軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第348話 護衛

タボさんに起こしてもらい、早起きダリアと一緒にみんなを起こして回った。いつもより夜更かししたのでまだ眠いけど、今日は終業式。あ、成績表も配られる。

それを乗り切れば晴れて夏休みだ!

わたしたちは、休み明けに元気に会おうねとみんなで約束をした。トランポリンの練習も忘れないでというと、あれは楽しいから絶対に忘れないと心強いことを言ってくれた。

みんなで学園に向かう。

「いいもの見た」

「すっごい素敵だったね」

「けどさー、ふたりとも婚約者がいないっけ?」

「先輩、騎士見習いの制服着てたよ。護衛の仕事なんじゃない?」

「いいなー。私も護衛してほしい」

耳が生徒たちの会話を拾う。

予感するところがあったのか、唾を飲み込んで喉が鳴る。

『リディア、どうした?』

わたしの半歩前を歩いていた、もふさまを抱きあげる。

「シュタイン嬢」

メロディー嬢がわたしに気づき、急ぎ足でやってきた。

とても可憐で妖精のようなお嬢さまは、後ろに騎士見習いの制服を着こなした兄さまを従えていた。

「シュタイン嬢、事後報告になり申し訳ありませんが、しばらく例の件の見通しが立つまで、学園内でランディラカさまに護衛についていただくことになりました」

「リディー、家についてから話す」

兄さまはそれだけ言って、左右に目を走らせる。

ドクンと心臓の音が大きくなる。

大丈夫、大丈夫、大丈夫。

大丈夫だから。

なんとか頷いて、ふたりを見送る。

「リディア、具合悪い? 顔色悪いよ」

「うん、青い。保健室行く?」

わたしは左右に首を振る。

精神の均衡を崩すと魔力が暴走する、わたしはそれを一番に恐れた。

呼吸が普通に戻ってほっとすると前にロサがいた。

「具合が悪そうだが、大丈夫か?」

周りの子たちが一斉にカーテシーをする。レニータたちは勢いに任せて頭を下げた。

「寝不足が響いてるみたい。どうしたの?」

みんなには先に教室に行ってもらい、わたしはロサとブライとダニエルと立ち話をした。

「コーデリア嬢の例の件を兄上に話して、王室に相談をし、コーデリア嬢を保護することになってね。ただ学園内で護衛をつけるわけにはいかないから、やはり腕の立つ生徒についてもらうことになった。本来なら兄上自らってところだけど、学園を休みがちだから。コーデリア嬢にも護衛にも魔具を持たせそれを使えばすぐに魔法警備隊が取り締まることになっている。ひとりだと反応が遅れることもあるし、その魔具を発動させるためについてもらう、そのための護衛だ。

学園からジェイ、ブライ、フランツに日替わりで警護についてもらうことになった。王室からの頼みごとだからフランツは断ることができなかった。すまない」

………………………………。

「ロサが謝ることじゃないよ」

「……でも、すまない」

この案件が片付くまで、兄さまは日替わりで護衛につくんだ。

わたしは経緯を教えてもらった感謝を伝え、夏休みの間元気でと挨拶をし、教室に赴く。

みんなと話したり笑ったりしながら、先生の話を聞き、終業式にのぞみ、そして成績表を受け取る。

先生に頑張ったなと頭を撫でられた時、先生の目が大きくなった。泣きそうになっていたのを見られたのかもしれない。

悲喜交々の表情を浮かべて成績表をみんなが見ている時も、わたしはなにもしなかった。挨拶が終わり、みんなと再会を約束して、教室を飛び出す。

アラ兄の迎えに、わたしは先に帰ることを告げた。

「先に帰るって、何? 馬車で家に帰ろう?」

掴まれた手を外しにかかる。

首を横に振る。

「ど、どうしたの、リー? 一緒に家に帰ろう?」

「心配しないで、先に帰ってる。もふさま!」

大きくなったもふさまに乗り込んで、走ってもらう。

「もふさま、家に帰る。ミニーとカトレアに会いたい。今すぐ!」

もふさまが本気でかければ王都の家にすぐに着いた。

「お……お嬢さま?」

「わたし先に帰る! フリンキー」

フリンキーはわたしともふさまともふもふ軍団を、サブサブサブルームに招いてくれた。

「メインルームに」

『オッケー』

目の前にプリズム仕様のハウスさん。

『マスター・リディア、どうされました?』

「あとで! わたしを町の近くまで運んで」

『YES、マスター』

よく知っている道。あたりには誰もいない。わたしは駆け出す。

町に入って、ミニーのいる雑貨屋を目指した。

青いワンピースに白いエプロンをつけて雑貨の整理をしているミニーがいた。

「ミニー!」

「リディア……お嬢さま? え?」

わたしはミニーに抱きついた。後から後から涙が流れる。

ミニーは驚きながらも、大丈夫だというように優しく背中を叩いてくれる。

胸につかえている思いが溢れ出して、涙となって止まらない。

『リディア、どうしたのだ? どこか痛いのか? 大丈夫か?』

もふさま以外に、リュックの中からも心配する声が聞こえていたけれど、わたしは自分のことで精一杯だった。胸が痛くて、辛くて、どうしていいかわからない。

やっと涙の速度が緩み、ミニーから離れる。

「落ち着いた?」

わたしは頷く。

「ごめん」

「謝らなくていいよ」

「わからないけど、ミニーとカトレアに会いたくて。どうしても会いたくなって来ちゃった」

ミニーは、わたしの手をひく。

「なに?」

「カトレアにも会いに来たんでしょう? カトレアのところに行こう」

ミニーがミニーのお父さんたちに声をかけた。ミニーのお母さんは途中で飲みなさいと水筒を渡してくれた。わたしは口を開いたらまた泣いてしまいそうなので、頭を下げるだけの挨拶をした。

ミニーに引っ張られるままにズンズン町を歩く。

もふさまが大きくなってわたしたちの前に。乗れと言ってくれている。

わたしはミニーと一緒に、もふさまに乗り込む。

もふさまは軽やかに走り、あっという間にカトレアの経営する宿屋に着いた。

まだ宿屋は閉めているようだ。ミニーがカトレアを呼んでくると言って、宿の中に入っていった。

「もふさまも、みんなもありがと」

『もう、大丈夫か?』

尋ねられて、わたしは頷いた。