軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1204話 スパルタからの

『リディア、速度が落ちてるぞ』

『足をあげないから、距離をかせげないのではないか?』

わたしは放課後、部活を少し早めに切り上げて、ロビ兄に言われた通り、グラウンドを走っていた。部活動を終えた生徒たちは足早に帰っていったから、グラウンドにはわたしたちしかいない。

『でも本当になんでリディアは体力がつかないのだろうな?』

『足遅いけど、それがリーだよ』

『大きくならないのも、なんで?』

『クイ、それはリディアも気にしているようですから、口にしてはいけませんよ?』

『そっか。リー早く大きくなれば大丈夫だよ』

クイ、全然わかってないよ。

「リディアは今話せないぐらいゼーゼーしてるでち」

アオ、状況説明ありがとう。

でもそうなんだよね。この頃体力落ちた気がする。

育ち盛りのはずなんだけど。体力も伸びるところだろうに、どうして落ちていくかなー。老いなの? 14で老いなの??

ブラックちゃんに髪の一部を引っ張られる。

ブラックちゃん、わたしね、今しんどいの。

話すのは辛いのよ。

稲妻ちゃんも髪を引っ張ってくる。いつも控えめな銀龍ちゃんまで。

それぞれの独特の鳴き声で騒ぎ出したドラゴンちゃんたちにみんなも不思議そうに見た。

『なんだ? どうかしたのか?』

「あっちを気にしてるでち」

アオがちっちゃなヒレのような手で指し示す先に。

え?

嘘。

ええっ。

『お、リディア、まだ走れるんじゃないか』

「ち、違う。わ、わたり廊下、手すり、誰か立ってる」

そう、校舎をつなぐ外にある渡り廊下の手すりに誰か立ってるシルエットが!

聖樹さま!

思わず祈った。と、頭に響く声。

『うむ、善処はしてみるが、あれは生徒ではない』

え、聖樹さまの守りから外れる人!?

トランポリンを下に出しておく?

でも落ちる範囲がわからないよ。

で、でも下でトランポリンを出した。

落ちてきたら風で受け止める?

「あ、レオ、わたしが上に行く前に落ちたら受け止めてくれる?」

『わかった!』

レオとクイが下に残ってくれることになった。

「もふさま、先生連れてきて」

『リディアから離れるわけには……』

「学園の中だから平気。聖樹さまの守りもあるし」

『……わかった』

一瞬ためらったけど、もふさまはわたしに背を向けて勢いよく走り出した。

あ。リュックには他のみんなも入っている。

わたしはそのまま校舎に。足がもつれる。

ドラゴンちゃんたちが応援してくれる。

足よ、動いて!

か、階段、無理〜。

気ばっかり焦るのに、足がうまくいうことを聞いてくれない。

っていうか、こういう時になんで人に全く会わないの?

ゼーゼーハーハー、階段を歯を食いしばってのぼる。

やっと3階。うーー、足がもつれる。

なんとか渡り廊下へ続く扉に辿り着き、ドアを開ける。

中央ぐらいの手すりにやっぱり人が立っている。

長いスカートが風ではためく。

その人は空以外に何かあるように、真っ直ぐ前を見ていた。

驚かせてバランスを崩させても駄目。

風魔法で……いや、先に使って感知されて魔法衛兵が来てわたしが取り押さえられ、その間に飛び降りられたら?

問答無用で魔法で引きずり下ろしておいても、魔法兵に状況を説明するまでの間にあの人が再び飛び降りちゃったら……。

そろそろと近づいて、見知った人だったことを知る。

横顔だけど、あれだよね、1年B組のクラス担任の女性の先生だ。

この間のレクリエーションで行ったクラスの。えっと、えっと、レオン先生。レオン男爵家の四女。名前は……思い出せない。

あの件の後、少しだけ先生のことを調べた。

レオン男爵家自体は王太子を支持するも、支持しないもない、沈黙派だった。

男爵家の四女は教師となることを目標に邁進して、今年度から学園の教師になった。夢と希望に胸を膨らませ。新人教師には指南役がつく。それがどうも元1のBの担任、ゲラント・オマリー、ルン髭だったようだ。だからルン髭がいなくなって、レオン先生が担任に収まったんだろう。ルン髭はバリバリの王太子の思考反対派。それ以上のことはわからなかったけど、それだけで想像できることはある。

だけど先生は解雇にならず、生徒たちに謝って何事もなかったかのようになったと思った。一年生の教室に行っても平和そうに見えていたから安心していたんだけど。

「レオン先生、ですよね?」

先生は一拍おいてからゆっくりとこちらを見た。

どこも見えてないガラス玉みたいな目って気がした。

「そんなところに立っていると、危ないですよ?」

「4年D組、リディア・シュタイン」

機械的な話し方に感じた。

「……覚えてくださっていたんですね」

教師、すごいな。他の学年の生徒まで覚えているのか?

あの日のあのイベントのためだったとしても、すごい。

「グラウンドを見ていたの」

「そうですか。でも、もうクラブ活動は終わりましたし、暗くなってきましたし。

手すりの上も危ないと思います」

「意外に大丈夫です。遠くまで見えますよ」

と先生はわたしに手を伸ばした。

え。ええっ。

わたしも手すりに登れってこと?

こ、怖いんだけど。

でも一緒の方が落ちる時、魔法でなんとかできるか。

腹を決める。

そしてわたしは手を差し出した。