軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1154話 友情の意見書

ルン髭とは今年度から創作同好会の副顧問となったゲラント・オマリー先生のことだ。

茶色の髪に灰色の瞳。チャームポイントは茶色い髭で、鼻の下に前世のカタカナの「ハ」の字の髭を生やしている。先がちょっとクルンと上を向いていることから、ルンルンして楽しそう=「ルン髭」とあだ名がついた。

悪意とか悪気はないんだろうけど、ドラゴンの赤ちゃんを知り合いに見せてあげたいらしく、わたしをパーティだとか集まりに連れ出そうとするのだ。創作活動の一環で、自分は副顧問だからってことでね。

わたしは忙しいし、何度も断っている。顧問のルーダ先生に言いつけて、注意してもらったら、こうやって休み時間の時とかに突撃してくるようになった。わたしが嫌がっているのをみんな知っているので、こうして助けてくれる。

これはルーダ先生だけでなく、ヒンデルマン先生にも言った方が良さそうだ。

ドラゴンの赤ちゃんを連れているのには賛否両論ある。ドラゴンに国を潰されないのはあっぱれとしても、それと、わたしが学園に赤ちゃんを連れて通っているのは別問題だと。ドラゴンの赤ちゃんを連れているからといって、わたしが優遇されるのはおかしいという意見があるのだ。

それはそうだよね。どこの親も自分の子供が可愛いから、ドラゴンを手なづけているからって学生が特別視されるのはおかしい。特別視されたいんだったら他のところで。学園を辞めればいいという話も出る。

とりあえずドラゴンの赤ちゃんたちがいることで、自分の子供たちに害があることはないからと、わたしの通園は許可されているけれど、いつどこで風向きが変わるかわからない。ゆえに、せめてわたしからは問題を起こしたくない。

だから顧問の先生には言えても、他の先生には相談できなかった。

学園の外には出られないと何度か言ったし、行きたくないとも断っている。

みんなにもすでに迷惑をかけているから、限界かな。言わないとだね。

今日はがっつり食べられる南食堂に行くことにした。

みんな食べきれなくても、もふさまがいるから安心して?南食堂を利用している。

入って後悔した。

ルナティー王女だ。今年度から2年生に留学してきた第五大陸・キメリアのオバーツ国、第五王女。ルナティー・クック・オバーツ。

青い目で、長い巻毛の金髪をツインテールにしている。

肌は健康的な小麦色。

嫌われているんだよね。最初に会った時、

「あなたが神獣と聖獣から加護がある方ですの? ずいぶん普通の令嬢ですのね?」

そうジロジロ見られてから、会えば決まって蔑むような言葉をかけられる。

一緒に行動している2年A組の女の子たちが、4年生の年上女子との板挟みになっていて可哀想だ。

「食べるところにゾロゾロと魔物を引き連れて、食欲が失せますわ」

驚きすぎて、挨拶も忘れた。

彼女の言うこと、それは正論だ。

今まで誰にもそんなこと言われなかったし、可愛いって言ってくれるから当然にしちゃってたけど、嫌な人だっているよね。

「あ、ごめん。みんなここで食べて。わたし、外に行くわ」

幸い食料は収納ポケットにたっぷり入っているし。

「リディアちゃん、ちょっと待ちな」

聞いていたのだろう、南食堂の料理長だ。

「リディアちゃんは、ここで食べられない理由があるから特別だ」

そう言って、今日のBランチ大盛りをわざわざ持ってきてくれた。

もふさまも一緒に食べるから折り込み済みで大盛りにしてくれてる。

ここのご飯は量が多いのに、さらに、だ。

「あ、ありがとうございます」

フォークとスプーンと一緒に受け取る。

「食器は今日中に返してくれればいいから」

「ありがとうございます」

優しさが身に染みる。

わたしはみんなに中庭で食べてくるねと宣言して別れた。

ドラゴンの赤ちゃんたちが、何かわたしに聞いているように鳴いてくる。

どうしたんだろう?

中庭の誰もいないところでシートを広げる。

周りに誰もいないことを確認してもらってから、皆を外に出す。

もふもふ軍団も一緒だと足りないから、ポケットからご飯を出して、みんなでいただきますだ。

でも、迂闊だった。何も言わない人だって、実はドラゴン苦手って人もいそうだもんね。

食べ終わりのんびりしていたら、慌ててレオたちがリュックに入っていく。

「リディアー!」

あれ、みんな。

「もう食べ終わったの?」

まだ午後の授業が始まるまでに時間がある。探しにきてくれたんだ。

「うん、食べ終わった。リディアも終わったみたいね」

「うん」

「私たちね、生徒会に意見書を出してみようと思うの」

「生徒会に意見書?」

「そう確かに、お遣いさまは獣ではないからいいけれど、赤ちゃんたちは「魔物」だし。食べるところに魔物がいるのを嫌う人もいると思うわ」

「言い出しにくいのかもしれないから考慮する必要があると思う」

「でもさ、だからってリディアだけが我慢するのもおかしいと思うのよ」

「そうよ、リディアは国を守ってくれたんだもの」

……みんな。

「先生に言ったらなんとか考えてくれると思うけど、そうするとまたリディアを贔屓しているとか言い出す人が出るでしょ?」

「だから、生徒会に意見書を出すのが一番いいと思って」

まとめたのはジョセフィンだ。

「理由があって申請すれば、食事を持ち運びしてもいいということにできないかなって思うの。食器の返却も、申請書にチェックする形にすれば、紛失は起こりにくいだろうし」

「申請すれば誰でもできることだから、特別視とは違うわ」

なるほど。

「じゃあ、早速教室に戻って意見書を書きましょう!」

「意義なし!」

手を取られて立ち上がる。

ダリアとキャシーがシートを畳み、わたしに渡してくれる。

返却のお盆ごと持ってくれているのはレニータだ。

「それじゃあ、南食堂に寄ってから教室に戻ろっか」

「そうしよう!」

「みんな、ありがとう」

みんなは揃ってニコッと笑う。

寮で朝ごはんも晩御飯も一緒に食べている。

授業中も寮でもほぼ一緒に過ごす。

だからお昼ぐらい別々に食べるのでも寂しくないのに。

わたしはひとりとなっても、もふさまもドラゴンの赤ちゃんたちも一緒なのに。

わたしを〝ひとり〟とみなして、わたしのことを思ってくれる。

わたしが一人になる疎外感を、自分の寂しさと同じに考えて、どうにかできないか頭を悩ませてくれたんだろう。

意見書が通らなくても、そういう友達がいてくれるから、わたしは淋しくなんかない。

『なるほどな。リディアも手札をもらっているから、童たちの手札を増やしたいと思うのだな』

呟いたもふさまを見れば、尻尾が左右の地面を小気味よく打っていた。