軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1155話 キメリア滞在①街中の水路

4年生になってくると授業も細分化され、専門的なことも出てきて、授業によってはついていくのがやっとだ。四苦八苦しているうちに1週間が過ぎる。

週末に同好会には出ずに家に帰れば、キュアの語学力が上がってて驚きだ。かなりユオブリア語を話せるようになっていた。

年齢を聞いたら、なんと7歳だった。あの馬鹿王女の侍女になったのは1年前と聞く。ということは6歳で王女の侍女の仕事ができると見込まれたってことだ。共用語も奴隷に落ちてから覚えたと言っていた。耳がいいからだと本人は言うけど……。かなり頭がいいし、それに努力家だということだね。7歳のキュアが頑張っているんだもん、わたしも頑張らなきゃね。

キュアには無理をしないよう告げ、あとのことはアルノルトとヘリに任せ、これから第五大陸・キメリアに行かなければならない。

メンバーは第六大陸の時と同じだ。

他大陸では、奴隷制度があるし、獣憑きとして蔑んで見られることを、折り込んでいた方がいいだろう。

第五大陸は水の大陸と言われている。水が豊富で、街中にも水路が通っているらしい。街の中を小舟で移動するって優雅だよね。

大陸の半分は滝とか湖だので、少数民族が把握しきれないほどいるらしい。第五大陸の一番大きな国はダフラ。ちなみに王女さまが留学に来ているオバーツは小国のひとつ。

ダフラは特定のところとしか付き合わない国。それでも今の王さまになってから、世界議会とコンタクトをとったそうで、第五大陸が開かれてきたらしい。

季節は夏と冬しかない。今は夏だと聞いたので、夏物の涼しげなドレスを着て、その上に調整するためのショールと、コートも羽織る。

お城の転移の間からフォルガードに行き、世界議会の人の転移でキメリアへ。

石造りの転移の間は、キンと空気が冷えていた。

ドアを開けて一歩踏み出せば、夏のむせるような暑さがねっとりとまとわりつく。

太陽が眩しすぎて手で遮る。

石畳の道はからっからに乾いていた。

背の低い丸っこい木がいたるところに生えていて、肉厚の花びらから甘い匂いが漂ってくる。

コートもショールも収納ポケット行きだ。

「城にご案内します」

と案内人は共用語で言った。

案内人の人たちは真っ白の神官服のようなものを着ている。みんな健康的な焼けた肌色。それも納得。少し日差しを浴びるだけで、肌がジリジリ焼ける気がする。

「我が国では移動は小舟に頼っています」

おお、本当に水路が……。

船っていうから小舟を想像していた。けれどあれはどう見ても 筏(いかだ) と呼ぶべきな気がする。嘘、あれに乗るの?

真ん中に3つ椅子が張り付いているみたいだけど。あ、あれに座るの。本当に大丈夫なの? ひっくり返らない? 水の中にドボンしない?

「さぁ、レディー、シュタイン、どうぞ」

にこやかに白い歯を見せてくるけど。

水の上に浮かぶ細っこい丸太の端をロープで縛って1枚の板に見立てた筏。

一歩踏み出すのは簡単ではあるけれど。

ゆらゆらする浮かんだ木の上に、どう降りろと?

わたしはいきなりテンパった。

「リディーは、私が運ぼうか?」

提案してくれた兄さまにコクコクうなずく。

兄さまはわたしをお姫さま抱っこしたまま、タンっと水路に浮かぶ筏に飛び降りた。筏が揺れる。思わず、兄さまにしがみつく。泳げる。泳げるんだけど、落ちるっていうのは衝撃を受けそうだから、できることなら落ちたくない。

「リディー、見てごらん、あれが引っ張ってくれるイルーカだって」

兄さまが小さい子のご機嫌をとるかのようにわたしに話しかけてくる。

本当だ。筏にはロープがついていて、それをピンク色の小さいイルカにしか見えないイルーカが水路を運んでくれるようだ。

ひとつ目の筏には、案内の人と兄さまとわたし、そしてもふさま。ドラゴンちゃんたちはわたしや兄さま、もふさまにひっつく。

アダムとイザークは次の筏だ。

兄さまはわたしを抱えたまま椅子に座り、景色を楽しめとばかりに、あっちに何が見えるだの、こっちを見てごらんなど言ってくるけど。

わたしは知っている。何かあった時、絶対落ちるのはわたしだ。

そりゃ兄さまやもふさまがすぐに助けてはくれるだろうけど、筏がひっくりかえるとか、バランスの取れない揺れとか、恐ろしい想像だけ浮かんでくる。

赤ちゃんたちは心配しているのか、わたしの髪を引っ張っている。

「ほら、大丈夫。もうお城に着いたよ」

本当だ。あっという間に目の前に聳え立つ城。その入り口で筏は止まる。

お城の筏担当の人が賢いイルーカからロープを受け取って、それを渡場の突起にぐるぐると巻きつける。

手前でも同じ作業がされていて、イザークとアダムが筏から渡場へと渡るところだった。兄さまも立ち上がり、軽いフットワークで渡場に飛び上がり、わたしを下ろす。

「兄さま、ありがとう」

「光栄ですよ、レディー」

兄さまはわたしの手を取って指先に口を寄せる。

そして路地へと階段を上がると……、女性がほぼ水着にパレオを巻き付けているような格好だった。胸は隠れているけれど、引き締まったお腹を見せている。色とりどりの長い髪を靡かせ、甘い香りのする花を髪に飾って。きっとここの侍女の衣装なんだわ。

資料では女性の格好はノースリーブのワンピースだと思ったけど。

アダムもイザークも表情は変わっていない。最初にチェックした兄さまもだけど。

これはこれで、なんとなく嫌な予感がするのだった。

そのまま王様に拝謁することになった。

古代ローマ人のような衣装だ。生地はアサネリヤ?

王さまはなんとも四角い顔の方だった。砕けた話し方をする方で、わたしたちを歓迎してくれた。ドラゴンに懐かれしものとの友好を喜ぶというより……

「第六のオーランドとやり合ったそうだな?」

と豪快に笑う。もちろんそんなことは……と否定したんだけど。

「オーランドの今代の王はダメだ。先代は頭も良く、民のことを考える良い王だったが、あいつは己のことしか考えていない。オーランドはそのうち自滅する。第六は荒れる」

そうはっきりと断言した。