軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第613話 秘密の謁見⑤骨組み

「第2がその点です。

わたしに敵意が向けられるなら構いませんが、家族や一族に暗殺者や盗賊などを送られたくありません」

それがあるから、今まで生きていると言えなかったのだ。

その点をどうにかできるのが、唯一、権力者の懐に入ること。だから、陛下へ釈明しに来ることを選んだ。

「そしてまた呪術をかけられるのも困ります。ですから、呪術は効かないことをわからせます。呪術師自体が敵なのか、敵が呪術師を雇っているのかわかりませんが、確実に呪術師はそこで釣れます」

もし、敵と呪術師が別の人なら、そこで仲違いをさせられるかもしれない。呪術師は失敗していないと訴え、敵は失敗してるじゃないかって思うだろうからね。

でも敵自体が呪術師だった場合は複雑になる。なぜ敵なのか、理由を見つけるのに手間取るだろう。

呪術師は身を潜めて生きている。大っぴらに職業を語れないからね。そんな人たちとわたしの接点はないはずなのだ。わたしは接点を持とうと探しているが、空振りに終わっている。

接触といえなくもない……7年前の母さまを呪ったけど失敗した復讐だとしたら、母さまに怒りがいくならわかるけど、わたしにってところがわからない。どうにかして母さまが免れたわけだけど、わたしは光魔法を使えないことになってるし、わたしが解呪にかかわってるとは夢にも思わないだろう。わたしあの時5歳だし。

だから、呪術師は雇われているんじゃないかと推測している。ガインから聞いた呪術師の集団ってのがいて、その人たちが頼まれたのではないかと。

捕まえるまで、そのことは結局わからないから、考えるのは無駄なのかもしれない。

「生きている、王宮に留まる、その理由を作るのは難しくありませんが、呪術が効かないのを伝えるのは難しいですね。リディア嬢が生きていると知れた場合、呪った方が生き残っているなら、生きているリディア嬢が偽物と思うでしょう。それか、一般的には光の使い手である母上が解呪したと思うのでは? そうしたらまず母上を、呪術で狙うかもしれませんね」

アダムが淡々と言って、わたしの胃はキュッと縮まる。

「光魔法で助かったとしなければ、母さまが攻撃はされないと思うんです」

父さまが辛そうにわたしを見た。

「どのように、呪術が効かないとわからせるんだい?」

魔法士長さまに尋ねられる。

「それは、わたしは生きているけれど、何かの作用で 変化(へんげ) したとするんです」

「「「「「「「トカゲに?」」」」」」」

父さま以外が仲良く声を揃えた。陛下まで……。

わたしはちょっと視線を逸らした。

「トカゲはちょっとアレなので、えっと、猫にしたいと思います」

「「「「「「「猫?」」」」」」」

「ウチに今、ぴったりの子がいるんです。お遣いさまに懐いているし……猫らしく自由気ままな子が。……鑑定していただいたら、〝リディア・シュタイン〟と出る何か策を練ります」

「なるほど、その猫をみんながリディア嬢として扱うわけだね?」

「はい、人型に戻れるかもわからない。でも〝わたし〟なんです。人型に戻ったら、嘘を覆せる、リディア・シュタイン。わたしたち側はなんで急にそんなことになったのか、スキルが開花したのかもわからない状態ですが、呪術をかけた方は、 死(し) するはずの呪術がわたしには 変化(へんげ) となって顕われたと思うでしょう」

ミスしたわけでなく、わたしのスキルだかなんだかによって回避したのだと思ったら、また呪術を仕掛けようとは思わないだろう。わたしと呪術の相性が悪いと考えるはずだから。

「……でも変化のスキルがあると知らしめるのは、貴族令嬢として、これからが厳しいのではないか?」

この世界には 獣人(じゅうじん) がいる。ユオブリアには少ないし、ツワイシプ大陸にはそういないそうだ。人型になれるのが獣人という定義だから、シュシュ族もその括りかもしれない。完全な人型、尻尾や耳は残した人型、二足歩行で話しもするが見かけは獣そのままと個人によって様々らしい。一部では毛嫌いされたり、見下されたりすることもあるという。

それとは別に人が化身のスキルを持つことがある。その能力は〝 獣(けもの) 憑(つ) き〟と呼ばれ、軽視し醜悪めいたものと捉える風潮がある。

だから獣への変化は気味悪がられるだろうし、貴族の〝獣憑き〟には、もう婚約者なんか現れないだろう。

でも、その方が静かになっていいものね。

「猫への変化の設定を使っていいのなら、無理のない筋書きができそうだね」

アダムがにこりと笑った。

「リディア嬢、本当にいいのか?」

ロサに確められる。

「はい。いいです」

ロサは腑に落ちない顔で、わたしを見る。

せめて猫ならね。本当は毛のないトカゲだから、設定でだけど、せめて、もふもふにさせて欲しい。

「ある日、突然、リディア嬢は猫になってしまった。誰かがそれを見ている。話すこともできず、療養しているとした。そのうち、死亡説が流れたが、令嬢は猫のまま、姿を現すことができなかった。そのうち酷い噂が流れる。……それで仕方なく……流れはそれでいいですね。

後の細かいことは令嬢とブレドと決めていきます。それでよろしいでしょうか?」

「そうだな、いつ始める?」

「……陛下、令嬢を隠すのは私が2年後に暮らすあそこはいかがでしょうか? 令嬢を 今(・) ま(・) で(・) 匿っていたところも」

みんながピクッと反応する。

陛下は頬の上で、人差し指をトントンと叩いている。

少し考えているような仕草をした。

「良かろう。そうしなさい。シュタイン嬢は、敵を捕らえるまでそこで暮らすと良い。あそこはゴットの許した者しか入れないから、絶対に安全だ」

え、今から決行?

ソックスも連れてこないといけないし……。トカゲに自分の意思でなれるかも実験しないとだし。あ、でもそっか、人型に戻れるかは、こっちにいる方が都合がいいのか……。

「わかりました。ご配慮、ありがとうございます」

わたしは立ち上がってから、皆さまにカーテシーをした。

「リディア嬢、本当にいいのか?」

ロサにもう一度確かめられ、わたしは頷く。

父さまが泣きそうな顔をしている。

「父さま、ソックスのこと、お願いね」

あの子、まだ家族にお披露目していないのだ。ミラーハウスに謹慎中だったから。

「それから、みんな、特に母さまのことをお願いね。絶対に町外れの家から出さないで。母さまを守ってね」

あそこならハウスさんの守りがある。

「……わかった」

泣きそうな父さまに、わたしは笑って見せた。

場所を提供してもらえたらラッキーと思っていた。

それがブレーンに相応しい、アダムとロサまでついた。

敵を炙り出すには、何を目的としているのか絞り込むのに、相手の反応をみながら計画を柔軟に調整していく必要がある。

きめ細やかな微調整が。わたしはそれが苦手だけど、賢くて瞬発力のある彼らなら、遺憾無く能力を発揮してくれるだろう。