フランツに確かめられ、わたしはなんとなく頷く。

「だから5人の子たちが売られそうになっていたのに、逃げてきたのは4人。4人馬に乗せたはずの子たちが、また5人に増えていたんだね」

銀髪から細かに連絡がいっていたんだ……。

「〝アリの巣〟を崩壊させるつもりだったの?」

ロサが興味深そうに言う。

「いや、トスカの案で。アリの巣は朝と幹部が出ていく時しか扉は開かない。中には人がいっぱい。マトンは最下層にいる。人がいっぱいいるし、俺たちだって探されているのにマトンのところまで行くのは無理だって言ったんだ」

「そうしたらトスカが、入れないなら、中から人が出てくればいいって言って」

「中から人が出てくればいい?」

「トスカがけむりだまの作り方を知ってて」

「煙玉の作り方を?」

アダムが驚いた顔をした。

「記憶はないけど知識は多少あるみたいで。穴で怖いのは火事と水害。だから火が出たと勘違いさせれば、中の人たちが出てくるんじゃないかと思ったんです」

「でも、煙は上にのぼっていくはずだ」

ロサが真面目な顔で言った。

「……作る時に不純物が入ると煙玉の煙は下に降りていく。動物の毛なんか入るとね」

アダムが言うと、ジンが頷いた。

「そうだよ。トスカがそう言って、馬の毛を入れたんだ」

アダムはなんだか嬉しそうに笑った。

「……もしかしてアダム、君もそんな失敗を?」

ロサがアダムに尋ねる。

「ああ。学園の実習中に、僕の相棒であるソックスの毛が入り込んじゃったみたいで、失敗したんだ。評価が悪くなって、同じ班の子に悪いことをしてしまった」

「……それがここにきて、生きたってわけか」

フランツが意味不明なことを言って、天井を仰いだ。

わたしがじっと見ると、フランツが促してくる。

「そののぼっていかない煙玉を使って、中の人たちに火事だと思わせたんだね?」

ミミが頷いた。

「通気口に火をつけたけむりだまを落として、私たちゴミ置き場に隠れていたの。少ししたら、中から人が出てきた」