軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1064話 放課後の影絵㉒告白者

「私は、私の身の上に起きたことについてお話ししたいと思います」

背は高いし体もがっしりしているけれど、声は体型に似合わずかぼそかった。

「私の叔父は犯罪者となりました」

いくぶん、室内がざわっとする。

「不可抗力でしたが、相手にしたことを思えば罰を受けるのは仕方ない、今の私はそうも思うことができます。

ですが、叔父は罪を償うことができませんでした。一族の取り潰し、強制労働じゃ生温いと権力のある方に殺されたからです」

これって。

アダムと目が合う。これはマハリス邸であったこと。

殺されたのが叔父だというから、この人は……。

「夫人、当時6歳と5歳と3歳の従兄妹も殺されました。取り潰しではなく、尊き人と崇められている人の手により一家は惨殺されたのです。

……ですが私が何より憤ったのは、罪を当主の弟になすりつけたことです」

「なすりつけた?」

誰かが驚いたように口にする。

「私の父が兄の家族を惨殺したと、そういうことにしたのです」

淡々と言っているけれど。固く握った拳に全てが込められていた。

「父は自死しました。長いこと私たち家族も父のことがわからずにいました。私たち家族と叔父の一家は、普通に行き来して一緒に祝い事をする親戚でした。生活をともにしていたわけではないけれど、それなりに仲はよかった。

世間で報じられたように、確かに金銭問題で断られたことはあったけれど、それより大変な問題を抱えることになり、父は叔父たち一家を心配していたのです。

出ていく時は、強制労働になる叔父以外を家に連れてくるとのことだったのに、帰ってきた時は、身分の高い婦人とその身分の高い女性を守る護衛の人とやってきました。

母がその婦人たちの相手をし、あまりに遅いので父の様子を見にいくと、書斎で首を吊っていました」

最初は新聞で知った事件の概要。補うように第二夫人からその事実の裏側でなにがあったかを聞いた。さらに補填するように、事件の秘められた部分が明らかになっていく。

弟ぎみであるマージ氏は、強制労働に行く兄以外の家族を自分の家に誘うために兄宅に足を運んだ。そこで目にする血の海。そして自分の家族も同じ目に合わせると言われ、慈悲を願う。

取引は成立し、マージ氏は家族を守るため、立会人となる第二夫人と連れ立って家にいき、誰に真相を話すことなく自殺した。

「医師により父の死が確定されたときに知りました。父が自殺する前に行っていた叔父の家で、一家惨殺されていたと。借金があったのは事実です。その借金の金の無心をして断られたから一家惨殺し、自分も自殺したのだろうと。

そんな父ではない、そう言ったけれど、誰も味方はしてくれませんでした。

私たちは夜逃げ同然に国を出て、大陸を渡りました。

父のしたことではないと思っていたけれど、ではなぜ自死を選んだか、それがわかりませんでした」

やっぱり大陸を渡ってたんだ。

「そこで私は奇跡に逢いました。叔父の家の生き残った使用人と会ったんです。

彼女は一番下の従姉妹のメイドでした。従姉妹を守ろうとして顔に刃物の傷を残していました。お守りできなかったと、顔だけでなく心に傷を負い、遠く離れた異国の神殿で、惨殺された一家が安らかであるよう祈る日々を送っていました。

彼女は教えてくれました。一家を惨殺したのは私の父ではないと。国で一番尊き女性がやったのだと。自分は意識が朦朧としていたので、殺されず、口をつぐんで生きて行くよう言われ、異国に運ばれたのだと。

監視がついていたので、懺悔でも、賊が入ってきて一家が殺された。自分はお守りできなかったというしかなかったと言っていました。

口をつぐんでいたけれど、私と会ったのも神の思し召しだと教えてくれました。

一家を惨殺したのは国で一番尊き女性。

やってきた父に、お前の家族も同じようにすると言ったそうです。父は慈悲を願い、誰にもなにも告げず自死を選ぶなら家族は殺さないと言ったそうです。

……そうしてその通りになりました」

会場は針を落としたら、その音が聞こえそうなぐらい鎮まり返っている。

「女性は父に言ったそうです。恨むならシュタイン家を恨め、と。シュタイン家のせいで、父は自殺に追い込まれたのです」

は? とわたしは思う。

いやウチが本当の意味で間接的に関わっていたのならそう言われても仕方ない。

でもその間接的は、元王妃さまの心の中での動きでそう思われただけ。

それを何、納得してんのよ。

わたしはムッとしたけれど、みんなが聞き入っているときに、また挙がる手。

「なんでしょう?」

男性は手をあげたバンプー殿下に問いかける。

「その女性はあなたと面識があったんですか? 本当におじさんの家の使用人でしたか?」

「……顔に傷はありましたが、覚えている顔でした」

「なぜ恨むならシュタイン家を、と?」

「さぁ。そうと言っただけ」

「ではなぜあなたは理由もわかってないのに、そのことを口にしたんですか?」

「え?」

「使用人は本人だとしましょう。彼女が嘘をついて得をすることもなさそうだ。あなたの身に起きたこと、考えただけで血が凍っていくような恐ろしさを感じるし、それを乗り越えたあなたに敬意しかありません。

その女性の話すことと、あなたのお父上のとった行動、あなたが思うお父上像と一致し、だからあなたは信じたのでしょう。違いますか?」

「そ、そうですけど」

「あなたは冤罪の辛さを知っている」

グッと男性は詰まった。

「お父上が亡くなってしまったから真相はわからないけれど、あなたはお父上が叔父一家を殺害したとは思えなかった。けれど世間はそうと決めつけた。

あなたはその辛さを知っているはずだ」

「……だ、だったらなんです?」

「ですから、それなのになぜ関係があるかわからないシュタイン家の名前を出すのですか?」

「お、お前、さっきも告白者にイチャモンをつけてたな! この会をめちゃくちゃにするつもりか?」

一歩前に出たのは、口に何か含んでいるのか顔の形も違うし、本人よりずっと太いけど、ホーキンスさんだよね?