軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1090話 駒にされた子供たち⑧仕組まれた失踪

「男を引き摺り出せ」

ブライの首根っこを持って、馬車の下へと落とした。

その痛みで起きたフリをするブライ。

男はもふさまをつかもうとしたけれど、もふさまはスッと起き上がって威嚇した。

「なんだ、お前ら。リディア嬢!」

ブライが起き上がって、馬車を振り返り見てわたしの名を呼ぶ。

馬車の中を確認して、剣を突きつける男に食ってかかる。

「リディア嬢をどこへやった?」

「それはこちらが聞くことだ。女をどこへ?」

もふさまは馬車を降りて、ブライの足元へと走り寄る。

背中にいるトカゲには誰も目を止めないから、もふさまが見えなくしてくれているみたい。

そこに援軍が。ガーシやシモーネだ。ウチの護衛が合流したみたいだ。

「お嬢さまは?」

見えるところにわたしがいないからだろう。シモーネが声をあげる。

「こいつらに拐われた!」

ブライが大きな声で言う。

「いや、元々女はいなかった!」

ガーシが問答無用で捕らえるように指示を出し、戦闘が始まる。

しばらく混沌としていた。砂埃が上がる。

いく人か逃してしまったようだけど、馬車を襲ってきた輩を捕らえる。けれど、わたしだけがいなかった。

ガーシやシモーネたちの顔を見て罪悪感に苛まれるけれど、妙案だとわたしのどこかが認めている。

思えば2年前、敵が正体を現したのもわたしの不在がきっかけだった。わたしを呪い、術者も無事。だけれどわたしの訃報は聞こえてこない。シュタイン家がわたしの死を隠しているだけと思って、強行突破しようとしたのだ。わたしに罪を着せて。

今、敵がいることはわかっているけど、正体はつかめていない。今まで被害は噂をばら撒かれて嫌な目で見られるなど大したことのないものだったけど、噂の段階は終えたのか大胆な危険なものになってきた。

王宮の個人的なお茶会で、わたしが狙われ王族が巻き込まれたのか、王族の何かにわたしが巻き込まれたのかはわからないけど、ブレーンたちは「危険」区域に達したと結論を出した。

もしこの状況でわたしが失踪したらどうなるか。

うまくすれば敵のその先の目的がわかるかもしれない。

でもそれは危険な賭けだ。なぜなら、黒幕がひとりか、はたまた複数かはわからないけれど、この失踪にはブライがかかわっていると思われるからだ。

王宮でわたしとブライが馬車へと乗り込んだところは複数の人に目撃されているはず。それが馬車が止められた時には、わたしだけがいなくなっていた。

ではわたしは、いつどこに?

最初はブライがわたしを逃したと思うだろう。でも、わたしがその危機を脱しても現れなかったら? 味方がわたしを心配しこぞって探したら?

ブライが裏切った……とまでは思わなくても、わたしの行方を知っていると思うだろう。

仲違い、裏切ったのなら、ブライを仲間に引きずり込む。

ブライは騎士団長の子息だ。ブライが仲間になれば、彼の肩書きは使えるし、もしその団体がロサと敵対していたのなら、ブライをロサから切り離せるのは益のあることだ。

ただ行方を知るだけなら、何かよくないことが起こったと想像できる。だって 仲(・) 間(・) に(・) 知(・) ら(・) せ(・) る(・) こ(・) と(・) が(・) で(・) き(・) な(・) い(・) ようなこと、なのだろうから。それを知ることができれば、使い勝手のいいブライの弱みを握ることになるのだ。

そう、ブライはオトリというか、裏切り者になることをわかって作戦に乗ったのだ。

考えを巡らせて、なんとか目を開けていたけれど、限界だ。

眠ってしまいそうな合図にもふさまの毛を強めに引っ張る。

起きると、もふさまの毛並みの中で眠っていたようだ。

辺りが暗い。どこだろう? 飾り気のない部屋だ。

もふさまの目が開く。

『リディア、起きたか』

「もふさま、ここはどこ?」

『あやつの部屋だ。今は寝ておる』

「どうなったの?」

『お前は行方不明ということになっている。お前の家族やフランツがしっかり探すところを見せるために1日、味方にも情報は伏せるそうだ。我は話すなと言われたので、このことを話していない』

そっか。それはまたみんなに心配を……。

『だが、フランツとロビンとアランにはトカゲのお前の姿を見せた。気づいたようだった。作戦と気づいたのだろう。リディアがいなくなり悲壮な態度を貫いていた』

「もふさま、ありがとう」

毛並みに顔を埋めて、改めてお礼をいう。

無事なのを伝えられてよかった。

『眠れる時に眠るよう、あやつが言っておった。朝まで眠っておけ』

わたしはうなずく。

体力回復に努めないとね。

もふさまにぴったりくっついて目を閉じると、わたしはいつの間にか眠りに落ちていた。

雄々しい掛け声と剣と剣が当たるような音で目が覚めた。

何時よ、全く。と思ったけど、明るい日差しが少し開いたカーテンから差し込んでいる。

もふさまはもう起きていた。寝そべりながら尻尾が左右に揺れている。

「おはよう、もふさま」

『おはよう、リディア。体は大丈夫か?』

「少し痛むけど、平気。あれ、ブライは?」

『とっくに朝練にいっておる』

「もふさま、混ざってきていいよ」

『……なんで我が人族の朝練なんかに』

と言いながらすくっと体を起こしている。

「もふさま、わたしは部屋に置いてって。あ、窓枠のところにでも」

もふさまはわたしをくわえて、窓のところに置いてくれた。

陽がいっぱいに差し込んでいるから、ここにいればあったかい。

練習風景も見えるしね。

『我はちょっと出てくるから、動くでないぞ』

「うん、いってらっしゃい!」

もふさま、嬉しそう。

もふさまは器用にドアを開けて、尻尾をフリフリ部屋を出て行った。

窓から見える、騎士たちの自主練風景。

騎士たちは3つのグループに分かれていた。

ひとつは柔軟、ランニングというような準備運動をしていて、もうひとつは木刀を持って掛け声で合わせて素振りをしている。最後のひと組は打ち合いをしていた。

あ、もふさま。

打ち合いの中に乱入した。

さすが騎士、もふさまのいきなりの攻撃を足で押さえ、手では相手の攻撃を防いでいる。

いい練習になると思っているのか、もふさまを誰も止めてない。

と、思っていたらキィーとドアが開く音がした。

何? とそちらを見る。メイドさん?

朝練の間にベッドメイキングに来たのかも。

う、ここで見つかったら悲鳴が上がって、外に捨てられるかも。

わたしは足を伸ばして、カーテンの裏側に張り付いた。