作品タイトル不明
第777話 いいこと悪いこと⑩問い合わせ
なんか、どうなってしまうのだろう?
国には世界議会から問い合わせが早速きたようだ。
神獣が相手となると、全ての大陸そして全ての国にも関係してくる。だから出張ってきて当然か。
教会に流れてきた映像を、録画できた 強者(つわもの) がいたらしい。
それによって知ることができたが、どうしてああなったのか、セイン国の者は何をして神獣を怒らせたのか知らせて欲しい旨のようだ。
『リディア、録画していたのだろう? 見せてやれ』
わたしはもふさまを撫でる振りをして、耳に小さい声で呟く。
「録画する時は、その前に知らせなくちゃいけないのよ。それに陛下もいらっしゃる席で録画してたなんてバレたらまずいの」
『我が録画をしたことにすればいいだろう?』
えーーー。ありがたいけど、バレバレだよ。
もふさまはわたしのブローチ型魔具を器用に咥えて、尻尾をふりふり移動して、陛下の差し出した手の上に落とす。
嗚呼!
「リディア嬢、これは?」
めっちゃ言いにくい。
「あの、申し訳ありません」
わたしは深く頭を下げた。
「セイン国の殿下に何を言われるのかわからなかったので、……申請しておりませんが、その、録画をしておりました。すみません、わたしの一存でしたことです」
さすがに陛下は呆れ顔だが、ロサとアダムは堪えきれないというように笑っている。
「陛下、申し訳ありません。私が娘にそうするよう言いつけたのです」
「いえ、陛下、私が頼みました。罰するなら私を」
「罰するなら私に願います」
父さまと兄さまとロビ兄が陛下に懇願する。
「今回はその証が役立つゆえ罰しないが、録画の事前報告は王の前だからとそういうことではなく、話し合いの場で明かさないことは、そこに企みがあると受け取られるから禁じているのだ。それを肝に命じ、今後はきちんと事前に申告するように」
「はい。申し訳ありませんでした」
心に刻む。
ってことで、セイン国の第3王子が神獣さまを愚弄し、神獣さまの言葉を盾にとり、わたしにネチネチ言いがかりをつけていたことは、世界議会が知ることになった。
つまり、セイン国が神獣の加護がどういったものかを知るのに、わたしにちょっかいを出し、たまたま舞い降りた神獣に質問をし怒らせ、自国の教会を消されたことが、世界に知れ渡った。
神獣が発信した映像とそれよりも尺が長い映像、かぶる部分の内容が全く同じであること、事が起きてからその映像を提出するまでの時間が短かったことから、その長い方の録画も捏造されたりされていない事実だと承認された。
これは各教会に送られた映像の通り、神獣の怒りをかったセインの教会に制裁が下った結果だと、皆に認識された。
そしてわたしが他国の情報を手にはしていない証明にもなっただろう。心の中でどう思うかは自由だけど、神獣がわたしに国の情報を漏らしたことはないと言い、神獣の在り方には矜恃があることが映像からわかる。その矜恃を、わたしをなんとかしたいがために見誤れば、神獣からの制裁がくだる。簡単な図式だ。
証拠の映像があったのでスピーディーに事は運んだ。お茶を1杯いただく間に、世界議会から片がついたと連絡もあった。
その後、子供たちは部屋から追い出された。世界議会から別の話があるようだ。父さまもいることから、アラ兄の魔具のことではないかと思われる。
世界議会が動く案件と認定されるには条件がある。
ふたつ以上の大陸をまたにかけ、最低4つの国がかかわっていて、国同士の話し合いが見込めそうにないことなどが審査条件。そして世界裁判で通じるような明確な証拠がなくてはならない。
アラ兄が建前とした魔具があったとしても、ユオブリアでしか使ってないのだから、ひとつの大陸でおきたことだし、ひとつの国しかかかわっていない。そんなのを〝提出〟されて困っただろうな。でももしそんな魔具ができてしまったら、世界を巻き込むことになり得るから受領されたのかしら?
子供たちだけで部屋を移った。
メイドさんがお茶の用意をしてくれて、新しいお茶菓子が用意される。
「本当にふたりとも罰せられることはないのね?」
兄さまとアダムにまず確認だ。
「ああ、大丈夫だよ。心配してたんだね?」
兄さまはにっこりと笑う。
「当たり前よ」
「っていうか、王宮にて、録画の魔具仕掛けてたことの方が私は驚いたけどね」
アダムに言われる。
「あれは出来心というか……」
「陛下の魔力に探知されなかったんだ。それもすごいよ」
え? 魔力探知そんなこともできるの?
それめっちゃ、やばかったじゃん。
「なんで見つからなかったんだろう?」
「お使いさまの力ってわけでもなさそうだし。邪心がなかったからかもね」
「それにしても、ロビンもリディア嬢も本当に元気でほっとしたよ」
そう言って、ロサは声を潜めた。
「アランも本当に大丈夫なんだね?」
「はい、元気です」
ロサもアダムもほっとした笑みを浮かべる。
わたしもふたりに何かあったって聞いたら、絶対心配するけど、こうして本当に心配してくれてたと伝わってくると、なんかほっこりする。
「神獣さまはノックスさまだけではなかったんだね。もしかして、聖獣さまも森の主人さま以外にもお会いしたことがあるのかい?」
アダムは言いながらカップに手を伸ばす。
「聖獣さまは皆さまにお会いしたよ。空の主人さま、海の主人さま、地下の主人さま」
みんなおいしいものが大好きで、誇り高いかたたちだった。
「全く、君が羨ましいよ」
アダムってわりと珍しいとか新しいもの好きだよね。
「それにしても神獣さまの制裁には驚いたな」
「わたしも」
ロサに賛同する。
聖獣であるもふさまとは趣きがだいぶ違う。
やっぱり仕える方の属性寄りっていうか、あるんだろうな。
だってもふさまも怒ったことはあるけれど、あんな攻撃的ではないもの。