軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1069話 放課後の影絵㉗委ねる

バンプー殿下は害されない。

そうわかったからだと思うけど、少しだけ余裕が生まれる。

ブレーンたちがたてた計画は斬新だった。なんと2年生メンバーにバンプー殿下を迎えに行ってもらう。当初の予定通りに話し、あとは丸任せ。

王族を捕らえたと屋敷を探るいい機会とするのでは?と思っていたので、不思議に思った。

メンバーをみんな、わたしたちの班の別棟の一室に集め、説明をした。

ロサたちが目的は連れ帰ってくること、それだけでいいと言った。

自分たちは彼の学友で、彼が帰ってこないと探していた。

そしてここにいることがわかり、家族も心配している。自分たちは彼を迎えに来たんだと。そこで相手がどう出るか、殿下もどう出るかはわからない。

けれどみんなのミッションはとにかくバンプー殿下を連れ帰ってくること。

2年生たちに計画を立ててもらう。

赴くのは男子限定にするそうだ。

計画を立てたとしても、思い通りにいくかはわからない。だったら相手や殿下の出方を見ながら柔軟にやっていく方がいいと、すぐに向かうことにした。

班長たちも何も言わず、ただ気をつけてと気遣うだけ。

残った女の子3人は、心がざわつくようで胸の前でお祈りポーズをしている。

バンプー殿下を迎えに行った2年生男子5人。

キャム・スタンガン。わたしを疑うと高らかに宣言していたけど、実際一緒に行動しているとどうも思慮深い子と思えない、思ったら即行動のキャラに思える。

ジュゼ・ガンナ。ガンナ伯次男。茶色い髪の茶色い目。パッと見特別な何かを思うことはないけれど、首席だそうだ。

ガブリエーレ・ヴァリ。ヴァリ伯長男。金髪に青い目。女子にいつも群がれているらしい。

ギド・ガラットーニ。ガラットーニ男爵長男。夜空のような藍色の髪に水色の瞳。儚げな感じ。ガラットーニ家は星見の職業につく人が多いそうだ。

パスクアーレ・レオナルディ。レオナルディ侯爵家3男。黒髪に赤い目。芸術に特化した家系だ。

みんなA組だそうだが、特に仲がよくもなさそうだし。このメンバーになってから時は経つのに、横つながりで話したことはないような印象を受ける。

その様子でわたしは不安になったんだけど、みんなは何も言わない。

馬車に乗り込むのを見送った。

女の子たちは不安そうにしている。

その肩を叩く。

ロサから残りの人たちは各班で行動し、下校時刻になったら寮に帰るよう注意があった。

わたしはアダムにいろいろ聞きたかったけど、からかさちゃんがいたので聞けなかった。資料整理はとっくに終わっていたので、手持ち無沙汰だ。

その時、からかさちゃんが話しかけてきた。

「リディア先輩って聖女候補と間違われて、誘拐されたことがありますよね?」

「え? ええ」

唐突だったので、少し身構える。

アダムももふさまもいるから心配はないけど。

「そして3人で逃げ出して、街を半壊したんですよね?」

「街じゃなくて、教会ね」

「逃げ出したって本当にすごいと思いました! 犯人たちは聖女候補をどうするつもりだったんですか?」

「……犯人は複数いて、思惑はみんな違ったみたい。わたしたちを直接さらった実行犯は聖女となれば、神聖国の証が輝くと思っていたようです」

世界議会が調べたところ、実行犯の少年は、神聖国の証が輝けば神聖国を復活させることができると信じていて、王子を立てることもできると思っていたようだ。体の弱い王子と残っている子供たちが暮らしていけることを願い、聖女がいれば神聖国を復活させることができるのにと嘯かれたみたいだった。

もうひとりの少年は、彼らが神聖国の証を持っているだろうから、味方に見せかけ懐に入り、その証を持ってこいと脅されていた。同じストリートチルドレンを人質にとられて。

そう命令したり、後ろにいた黒幕は、ユダ部首のエライ人、神官、そして世界子供教育支援団体の中にもいた。もっといただろうけど、それ以上は探れなかったそうだ。

「神聖国の証ってどんなものなのですか?」

「……さぁ。彼らがそう言ってただけだから」

本当はあの岩場全体が輝くのではないかと思っている。

彼は最後まで言わなかったし、そうとしか聞いていないと言っていた。

世界議会のバンパーさんたちも、聞き出せなかった。

けど、彼は聖女があの地にいることを重要視していた。

そしてその証を狙っていた人たちが、どんなに探しても探し出せなかったことからも、それは〝物〟ではないのでは?と思った。

砂漠から聖地を切り離した岩の通路。魔力に反応して開いたり閉じたりする。それを聖なる何かを持つからだと信じていた。

総合して、ただの推理だから誰にも言ってないけど、聖女の力で聖域になると信じていてそれが証だと思っていたんじゃないかと思った。

聖霊王が降りた地だから聖域だったこともあるんだと思う。それがどうして違ってしまったのかはわからないけど、そこに主人となる聖女が降臨すれば、女神の力が発現すれば、聖域に戻ると思われていた。

わたしはそう推理した。

「先輩は神聖国のこと、ご存知なんですか?」

「……滅んでしまった国というぐらいしか、知らないかな」

「女王のことは知ってます?」

ふと顔を上げ、すっとぼける。

「女王?」

「……リディア先輩のことだから、戻られたあといろいろ調べたりされたのかと思ったけど、そんなこともないんですね」

髪の間から見てくる瞳。侮蔑かそうじゃないのか、グレーな言い方。

「わたしは間違われただけだから」

その声音で快く思っていないのは通じたのか、

「ご無事で何よりでしたよね」

と終わらせた。

何が言いたかったんだろう?

そうこうしているうちに帰る時間となった。

殿下や迎えに行った子たちはまだ帰ってきていない。

連れ立って寮へと向かうわたしたちの影は驚くほど長く伸び、影がその先でひとりでに動き出しそうな不気味さがあった。