軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1159話 キメリア滞在⑤溢れ

カードさんはノエルを連れて来てくれた。

ノエルは皆さまにちゃんとご挨拶できたよ。

その後、わたしにピタッと抱きつくもんだから、赤ちゃんたちもわたしにピタッとくっつく。み、身動きが取れない。そんなお約束を経てから、わたしたちは席についた。

友好の証として、ユオブリアからダフラへの贈り物の目録、ダフラからユオブリアへの贈り物の目録に目を通し、それぞれがサインする。

王さまはわたしたちを水の精霊が祝福したものたちだと告げ、だからこそ、これから縁が繋がるだろうと言ってくれた。

アダムと王さまががっしりと握手をする。

第五大陸、クリアだ。

ほぉっと胸を撫で下ろした瞬間、カンカンカンカンと警鐘を鳴らす音が響いた。

それまで穏やかに笑っていた王族たちの表情が変わる。

王さまが手を打った。

「名残惜しくもあるが、調印式も無事終わった。我らは取り急ぎやることができたゆえ、使節団と世界議会にはお帰り願おう。見送りは申し訳ないができぬ」

「それは今の警鐘に関係あるのでしょうか?」

アダムが尋ねる。

王さまは頷いた。

「王都より西にダンジョンがある。報告はこれからだが、魔物の溢れだろう」

「では、皆さま失礼致します」

そう声を張り上げたのは王太子殿下で、その後を王族の子供たちまでついていく。

「皆さま、出陣を?」

王さまは目を伏せた。

「……これも何かの縁。私たちも魔物を狩る手伝いをしてもよろしいですか?」

これには王さま、目を瞬かせる。

「な、何をおっしゃるか。もし怪我でもされたらどうする? 第五大陸と第二大陸のせっかくの架け橋が……」

「カードさん、何があっても今私から言い出したことだと証言をお願いいたします」

「……それはいいですが、本気ですか?」

カードさんにも驚かれる。

「私たちは縁を持ちました。友好国であるダフラを守る手伝いをしたいのです」

「意志が固いのなら、止めはせぬが……」

「ありがとうございます」

アダムが身を翻す。

わたしも後ろをついて行こうとすると

「令嬢も行くつもりか?」

と声をかけられた。

「はい、もちろんです」

周りがざわざわしている。

「弟ぎみやドラゴンも連れていくのですか?」

わたしはカードさんにうなずく。

「弟も強いですし、赤ちゃんといっても、この子たち、冒険者のレベル13ぐらいは超えてますよ」

わたしはレベル17。うかうかしていたら追い越されそうだ。

みんな驚いてる。こんなちっちゃくて赤ちゃん赤ちゃんしてるから、見た目を裏切るよね。わたしたちには見せ炎とか吐いたりもするけど、それは熱くないものとかでちゃんと加減をする。ちなみに火が苦手なレオには嘘炎も向けたりしない。ちゃんとわかっていて。ダンジョンの魔物に対しては本物の炎をお見舞いする。

「……気をつけて」

支度部屋で急いでダンジョン用の服に着替える。夏のドレスでよかった。脱ぐのが簡単だ。アクセサリーを全部外して部屋を出れば、みんなも動きやすい服に着替えていた。

王太子殿下たちも着替え、アーマーを着込んでいる。見ているだけで暑そう。

わたしたちが一緒に行くことは聞いたみたい。一緒に行くこともだけど、わたしたちの軽装を心配しているのがわかる。

溢れの対応に王族がこんなに出るなんてと、感心してしまった。

王太子殿下自らとはね。

彼らはわたしたちに本当にいいのかと何度も聞いた。意志が固いのがわかると、魔法を使えるかと聞いた。

ユオブリア以外ではあまり魔力が多くないとは聞く。けれど、出会う人たちは魔力が多いから、嘘とは思わないまでも、どこか大袈裟に感じてた。

でもそれは本当だったようだ。

なぜ魔物の溢れに王族が対応するか、それは平民はほぼ魔法が使えないかららしい。魔法がないと獣に対応するならまだしも、魔物には向かない。それが他大陸で王族が子沢山理由に繋がるとわかった時、わたしはとても自分の考えが浅はかだったと気づいた。ユオブリアは騎士や冒険者も多い。なぜなら魔力をみんな持っているからだ。ダンジョンも多いけど、ダンジョンに挑む人が多いため、溢れもそこまでの頻度ではない。

けれど他大陸では魔力を持つ人は少ない。ゆえにダンジョンに入っていく人は少なく、溢れが定期的にやってくる。冒険者ギルドに依頼して適度にダンジョンの中の魔物を減らして調整するようにしているみたいだけど、少しはマシになっているかもわからないそうだ。頼まずほったらかしにして比べることはできないからという状況らしい。

王族の魔力もそこまで高くないけど、なんとか魔法攻撃ができるので、こうして溢れがあった時は総動員して民に被害が行かないよう守るそうだ。

街の外に出る時の移動は馬だった。わたしは兄さまと一緒に馬に乗せてもらう。

王都から出て西へと馬を走らせる。

「おかしいな。普段なら王都へ向かってくる。ここら辺で遭遇するのだが……」

ここより西と東、どちらにも街があるそうだ。

「最初に出た魔物の後を追うって言いますから、他の方向へ行ったのかもしれませんね」

「そうなんですか?」

みんな驚いている。

「辺境近くのダンジョンの溢れでは、マヌケという足の速い魔物が一番に飛び出してくるそうで、みんなそれについて行きます。マヌケは〝お酒〟に目がなくて、辺境でお酒を作っているんですが、それを感じ取るらしくて、いつも〝砦〟へと一目散に走ってきたのです。他の魔物たちを引き連れて」

現在、空っぽダンジョンの溢れはほとんどなくなった。多分わたしたちが空っぽダンジョンの魔物をかーなーりー倒しているからだろう。

「酒って……ハオンの街は酒を作ってる」

「もしかして、同じような魔物がいてハオンに行ったのかも」

ハオンは東となる。けれど、それも想像だ。

王太子殿下は部隊を3つに、東のハオンと西の街、それからダンジェオンへ向かう編成をとるかと苦悩している。

人数をなるべく少なくしたくない。ここよりダンジョン側にいるとしても、民を守りたいのだから街に向かう方が2つの編成で済む。王太子殿下はそう判断した。