軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第690話 はかられごと③軟禁

「メラノ公、ペトリス公。其方たちが王宮に入った時から騎士たちを屋敷の周りに待機させ、この部屋に入った時から、屋敷を捜索するよう指示を出してある」

騎士たちは、そちらにいってたんだね。

「そのほか、ここに入ってきた、連なる者たちの屋敷も捜索中だ」

王命で捜索がされてたんだ……。

「捜索願の出ていたコーデリア嬢が、ペトリス公の屋敷内で見つかりました。そのほか、犯罪の証拠になりそうな書類やら何やら、ね。コーデリア嬢軟禁について調べている間に、余罪がいっぱい出てきそうで嬉しいですよ、ペトリス公」

アダムがにっこりと笑った。空恐ろしい笑顔だ。

メロディー嬢が見つかったんだ……。

平民へと落とされ、国外追放となり行方がわからなくなっていた令嬢は、乗っ取り対象の名前としてあがった時点で、捜索願が出されたようだ。

「わ、私たちはペトリス公爵さまに従っただけだ!」

おー、バレたと思ったとたん、保身に走る人もいる。

喚く人たちをほったらかしにして、陛下はまず、ご家族を部屋から退出させた。

そしてメラノ公たちが話せるように、トルマリンさんの術を解かせた。

「メラノよ、わかったか? お前たちは利用されたのだ。反逆を起こした罪で、最初に口封じされるコマだったのだ」

メラノ公は青い顔で、のろのろと陛下を見上げた。

「そうなのですか、ペトリス公爵さま?」

なんと、メラノ公は直接ペトリス公に尋ねた。

「わ、我らは謀反の疑いがあると情報を得て、ここに来たまで」

あくまでそのスタンスでいくつもりみたいだ。

まあ、それしかないか。

もう何を繕っても、首謀者であるペトリス公が、メラノ公たちを仲間と思っていなかったのは、彼らに伝わったと思う。

何をどう言い募ったって、入ってきて、理由も聞かずに自分たちをバッサリ斬ったところを見たんだもの。その事実に 勝(まさ) る言葉はない。

それはわかっているんだろう。ペトリス公も言い訳はしなかった。

ただ最初からメラノ公と反逆については知らなかったことで、メラノ公がそんなことを企んでいたこととも無関係だと、貫いている。

メラノ公はそのことで反対意見をあげなかったけど、エロワ男爵たちは猛烈に反発した。

でもたとえ唆されたのだとしても、行動してしまったことで、その責任と罪は生まれるのだ。

「あたくしは巻き込まれただけです。きちんと調べていただければわかることですが」

「魔石を持っていたじゃないか」

ロサがアイラを睨みつけている。

「あたくしのものだとは、一言もいっておりませんわ」

「さっき、認めたじゃない」

我慢ならなくて、わたしも声をあげた。

「夢を語ることが罪になるんですか?」

そうくるか!

「呪術師集団の屋敷も、捜索している」

そうアダムが言えば、アイラは怯んだ。

「まぁ、何が出てくるか、あとは待つだけだ」

ロサは皮肉げに笑った。

「トルマリン、しばらくの間、この者が呪術を使えないままにしてくれないか」

アダムがトルマリンさんに頼めば、彼は胸に手をあて、首を垂れた。

「承知しました」

そうして、みんなが捕らえられたまま、恐らく牢屋へと連れていかれた。

見送った後、アダムがポツリと言った。

「僕たちはこれから、しばらく忙しくなる」

「神殿にもいかないとな。カートライト嬢が、何か巻き込まれていなければいいが……」

ロサが思案顔だ。

聖女候補だもの、目をつけられていてもおかしくない。

詳細を聞きたいところだけど、ふたりともすぐに神殿に行きそうな勢いだ。

証拠が揃えば、推測ではなく事実として教えてもらえるだろう。

ふたりに気をつけてといって、わたしは地下基地に戻ることにした。

さすが陛下。捜査自体かなり進んでたんだね。あとは証拠を押さえるぐらいだった。それなら少しはこちらにも明かしといてよと思っちゃうけど、演技なんてできないし、どこでどう伝わってしまうか分からないから、必要最小限の人にしか明かしてなかったのだろう。

それにしてもかなりの出来事が繋がっていた。複数の敵がいるのかと思っていたけれど、もしかしたら一本道、だったのかもしれない。

そうだとしたら、土地買いのこともペトリス公の仕業で、その勢いのまま前バイエルン侯の冤罪も認められたらいいのに。それはさすがに都合良すぎか?

でも、前バイエルン侯とキートン夫人が標的にされたのは、グレナン語がわかるからだった気がする。わたしがそう思うぐらいだから、陛下たちはとっくにそう思っているだろう。けれど、それは標的にされたということだけしか指していない。機密漏洩の証拠をどうにか解き明かせないと、冤罪の証明ができない。

とりあえず、国家反逆と乗っ取りとわたしを呪った方は収集している気がするから、後のことはもう陛下たちに任せて、今度は前バイエルン侯の冤罪を晴らすことに集中しよう。

安心したからか、トイレに行きたくなってしまった。

地下までは結構あるので、お城のおトイレを拝借することにする。

もふさまたちにトイレの前で待っていてもらう。

客室トイレではなく、使用人たちのトイレだけど、王宮だけあって、洗練されていてきれいだ。花の飾ってある手洗い場で手を洗い、そして何気なく窓から外を見て、わたしは息を呑んだ。

アダムとアイラが連れ立って歩いていた。アイラは手枷などなくて自由に歩いている。

な、なんで?

あちらに進めば裏門!

まさか、アダム、アイラに脅されて? 本物の王子殿下じゃないって証拠を握られてた?

わたしたちには、言いがかりのようだったって言ってたけど、実は拗れていたんじゃ?

わたしは急いでトイレから出て、もふさまに言う。

「もふさま、アダムがアイラと一緒にいるの。一緒に来て」

わたしは廊下を駆け出した。

『裏門方向か?』

息が上がって声が出なかったので頷く。もふさまは虎サイズになり、わたしを乗せてくれた。

裏門にあと少しというところで追いつくことができた。

「ゴットさま!」

もふさまから降りて、その背中に呼びかける。

アダムは夕焼けをバックにゆっくり振り向いた。

「……これは、リディア嬢……」

アイラはわたしを睨んでいる。

「どこに行かれるんです? その呪術師と?」

わたしは近づいて、服の裾を引っ張った。

アダムは柔らかく笑う。

「気になる?」

気になるじゃねーだろ!