軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第683話 彼女のはかりごと⑱王女の活躍

王女さまたちが大人しくなったのを見届け、メラノ公は陛下に向き直る。

「王位継承権を渡せとは誰にだ? 其方は継承者ではなかろう?」

メラノ公のシワの中に、一瞬悔しさが滲んだ気がした。

「そして、それはなぜだ?」

「陛下が国を発展させることを怠っているからです。身内かわいさに目が眩み、政治を怠っている」

「政治を疎かにしたことはないが?」

威圧。圧がすごい。

息苦しいぐらいなのに、王女さまたちはもふさまを撫でることに夢中だ。さすが王族!

「いくら我らが、他国の様々な情報をもたらしても、動きもしなかった!」

「それは説明したはずだ。確証がない。益が出ないと言う見通ししか立たない。そんなことに動けるわけがなかろう」

「そう見通しを立てたのは誰ですか? 確証が取れないと調べたのは誰ですか? あなたは次代の王を育てるためだと、能無しの王位継承権を持つ者たちにそれを調べさせた! そして無能なものが調べた結果を信じた!」

「それこそ、心外だ。まだ未熟な者たちの言うことをそのまま信用するとでも? それぞれに補佐と同時に監査もつけておる。

ブレドはこの年にして全てが議員より上回っている。目の付け所も的確だ。バンプーはまだ優先順位がわかっておらぬが、なかなかに正義感があり、不正などは許さない。ゴットは広い目で物事を把握し、瞬時に解決していく考えを持てる。

余ではない、監査からの報告だ。余の息子たちは真摯に向き合い、いくつかの事実を持ち帰ってきた。それは其方が信頼して任せた者たちの不正だ」

「はっ、騙されませんぞ。私から私を慕う者たちを根こそぎ奪っていった」

「其方はそう捉えたのだな。余があれほど不正の証拠まで見せて、伝えたのに」

メラノ公は少しだけ動揺しているようだ。

あちらが話に夢中なうちに……。

「アガサ王女さま、お願いがございます」

「申してみよ」

わたしに合わせた小さな声で、アガサ王女が許しをくださった。

「陛下や夫人たち、それからお兄さまたちに腕輪がされています」

アガサ王女は頷いた。

「あれは魔力封じの魔具です」

アガサ王女は再び頷いた。

わたしたちが話し始めたので、フローリアさまがこちらを見上げた。

慌ててもふさまのヘソてんしてくれているお腹を撫でて見せると、キャイキャイ喜んでもふさまのお腹を撫でた。

周りに目をやる。

よかった、誰もこちらに注意を向けていない。

アガサ王女に視線を戻す。

「わたしはその魔具を壊すことのできる魔具を持っています」

アガサさまは口を開けた。

「腕輪にその魔具をコツンとあてれば、魔具を壊すことができます。王女さまたちはこの中で唯一自由に動ける方です。もふさまとフローリアさまと一緒に、あの人たちにわからないように、この魔具で皆さまの腕輪の魔具を壊してきていただきたいのです」

7歳の子だ。身内が捕らえられていて、敵がいっぱいいる。そんな中で腕輪の機能を壊してきて欲しいなんて、怖いだろうから酷なことだとわかっている。でも怪しまれずに自由に動けるのは王女さまたちしかいないのだ。

アガサ王女は決意した顔で頷いた。

わたしは収納ポケットからクラッシャーくんを呼び出して、それをアガサ王女の手に滑り込ませた。

その手をギュッと握りしめている。

「もふさまについていき、皆さまの腕輪に触れてください」

王女が頷く。

「もふさま、お願い!」

もふさまはヘソてんをやめてお座りした。そして椅子の方を見て、まずアダムのところに駆けつける。

それを追いかけるフローリア王女をアガサ王女が追いかける。

もふさまはふたりが追いついてからアダムの膝にジャンプした。

そのもふさまを抱っこしようとするフリでアガサ王女がアダムの腕輪に魔具をあてた。

アダムと目が合った。

「おい!」

「捕まえに行ってもいいですか?」

貴族に、もふさまの素行を窘められたので、ならわたしが動いていいかと尋ねる。

「放っておけ、犬と子供だ、何もできまい」

メラノ公が声を荒げた。

もふさまはロサの膝に乗る。ふたりは追いかける。

「騙されない。あなたは私を懐柔しようとしているだけだ」

「ブレド、フォルガードについて調べた件の報告をしろ」

ロサは膝に乗ったもふさまを器用に隣の第4王子の膝へと移した。

そして報告する。

「はい。兵がガゴチの近くに集まっているとのことでしたが、あれは対ガゴチも含め、兵の演習場をガゴチの近くに作ったからでした。訓練のみを目的とし、そのほか目立つ動きはありません。何より、情報に強いガゴチが、近くに陣をもたれ、そのままにしておくはずがありません。

件の複数の商会ですが、それも収益などが改竄されていました。フォルガードの王族に確かめてもらったので、確かです。不正はありませんでした。スタン・タラコバ伯、ビル・マンリー男爵、調べたふたりが捏造したものでした」

「ゴット、お前には貴族の動きについて調べさせたな、その報告を」

「メラノ公、あなたの部下たちはあなたの部下でありながら、他の者の配下でもありました。ブレドから報告の合ったスタン・タラコバ伯、ビル・マンリー男爵もそうですが、クイン・トップリン伯、ジャン・ガドン伯もそうです。彼らは主にフォルガードに何かがあるよう、あなたに報告するよう送り込まれた者たちでした」

もふさまは王女たちから逃げるていで、王族の皆さまに触れるよう動き、王女たちがそれを追いかけた。そして最後、陛下の足元にちょこんとお座りする。

フローリア王女はお父さまが恋しくなったらしく、もふさまに構わず、膝の上によじ登った。

陛下は手枷のはめられた手で、フローリア王女が落ちないよう補佐しながら、アガサ王女にも笑顔を向ける。

アガサ王女は自分もと手を差し伸べるフリで、陛下の腕輪に魔具をあてた。

陛下は表情を変えなかったけど、その後チラリとわたしを見た。

「おい、アガサ王女さまが何か持ってるぞ」

貴族のひとりが言った。荒々しく王女さまの手を持ち上げたけど、その手には何もなかった。恐らく陛下が魔法でどうにかしたのだと思う。

「自国の王女に軽々しく触れるとは嘆かわしい」

陛下が吐き捨てるように言った。その貴族は顔を赤くしている。

もふさまはわたしの元へと帰ってきた。

王女殿下たちは陛下の膝の上が気に入ったみたいだ。そのまま座っている。

「何を言っている。私を動揺させようと、御託を並べおって!」

「メラノ公爵、あなたはいいコマだったんです」

アダムは冷たく言った。