軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第752話 冒険者の仲間入り③カモミン

植物系には火か土の魔法が有効だ。大量に相手をできていいと思うんだけど、森の中で火を使うのは消せるまでセットでできないと危険だし、火と土の属性は持ってないことになっている。

水と植物系は相性が悪くて、長引かせることになるし。ナイフで行くしかないか。

端っこのカモミンの中央にナイフを立てる。と思ったらスタコラ逃げ出した。草の部分を足のように使っている。

一体がそうやって動いたら、群生していたカモミンが一斉に右往左往した。

いやー、なんか恐っ。

もふさまが、わたし目掛けてツルを伸ばした一体を、足で押さえた。

途端に、もふもふ軍団がリュックの中に入り、ガーシが緊張した。

な、何?

「ひゃぁ、なんだこれは?」

薄い茶色い髭。くるんとした同じく茶色の髪。帽子をかぶった、父さまよりちょっと若いぐらいの人と、そのお付きの人って感じ。

帽子の人の足に逃げ出したカモミンがツルを巻き付け、お付きの人がそのツルに手を伸ばし、他のカモミンに絡まれている。

商人風だけど、それだけじゃないかも。だって探索では急に現れたもの。

ガーシがふたりに巻きついたツルを切って、わたしには早く倒せと合図してきた。

風で渦を作り、それにカモミンたちを巻き込む。

ぐるぐると回転させ、目を回しただろうタイミングで下に落とす。目があるかはわからないけど逃げていったのだから、何かしらの器官はあるのだろう。

ヘニョっと落ちた、そのこんもりした真ん中にナイフをつきたてていく。

ふらふらっと起きあがり逃げようとした1体を、もふさまが片づけてくれた。

もふさまが退治してくれたのを合わせて、全部で7体だ。討伐依頼は5体だったけど、引き取ってくれるよね、きっと。

ガーシと目があう。

ガーシはパチパチと形だけの拍手をする。

「いち姫、できるんだから、出し惜しみしてないで対処しろ。そうじゃないと反撃くらって思わぬ怪我をするぞ」

「はぁーい」

「間延びした返事だな」

「はい!」

〝抜き取られた草〟状態のカモミンを、収納袋におさめていく。

「 姫君(ひめぎみ) であらせられますか?」

商人風の人に言われて、ガーシは笑う。

「あだ名ですよ。護衛対象の貴族のお嬢さまです。冒険者としてのレベルを上げているところでしてね」

「そうでしたか! 植物の魔物といっても、近くで動くのを見ると迫力がありますなぁ」

「旦那さま」

どことなく嬉しそうにいう帽子の人を、お付きの人が嗜めるように呼んだ。

「ああ。街の近くだからと油断していました。冒険者のご令嬢、討伐してくださってありがとうございました」

「いえ、とんでもない」

愛想よく、微笑む。

「それでは失礼します」

姿が見えなくなってから、ガーシと話す。

「なんだろう、あれ」

「もっと絡まれるかと思ったが」

ガーシは要領を得ないといった表情だ。

急に現れた商人風のふたり。怪しいけど、なんのアクションもなかったのが、また気持ち悪い。目的が見えないので、もふもふ軍団を遊ばせることなく、そのまま領地に戻った。

ギルドでカモミンを出して、討伐した確認をしてもらっていると、アラ兄たちも帰ってきた。

二人とも無事だ。特に危険なこともなかったという。

「あの、リディアさん」

受付嬢に呼ばれる。

「はい?」

「こちらはカモミンではないと思うのですが?」

ええっ? わたしは積み上げた草をひそかに鑑定する。あれ、カモミンだよね?

「あの、ち、違いますか?」

鑑定、壊れちゃったのかな?

「鑑定できる方はいませんか?」

アラ兄が一歩前に出て、受付ガールに尋ねる。彼女は慌てたようにぴょこんと一礼して、ひとつだけ草を持って後ろに下がっていった。

「鑑定したんだろう?」

アラ兄に小さな声で尋ねられた。

わたしはうんと頷く。

「リディアさん、お待たせいたしました」

よくわたしの応対をしてくれる、ベテラン受付嬢のササラさんだ。金髪に青い瞳の美女で、口元の黒子が艶かしい。

「カモミンではなかったですか?」

「いいえ、対応した者の不手際で申し訳ありません。カモミンではあるのですが、幼体だったんです」

「幼体だと、討伐対象ではないとか?」

わたしは尋ねる。

後ろからガーシがやってきた。

「あの場所で植物の魔物の気配がこいつらだけだったから、そうだと思っちまった。いち姫、すまねぇ」

「うーうん、図鑑のカモミンと違うけど、わたしもそれで納得してたから」

他の場所にカモミンの成体がいたのかな? それなのに、わたしは幼体の方を討伐してしまったということかしら?

ササラさんはわたしの質問には答えずに、確められる。

「こちらに卸していただいたのは7体ですが、討伐されたのも7体でお間違いないですか?」

「はい、全部で7体討伐して、全て出してしまったんですけど。5体までしか引き取ってもらえないのでしょうか?」

ササラさんは、にっこりと笑った。

「いいえ、7体全て引き取らせていただきます。

依頼には〝幼体〟という記載がなかったんです。カモミンの幼体を討伐することはほとんどありません。なぜかといいますと、こちらの幼体の状態で乾燥させますと、品質のいい繊維となります。それで乱獲されたことがありまして、各国で決められた数の機関でしか取り扱えないことになっております。それを破りますと、国際法で罰せられます」

えええええっ。

「わ、わたし討伐……」

……しちゃったんだけどっ。

わたしは焦った。

「全てこちらに卸していただいたのなら問題ありません。討伐が悪いのではなく、その幼体から繊維を作ったり、所持したり、売ったりすることが問題となるのです」

ひえぇぇぇぇぇええぇっ。

「依頼を受けた時に確認する事案でございました。リディアさんにしっかりした説明がされなかったのも、こちらの落ち度です。申し訳ございません。

リディアさんが受けてくださった、モロールの西の森のカモミン討伐は確認させていただきました。ありがとうございました。お疲れさまでした」

わたしが受けた依頼は完了となり、冒険者カードに実績が残る。報酬ももらった。でもなんだか、すっきりしない気持ちが残った。