軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第230話 自慢の

サブサブサブルームに集合する。父さま、母さま、兄さま、アルノルトと、もふさまを抜いたもふもふ軍団だ。

父さまにぎゅーっと抱きしめられる。昨日の夜も会って、試験を頑張るように激励してもらったばかりなのに。母さまにもぎゅーっとしてもらう。

学園から伝達魔法が届いたと、父さまは持っていた封筒をひらひらさせた。まずは何があったのか、わたしが話すことにした。

もふさまが入ってきた。わたしの足元に座る。

わたしは学園で閉じ込められたこと。それから面接での話をし、たった今お帰りあそばしたユーハン嬢の話をする。

母さまに抱きしめられる。

「なんてこと、怖かったでしょう?」

もうこのことでは泣かないと決めたのに、また涙腺が緩みそうになる。

『なんで閉じ込めるの?』

『閉じ込めるといいことあるの?』

『閉じ込めて試験とやらを受けさせないことに意味があったのでしょう』

『変なの』

『変だね』

アリとクイがいうように、本当に変だ。

母さまに微笑んで、大丈夫と頷いてみせる。母さまがわたしの髪を撫でた。

『リディア、浄化疲れたの?』

「けっこう魔力使ったけど、どうして? 怪我したの?」

クイが怪我をしたようには見えないが……。

『念が出てきちゃってるよ』

アリがわたしに寄ってきて匂いを嗅いだ。

『主人さま、リディアから念が出てるよ』

そして、もふさまに報告する。

「浄化ってどういうこと、リディー?」

母さまに言われ気付く。ああ、その話はしてなかった。

帰ってきた時に〝念〟がついていたようなのだと言えば、母さまの顔が曇る。

『我にはわからぬが』

『クイもアリもよくわかりましたね。これはわたくしでも見逃すぐらいの微かなものです。先ほどきれいに消えたのにまた出てくるなんて……』

念は状態異常のカテゴリではないみたいだ。ステータスを見てそう告げると、普通の人族には害にならないからなと言われた。もふさまたちからよく言われるんだけど、人は瘴気を身に宿しているのが普通なので、わたしみたいにほぼないのは稀らしい。

完全に浄化できなかったってことかなと思っていると、母さまが浄化してくれた。クイも消えたと安心したようだ。

父さまが呟いた。

「極力露出を控えさせたのに、領地から出たとたんこんなことが起こるなんて」

「お茶会だって、仲のいい方しか参加しないものに限定していたのに」

母さまがおでこを押さえている。

「ごめんなさい」

「「リディーは悪くない(わ)」」

父さまと母さまの声が重なる。

「確かなことはわからないが、不穏な感じがするな。それでも学園に行きたいのは変わらないか?」

視線が落ちる。

「行きたい……でも、ごめんなさい。わたし落ちた。試験に遅刻したんだもの」

父さまが咳払いをした。

「学園から手紙が来た。留学生の聖女候補から、リディーの試験を棄権させるために閉じ込めたと、報告があったそうだ。リディアは悪くないから学園に来たいようなら考慮してくれと言われたそうだ」

はぁ!? 考慮してもらえたら嬉しいことのはずなのに、なぜかムッとしてしまう。

「聖女候補はリディアが学園に来ると不幸になるから止めたかったらしい。神さまから神託を受けたように感じてやったこと。けれどそれが上手くいかなかったから、それも神の思し召しなんだろうと思っているようだ。だからリディアが学園に通いたいというなら、考慮して欲しいと」

なんか、イラッとする。

「それを受け、学園のくだした決断は〝試験に遅刻しなかった〟ということにするそうだ」

「どういうこと?」

兄さまが怒りの声を上げる。わからないというより、言葉の意味がわかり、怒りたくないから違う意味の可能性を聞かせて欲しい感じだ。

遅刻というマイナス評価だけは取り消されるということなのだろう。

「15分の試験の結果が、全力で試験を受けた結果と言われるのね?」

確かめると、父さまは頷いた。

23問だよ。結果は同じじゃん!

「さらにだな」

まだ何か?

