軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1068話 放課後の影絵㉖居座る

試験も近いというのに授業には身が入らなかった。

心配事があると胸がざわざわする。

アダムも同じじゃないかな。

授業中では絶対見たことのない、肘つき手に顎乗せをやって自分でハッとしてたからな。

やっと放課後になる。

朝の時よりわかった情報は、バンプー殿下にクイがついているということだけだ。身の危険だけは回避しているはず。

これはすぐにアダムに伝達魔法でみんなに送ってもらった。

一番心配していることだと思うからね。

そうして移動しようとしている時、もふさまが外を見てからわたしを見た。

そしてビュンと窓から出ていく。

え。

わたしが足を止めると、アダムも止めた。

そしてもふさまがいないことに気づく。

「あれ、お遣いさまは?」

「それが窓から……」

説明した矢先に窓から帰ってきて、口に咥えているのは、アリ? クイ ?のどちらか。

もふさまがぴょんと飛んできたので受け止める。

わたしの腕の中で自由になったのはクイだ。

「クイ!」

アダムはわたしを囲むようにして、窓の方へと押しやる。

あ、クイはちっちゃいけど、動いているのが見えちゃまずい。

聖樹さま!

心の中でお願いすると、クイともふさまを抱えたまま、木漏れ日の空間にいた。

アダムもいる。

「聖樹さま、ありがとうございます! クイ、大丈夫? バンプー殿下を守ってくれてたのよね?」

『アリと精霊が来たから、交代した!』

すかさずアダムに通訳。

『だから、リーに様子を話しに来たんだ』

もーー、もふもふ軍団ってばどこまで賢いの!

「ありがとう! クイも怪我はない? バンプー王子は無事なのよね?」

『うん。もちろん。気にいっているやつじゃないけど、子供だからな。子供は守ってやるんだ』

わたしは嬉しくなってクイの頭を撫でた。

強さが証明の魔物でも優しい子はとても優しい。

ウチの子たちは本当に優しい。

「ありがとう」

クイの頭にちゅっとすると、もふさまも何気に頭を出してくるので同じようにちゅっとする。

後ろでコホンとアダムが咳払い。

あ、そうだった。

『王族の子供は目隠しして部屋の中に閉じ込められてる』

わたしはアダムに通訳した。

「どうしてそんなことに……」

目隠しはさせられてはいるものの、その他は何もされていなくて、クイがどうしようかなと思っている時に、アリの気配を感じた。

アリはミューエ氏の顔を見ていないし、人の顔は見分けがつきにくいみたいなんだけど、きっと近くに行けば《《臭くて》》わかると思っていたらしい。

それが《《臭くなかった》》のでどうしようと思っていたら、クイの気配を感じてお屋敷に入って行った。そこにクイとバンプー殿下もいたという図式のようだ。

それで話し合って、クイはこれまでのことを報告しにわたしのところに来てくれた。

報告してくれたんだけど、スイッチバック方式で確かめていき、わかってきた。

集会場に忍び込んでいたクイとベアは王族の気配に気づいた。ふたりもロサの弟だと気づく。でもひとりで行動していると思える。それでクイがひっつくことにした。

バンプー殿下は集会で3番目に告白した子に声をかけた。

使用人に証言をさせることは可能かと聞いたそうだ。

不当だと思うことがあるのなら、相手が王族でも関係ない。手伝うからしっかり調べることが重要だと諭したらしい。

わたしは脱力した。

ユルゲンを追いかけたと聞いた時、てっきり集会の首謀者と突き詰めるため、とか、集会の情報を得るために接触したんだと疑いなく思ってた。

でも違った。間違いなくロサの弟であるバンプー殿下も真っ直ぐだ。

過去に立証できずに不名誉な烙印を押され、国を渡ることしかできなかった家族。その中のひとりであり成長した彼に、証拠があるならそんな集会で声をあげるのではなく、しっかり法に則って汚名返上しろと言ったのだ。やり方がわからないなら手伝うからと。そしてその相手がたとえ王族でも、臆することはないと。

バンプー殿下の真っ直ぐさを、正直なめていた。

そして最初は拉致られたわけではなかった。

ユルゲンがついてくるなといってもついていき、邸に入ればドンドンとドアを叩き、帰れといっても帰らず、中に入るのなら目隠しをさせるといえばそれを承諾し、自分から居座っているとのこと。

というと、奪還とは話が違くなってくる。

木漏れ日の間にみんなを呼んだ。そして話すと、沈黙が降りた。

「みんな、弟が勝手な行動をとってすまない」

ロサが謝る。

「ロサ殿下とバンプー殿下は案外似通ってますね」

ふふっとダニエルが笑った。

「私とバンプーが?」

「わたしも思った」

というとロサは面食らった顔。

「私にひとりで敵地に乗り込むような無謀さはないと思うけれど?」

「そっか? 3年前ぐらいは突っ走り気味だったし、真っ直ぐ突っ込んでいくところは似てる気がするな」

ブライが朗らかにいうと、そのボディーに拳が入った。

うっとブライは顔をしかめたけど、そんなもん? もっと痛そうに見えたけど。

ロサとブライはそんな〝対話〟もするんだね。

まさかわたしにはボディーをいれたりはしないと思うけど、賛成意見に口を閉ざす。

さて。どうするか。

バンプー殿下は自分から飛び込んでいった。

軟禁といっても、屋敷の中や人を見られたくないから目隠しして部屋に入れているだけで、目隠しも布で目を塞いだだけ、自分でも取れるようなものらしい。部屋も鍵はかかってないし、窓も空いていた。もう、自分で出ていけよって放置されている状態だね。

それをわかってかわからずか、殿下は椅子に腰掛けてじっとしているようだ。

そんな状況なら、殿下を奪還するのは簡単だ。

いくらなんでも王族ってわかっているだろうから、いなくなってもそれ以上に追求しないだろう。やぶへびになるから。

でも、バンプー殿下は集会の運営側の本拠地にいる。恐らく。

これを利用しない手はないよね?

ブレーンたちはそう判断するはず。