軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1077話 真っ直ぐな子供たち⑧見もの!(前編)

コビー氏は自分の情報は話したけど、こちらの状況について一切尋ねなかった。

それが証拠に、中に入ってから出た言葉も

「今日は同時刻に船が集まっていて壮観ですね」

だった。

「2隻だけじゃないの?」

エリンが小首を傾げる。

そういえば来るときは焦っていたから、この桟橋に来るまでにいくつか船を見た気がするけど、周りの様子を全然覚えていない。

「1番はホセ家、3番はエミノールクルーズ、4番がウチですね。5番はロクスバーク商会。8番はタキタ家でした。もうすぐ8番は出航するでしょう」

5番の船の持ち主を聞いて、みんな何かしら反応した。

アダムはニヤッと笑う。

「……反対側の荷出口を開けてもらうことは可能ですか?」

「え? ええ」

コビー氏は何も聞かないことを信条としたのか、アダムの言葉通り、反対側の荷の出入り口を開けてくれた。

う、海が近い。すっごい揺れたら船の中に水が入ってきちゃう。

そんな海面すれすれの高さに倉庫はあるわけで。

隣に見えるはそびえ立つように感じる船の側面。ロクスバーク商会の船。

アダムはサッとみんなに指示を出し、みんな頷く。

コビー氏と話している間に、ロビ兄主体で子供たちに簡単な手当てをしていた。魔物は眠らされていると、もふさまが教えたようだ。

アダムはロクスバーク商会のものはロクスバーク商会に返したと言っていた。ということは、隣の船に運んだのはわかるけど。

船から船の間7〜8メートルはありそう。そして一番近い高さの手すりまでだって3メートルはあると思うんだけど。

「エトワール嬢、船と船の真ん中あたりに、水魔法でトランポリン状のものを作れるか?」

「アダム兄さま、任せといて」

え。

エリンが胸の前で透明のボールを持つような構えをした。

その手のひらの間に水の玉が出来上がる。エリンはその水玉を摘むような仕草をして弾力を試し出す。

エリンもああいうことができるのね。

トランポリンを水で作る、か。なるほど。今度やってみようっと。水魔法のトランポリン、土魔法でも風魔法でもできそうだ。

出来上がった1メートル四方の楕円のトランポリンを海に投げる。

見事隣の船との真ん中ぐらいにおさまった。

「置きにいく」

アダムは子供をふたり両肩に担いでトランポリンに向かってジャンプ。

弾力を利用して、うそぉ、ロクスバークの船に入っちゃったよ。

手すりの向こうで顔を出し、片手を振った。

「エトワール嬢はお遣いさまと一緒にリディア嬢を守ってくれよな」

こそっとブライがエリンに耳打ち。

エリンは大切なことを任されたというように頷いた。

ブライも両肩に子供を担ぎ、アダムと同じように隣の船へ。

次はロビ兄が魔物を2頭。

え、ってことは卵はノエルが? あ、袋。そっか。大きいものでなければ、袋にまとめることができる。収納袋には生き物はダメだけど、普通の袋なら5つの箱をまとめてひとりで持てる。

舐めてたわ、みんなの運動能力。

両手が塞がって荷物を担いでいる状態で。7メートル以上離れた高さ3メートル以上のところに、トランポリンを利用した跳躍で入るってなんなの?

しかも入る1階には天井があるのだ。手すりと2階となる天井の隙間に両手が塞がった状態で飛び込めるって、本当すごいから。

船の作りはだいたい同じと思ったのか、アダムたちの動きに迷いはない。

地下へと続く階段を降りた。

商会の船なのに、荷物は少なかった。

「ブライ、上の天井部分剥がせるか?」

「よし、きた」

ブライはそっと子供を床に寝かせて、木箱の上にあがる。そして剣を振るった。

「中身はカーテンって書いてあるけど、そうか?」

「ああ、布だな」

子供と魔物と卵の木箱を、そっと布の上に寝かせる。

そして天井部分を細工してはめ込んだ。

アダムたちは用事が終わるとサッサと隣の船へと戻る。

そしてコビー氏に挨拶をし、お礼にあがるけれど、それまでは何も見ていないことに船員たちにも箝口令を敷き徹底してください。命の保証ができなくなりますのでと、何かの印を見せた。

と、腰を抜かすコビー氏。

わたしは知らなかったけど、王族の証で、玉璽の次ぐらいに発言権やら行使権があるものらしく、事業主ならはじめに覚えることだそうな。

アダム、便利だな。

そうして船を出た。荷を持っていなければ、特に目が止まるようなことはない。

子供ってわかってしまうエリンとノエルは、わたしを守るという名目で倉庫へと避難させたのだろう。

そして待ってました!

3番はエミノールクルーズだっけ? 荷物が桟橋へとどんどん運ばれている。

船から桟橋へ、坂になっているところを重たい荷物をあげるのは一苦労だろう。

あ、セローリア家の荷だ。なんでわかったかって?

それは上部分に布をかぶせていたからだ。

アダムが破壊したところ。そこを布を被せて応急処置したのだろう。

木箱が桟橋にあがってきた。

受け取った船員がセローリア家の荷ですと大声をあげる。

高齢の男性とマッチョな男たちが船員に声をかける。

そこに船員さんが増えて何やらお話。

「荷はなんだったんですか?」

「はい? どういうことですか?」

「いえ、それが木箱が破損していて」

「破損? 公爵家の荷が破損ですか?」

「荷に爆発するようなものは入れられてませんでしたか?」

「荷は布だ」

新たに入れた荷については、アダムが公爵さま経由で教えたみたい。

船員は首をひねる。

「すみません、こちらも何が起こったかわからないんです。中身は確かに布でした。布は弁償いたします」

と平謝りを始めた。

なんか人が集まり始めてるなーと思った。

でも船員が頭を下げていたら何かあったのかな?と興味を持つか。

ただ、異様な集団がいて。感情がないような。なんか見ているだけなの。

いや、見ているだけなのは普通なんだけど。心の中で何かを思うものじゃない?

何があったんだろう、とか。うるさいな、とか。邪魔だな、とか。どっちが悪いんだ?、とか。

そういう感情が全く見えないの。

その時不意に。本当に不意に強風が吹いて、船たちが一斉に揺れた。

下ろそうとしていた荷が傾き、それがセローリア家の荷に当たり、倒れた。

応急処置の布が吹っ飛び、中の芯にくるくると巻き付けられた布が散らばった。

船員さんたちはもう大慌て。慣れた作業のはずなのに、今回に限っていくつも失敗をしている。公爵家の機嫌を損ねたら事業は大きく傾く。