「当然だが、リディアの答えは全て合っていたそうだ」

父さまに頭を撫でられた。

「けれど、それが逆に、遅刻をしたから正解だったのではという疑いが出てくるらしい」

『なんだ、それは!』

『それはリディアが不正をしたって言われているの?』

「リディアはそんなことしなくても頭いいでち」

『リーを悪くいうの?』

『リーに悪さするの?』

『濡れ衣というやつですね』

もふもふ軍団が怒りの声を上げてくれたので、少し冷静になる。

「学園は不正ができないように魔力が施されていますよね?」

兄さまが低い声を出す。バキッと音がすると謝った。

「あ、ごめん、フリンキー。ちょっと力が入っちゃって」

いやいやいや、ちょっと力が入ったくらいでテーブルはひび割れないから!

『すぐ直すよ』

動じていないフリンキーの声がして、白い冷気みたいのが上がり、テーブルは元通りになった。

「フランの言うことももっともだけどな。何にせよ、疑う奴はいるものだ。リディー、試験結果は変わらない。ただ不正はしていないと証明するために、筆記試験を受ける気があるかという手紙がきたんだ。応じるか?」

「試験結果は変わらないのね?」

「そうだ。その再試験で証明できるのは、リディアの常識問題への実力だな」

『学園はひどいところだな。リディア、そんなところに行くことない。一緒に毎日遊ぼう!』

『リー、遊ぼう!』

『リー、一緒に遊ぼう!』

「ダメでちよ。それはリディアが決めることでち」

アオに諌められてレオとアリとクイがしょぼんとする。

もふもふ軍団にお礼をいう。

「ありがと。でも、わたし試験、受けてみる」

『リディア……』

「……父さまから学園のことを聞いてからずっと憧れていたの。だから。チャンスとなるなら諦めたくない。腹は立ってるけど」

最後に本音を入れれば、みんなが笑った。

「父さまはどう思う?」

「父さまは、リディーはいつだって、高得点を取れると思う。学園に通う通わないはリディーの思うようにしていいと思うが、頭の良いところを見せてやれとは思う」

「もう一度、試験を受ける」

繰り返せば、父さまに頭を撫でられた。

「手紙はラルフ・ヒンデルマンという先生からだった。率直に書かれていた。まずリディーに危害を加える発言をしていた者を探すのも難しいだろうとのことだ。文面から匂わせていたのは、聖女候補のお嬢さんがたとえ善意でやったとしてもリディーが望んでいなかったらそれは悪意だと認めていた、個人の考えで。ただ、聖女候補で神殿からの守りが厚い上、留学生として来ていることから、学園から彼女に何かをするのも、リディーに手心を加える、どちらも難しいとのことだ。再試験もきっとそう言い出す輩を牽制するのに、その先生が言い出したことらしい。確かに思った通りにことが運ばないと、それは誰かが悪いことをしているからだと思う奴が一定数いるものなんだ。今回の試験に落ちた者は、リディーに不正疑惑を唱えるだろう。だから試験自体、もう一度し直すべきだとな。だから先生は再度試験をして、そんな馬鹿げた考えを起こさせないよう、リディーに払拭して欲しいと思っているようだ」

「再試験の結果はリディーの入園試験の結果とはならないんだよね? それならリディーにとっていいことはないのに、学園で騒動を起こさせないために協力しろって言ってるの?」

「そうも思えるかもしれないが、父さまは先生の最後の言葉で考えを変えたんだ」

『何と書いてあったのだ?』

もふさまが尋ねる。

「大人顔負けの会話にも驚きましたが、学園に通いたい素直な気持ちは応援したく思います、と」

「その先生はリディーのいいところを、わかってくれたのね?」

母さまがわたしに微笑んだ。

「わたしの、いいところ?」

「リディーはいろんな仮面もかぶれるけど、とても優しい娘だ。人を思いやることができて、人の意見を聞けて、そして心根が真っ直ぐだ。私の自慢の娘だよ」

「母さまの自慢の娘だわ」

「私の大好きな婚約者だ」

「おいらも大好きでちよ」

『私だって!』

『リー、大好き!』

『リー、大、大好き!』

『好きでないならここにいません』

「コホン。もちろん、自慢のお嬢さまです」

『我の自慢の友達だ』

これで、元気になれない方がおかしいね。

「わたしも、みんなが自慢で、大好き!」

「よし、では先生に再試験を受ける手紙を送るぞ」

わたしは頷く。

父さまは独りごちる。

「何はともあれ、リディーにそんなことがあった時に双子がいなくてよかった」

父さま以外と目を合わせる。

確かに……。あのふたりは誰にも止められないものね。……シヴァとわたしのいうことは比較的聞いてくれるけれど、火がつき暴走してしまったら収拾できる気がしない。