軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1167話 課外活動参加への許可(後編)

場は和み、いい感じになった。

わたしが着替えてここに来るまでに間に、謝罪は受け入れていたようだ。

先生は理事長として、クラブの副顧問といえど一介の教師が家にまで押しかけたことを詫び、父さまはそれに対し先生の顔を立てて許した。

わたしは父さまからもめている場に顔を出さないようにすることを約束させられ、先生が理事長だと知ったことを秘密にする約束もした。

父さまは先生を食事に誘う。

娘から話があると呼ばれていて、元々息子の転移でこちらに来る予定だった。

執事からの手紙があり、予定より早く転移でこちらに来たのだと切り出した。

先生は食事の誘いを受けた。

シュタイン家の料理やお菓子の評判は聞いているから、味わえる機会となり嬉しいとも言った。

おおう。父さまから許可をもらうのに、いろいろ手段を考えていたのに、先生の前では恥ずかしすぎることばかりだ。くー、計画はおじゃんになった。

でも、先生が楽しみにしてくださるみたいだから、ここは腕を振るわないとね。

ヘリとキュア、そしてアルノルトに手伝ってもらいながらテーブルを整えた。そして父さまと先生に部屋を移ってきてもらう。

遅まきながらアルノルトにソルベを味見してもらうと、これくらいの甘さがお酒には合うと太鼓判をもらったので、完成だ。

チーズとピクルス。ナッツにレーズンバター。そしてミルクスープ少量を最初に出す。お酒を飲む前にお腹にミルクの膜を作るのだ。

ミルクスープを飲むと、ふたりの頬に赤みがさす。体があったまったようだ。

先生もお酒は好きだそう。父さまが「では火の酒を」というと、先生が本当に嬉しそうな顔になった。砦の火の酒は王都では手に入らない幻の酒らしい。

空きっ腹に火の酒は強すぎだろうと、ソルベを出す。

シャリシャリのシャーベット。こちらと普通のお酒入りのカップ、そしてスプーンを一緒に。好きなだけお酒を入れて食べてくださいと促す。

まずソルベを口に含み、何度かうなずく先生。

「この味は初めてだ」

父さまが呟いた。

「それは第五大陸でお土産にいただいた〝ピチ〟という果物で作りました」

「へー、これに酒を注ぐのか」

ふたりはソルベにお酒を注ぎ込む。

口に含めば、パッとふたりの目が大きくなる。

「これはまた、面白い」

「酒にほのかな甘みがつくのもいいし、シャリシャリした氷にキリッとした酒を際だてさせている。酒の量の違いで、好きなようにいただけるのですね」

ヘリとキュアが次々とおつまみを運んできた。

ブルスケッタは3種。トマトンのさっぱりしたもの、生ハムとチーズで作ったパテをのせたもの。それからスモークベアジャケにクリームチーズをのせたものだ。どれもコショウがいいアクセントになるはず。

アツアツのアヒージョはアルノルトが運んできてくれた。

先生はトマトンの、父さまはスモークサーモンのブルスケッタに手を伸ばした。

ふたりともおいしいと感想を言ってくれながら3種類を制覇し、熱々のアヒージョに舌鼓を打った。アヒージョのお魚と野菜の旨みが残された油にパンを浸すのもおいしいですと告げれば、ふたりともためらいなくその食べ方を試してくれる。そして何度もおいしいと呟いた。

口が熱くなったら、ソルベのお酒で冷やし。冷やしては熱い食べ物をとる。

大満足してくれたようで、作り手としても嬉しい限り。

空いたお皿は下げ、あとは火の酒を二人で楽しむだろうと、部屋を後にする。

キッチンの簡易テーブルにビト、ヘリ、キュア、アルノルトを呼び、同じ料理を食べてもらう。お酒は出せないけどね。

「こんなうまいものを食べられるなんて!」

とビトは感動している。キュアは最初、味見や何かで貴族と同じ物を食べることにすっごく驚いたみたいだけど、今は感想まで言ってくれるようになった。

やがて先生がお帰りになるのを見送り、わたしは父さまから執務室へと呼ばれた。

机の向こうに座った父さまは、どれもとてもおいしかったと言ってくれた。

ソルベは父さまのために喜ばそうと作ってくれたのだな?と少しだけ首を傾げた。

「こんなにおいしいものを作って、私を懐柔する気なのだろう?」

と問われる。お見通しだ。

「父さま、4年生の魔法戦の授業は課外活動となるの。わたしは参加したい。だから、許可をください」

一気に言った。

「学園から出るということは、聖樹さまの守りはなくなる。理解しているか?」

「理解しています」

「授業の一環だけに、ガーシやシモーネの護衛をつけることもできない」

「はい」

「バッカス、それから名も知らぬ今日のような上位の貴族から ご(・) 招(・) 待(・) があるかもしれない。それでも行きたいか?」

「はい」

わたしは父さまの目を見て返事をした。

「では許可する。自身を過信してもいけない。警戒は怠るな。いつもお遣いさまたちに助けてもらえると思うな。自分の力で立っていられることを自身で証明しなさい」

父さまに許可証の書類を出すと、そこにサインをしてくれた。

「父さま、気をつけます。父さま、ありがとう」

書類をしまってから、父さまの隣に行って抱きつく。

「甘えん坊なウチのお姫さま」

そう言って、膝の上に抱き寄せてくれる。

「父さまも母さまも反対だったんだ」

父さまは静かにそう話し出した。特に母さまが、わたしを学園から出すことに拒否反応が強かったみたい。

でも、学園のヒンデルマン先生から課外授業について丁寧な説明の手紙が来た。

今年からは課外授業の所在地を父兄であっても知らせないことにしたこと。当日からの動向も最低限の限られた人にしか知らされない処置を取ることなど。わたしの意向と合わせて参加の有無を考えてほしいとあったそうだ。

アラ兄、ロビ兄からも課外授業は特別なものだから、外部での危険性を考えると止めたくなる気持ちもある、けれどやっぱりわたしが行きたがったら行かせてあげてほしいと申し出もあったそうだ。

そして兄さまからも。瘴気対策をすれば、わたしはそれなりに強いし。素早さはないけれど柔軟に状況に対応していけるから、わたしなら大丈夫だと言ってくれたそうだ。

兄さまには反対されると思っていたので驚いてしまった。

兄さまはわたしを信じてくれてるんだね。

瘴気対策はあのトルマリンさんとナムルが作ってくれたポンチョだ。

うん、あれを身につけ、瘴気から身を守る。

みんながわたしの気持ちを大切にしながら応援をしてくれている。

それに応えるには、わたしが無事でいるのが前提だ。心の中で気合を入れ直した。