軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第751話 冒険者の仲間入り②天賦

ん、でもなんか変。もしかして。

わたしはもふさまを抱き上げた。耳に小さい声で尋ねる。

「もふさま、わたしたちって誰かにつけられていた?」

探索で近くにガーシ以外、赤い点も他の色の点もはなかったけど。

もふさまは頷く。

『ああ、護衛たちがこのごろ片付けてるな。リディアが気づく前に』

なんですとー?

それも 護(・) 衛(・) た(・) ち(・) って言った。

ひょっとして、シモーネの訓練ってそれ?

「探索、壊れちゃったのかな? 点は近くに見えなかったけど」

『かなり離れた場所で狩ってるからじゃないか?』

え、そうなの?

わたしはガーシを見上げる。

「父さまの指示?」

と尋ねると、思い当たったのだろう、彼はポリポリと頭をかいた。

「まったく勘がいいんだから」

そっぽを向いて、そう呟く。

「ジュレミーからは護衛しか任されてない。俺の考えだ。いち姫は知らない方がいいと思った」

「それはわたしが弱いから?」

ガーシがしゃがんで、わたしと目の高さを合わせる。

「なぁ、姫さん。俺はいち姫が弱いとは思っていない。けど、いち姫は13歳の伯爵令嬢だ。できるだけ、何もない方がいいと思わないか? それが事故で、思いもよらず起こったことなら、仕方ないと思う。けどよー、今いち姫に注目している 輩(やから) はそうじゃない。いち姫を傷つけようとは思っていないけれど、どれだけコマになるか、いち姫が守ろうとするものは何か、探る目的の奴が多い。そんなのといち姫がいちいちやりあわなくていい。いち姫は俺らの大将なんだから」

「わたし、……大将なの?」

「姫っつったら 頭(かしら) じゃねーか」

もふもふ軍団だけでなく、ここでも頭なのか。

「だからな、リディア姫、大将らしく雑魚のことは、下のもんに任しとけ。そのかわり、俺らでも止められないような強いのの相手は、いち姫がすることになるんだ。心しとけ!」

「じゃあ、大将として言わせてもらう。怪我しないで。もし怪我をしたら絶対わたしに言うこと。母さまに治してもらうから」

母さまに一緒にいてもらって、わたしが治す。

わたしを守るために、していることだから。

ガーシはわたしに頷いた。

「御意」

御意って何よ、全く。

「いち姫、肩車してやろうか?」

「いいです。いくつだと思ってるのよ、わたしのこと?」

ガーシとやり合っていると、あっという間に順番が来た。

ガーシがカードを見せて、わたしも今日は冒険者カードを見せた。

犯罪歴がないかを魔具にて検査をし、簡単なやりとりでモロールに入る。

「屋台で買って広場で食べましょうか」

ガーシの提案に頷く。

串焼きはマストだ。サラダとスープ。パンは持っているのから出そうかな。

いっぱい買って、広場で広げる。

周りに誰もいないから、もふもふ軍団も解禁だ。

ガーシは周りに目を配りながらも、もふもふ軍団の様子を楽しそうに見て、自分も食事を取っている。

「ガーシから見て、アラ兄やロビ兄は護衛ができそうなの?」

「腕っぷしに関してはいいところまでいくと思いますが、相手が人となった時にどこまで真剣でやりあえるかは、おふたりの心次第ってとこですかね。まあでも本能がありますから、自分がやられる前に、相手を攻撃すると思いますよ。なんですか? 護衛に行ったふたりが心配ですか?」

「……ガーシたちは、わたし目的で近づいてくる人たちを排除してくれてるのよね? そういう人がいるのなら、兄たちにも寄ってくる人がいてもおかしくないと思って」

「それは護衛自体が、おびき寄せられているとお思いで?」

わたしは上目遣いにガーシを見た。

ガーシは頭をかいた。

「ギルドには、長期の依頼をしてありますから、目を光らせています。だから大丈夫です」

「それって」

「事情を話してあります。ギルドからのお達しで、いち姫の加護のことは元々知っていたようですし、それに付け足しただけです。

その加護を知ろうとして、周りのものを攻撃する輩が出てくるかもしれないとね」

「わたし、いるだけで周りに迷惑をかけて、ガッチガチに守ってもらっているんだね」

そしてそんな無茶ができたのも、わたしが貴族に生まれついた娘だから。

「あんな、いち姫。俺は生きるってことは天賦の役割を 全(まっと) うすることだと思う。俺は身体能力が少しは高いし、その力で何かを守ることができると思っている。だから俺は俺の守れるものを守る。

いち姫に与えられた天賦はもう少し大きなものなんだろう。大きなものを守ることができる。でもそれは誰も代わってやれない。だからな、いち姫も申し訳なく思うんじゃなくて、自分の守るべきものを守れ。

いち姫が倒すべきものは、いち姫しか渡り合えないんだから」

もふさまやもふもふ軍団もガーシを見つめていた。

「わかった。そうする。ありがとう」

「よし、じゃあ、討伐に行くか」

ランチのために広げたものを片づけ、モロールからでる。西の森に入っていく。

「いち姫、あれじゃないか?」

森の中の少し開けたところに、もこもこした山型に盛り上がった草がぽこぽこある。

わたしは鑑定ができるけど、一応ギルド内にある図書室で魔物図鑑を見てきた。

もっとシュッとした感じで花が咲いてる絵だったぞ。このもこもこが育つとそうなるのかな? その絵の感じでは、ツルを伸ばしてくるというのがわかる感じだったけど、今目の前のそれは〝ちまっ〟と丸まっていて、これがツルを伸ばしてくるとは思えなかった。

せいぜい膝下だもの。これが植物じゃなくて魔物だなんて。

「図鑑で見たのと違うわ」

「へ? でもこれ植物じゃなくて魔物だぞ?」

わたしには草にしか見えないけど、ガーシはこれが魔物だってことはわかるのね。依頼のあった西の森で数体の植物の魔物。だからこれがカモミンだとガーシは結論づけたのだろう。

鑑定。

ーーカモミン:植物の魔物。花に擬態し、近づいてきた獣や鳥、人などがくるとツルを伸ばして巻きついて動けなくし、養分にする。球根が急所。幼体の時点で刈入れ、乾燥させると柔らかい繊維となる。

花に擬態してないけど? きっとこれ、幼体なのね。

ま、いいや。

「さて、どうする?」

ガーシがニヤニヤしながらわたしを見た。