軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1060話 放課後の影絵⑱発揮

「推測が当たっていたら? そうだとしたら?」

思わず隣に座る兄さまの膝に、詰め寄ってしまった。

兄さまは喉の奥でククッと笑った。

「その顔、検討はついているんだろう?」

「兄さま、家宝もあるって言ったよね? ウワバミは酒に踊らされない能力。その家宝?」

「くくくっ。リディー、目がキラキラしてる。

おとぎ話と思っていたぐらいだ。スキルを授かったときに一緒にもらったようだけど、それだけ。ただなにを意味するのかはわからないけど〝剣〟なんだ」

「剣。剣の使い道っていったら〝切る〟ことよね?

ねぇ、兄さまのしたいことって何? 父さまやみんなに言ったことって何?」

もふさまがわたしの膝上から兄さまを見上げている。

目がキラキラしてる。すっごく楽しみにしている感じ。

わたしも、もふさまみたいなのかな?と思った。

だって、心躍るでしょう?

「うん。私の仮説があっていたとして、もし禁忌の神の力が入ったのなら、その剣で関係を〝断ち〟払えると思うんだ」

「すっごーーーーーーーい!」

「いや、決まったわけじゃないし」

「で、でもわたしもそんな気がした!」

『我もそう思うぞ』

「もふさまも、そう思うって」

そう翻訳すると、兄さまはちょっと嬉しそう。

家に先祖が大切にしていた家宝の剣があって、神さまからもらったものだと言われても、幼い頃ならともかく、へーとしか思わない。普通はそれで一生を終える。神官が身内にいなければ、祈る対象だとしても、それ以上それ以下にもならない。

バイエルン家のウワバミの話も、侯爵さまがお酒にも強い体質で酔いたいと思って外国に農園&酒造りまで手掛けたことから、普通の〝ウワバミ〟なんだと思っていたと思う。

わたしたちは神さまのいろんなやらかしを聞いた。勝手だけどさ。世界をこしらえてくれた存在なんだから、手の届かないのが仕方のないくらい立派であって欲しかった。

けれど神話や聞こえてくる神さまってのはとても人間味が溢れている。モラルは?と眉を寄せてしまうことが多かった。そんな存在。

神官はいらっしゃるし、神獣には会ったけれど、神さまは身近でいながら遠い。この世界を作ったってのもわかっている。すごい存在なのはわかっているけれど。助けて欲しいとき、なんか祈ってしまうけど。

身近にあっても親しいわけじゃない。だからこっちから祈ることはあっても神さまからのアプローチはないものとして生きてる。

神さまの恩恵は受けることはあっても、出会うことはないと思っていた。

けれど、神さまからもらった家宝が出てきた。それも兄さまが持ち主。

手の届かない神話や遠いところにしかいない神さま。それが、今。もしかしたら、その家宝が力を発揮するかもしれない。使えてしまったら、払えた〝何か〟も神に関係していることが決定するわけだけど……。

「まず、レヴィ家の令嬢を払わせてもらえないかお願いしてみて、許可が出た」

す、すごーーーーーい!

それができたら、できることもすごいけど、証明されることになる。

その剣が何やら込められたものを払えること。

払わなくてはならない何やらが、レヴィ嬢には降りかかったということに。

「夕方、みんなで行ってくる」

「みんな?」

聞いたらすっごい大所帯。5年生生徒会メンバーにアダムと兄さま。そしてバンプー殿下。

効果があったら、わたしに言いがかりをつけてきた他7人に、口止めをして、払ってまわるそうだ。同時にここ2ヶ月以内で手に入れたもののことなどを聞く。その後に、寮生たち。集会の幹部とは遠そうな人たちから崩していく。

うまくいくといいな。

他寮に配られたしおりは大量にあったので、試す意味をこめて火をつけてみたら、家の花束と同じように変な燃え方をしたという。

今わかっているのは、何かしらタダで大量に配られたものを手にした人が、アンチシュタインになっているということ。

わたしはトカゲの尻尾切りでその精神体攻撃を回避したけれど、わたしがアンチシュタインになるってどんな感じになるんだろう?

それとも寮の5階や食堂前に置かれたものが違う何かを込められたものだったんだろうか? いや、ロッティー女史や寮生がわたしに含みを持ったということは同じ何かが入ったものだったんじゃないだろうか?

それに効く人、効かない人がいるのはどういうわけだろう?

兄さまたちが払い、そして聞き込みをすることで、少しずつわかってくることがあるだろう。

兄さまは時間に余裕を持って出かけるとのことなので送り出した。わたしも行きたかった。見てみたかった。

本調子に戻ったわけじゃないのと、わたしアンチなわけだから目の前にわたしがいると何をしてくるかわからないとのことで、わたしが行くのは却下されたのだ。

部屋に戻って、もふさまとお昼寝した。

目覚めてから首尾はどうなったかとヤキモキしているところに青い鳥。イザークから。言葉は短く、レヴィ嬢を正気にするのは成功し、話も聞けた。

その後、兄さまが倒れたという。近かったイザークの家に運び込まれたとのこと。もう意識はあるようで、もう心配ない。魔力をかなり使ったようだ。お医者さまにみていただいて他に悪いところはナシ。今日はイザークの家にそのまま泊まるそうだ。

魔力切れ……。兄さまが無事でよかった。

そして払えたこともよかったけれど。

わかったことは。

払える手段があったことは喜ばしいけれど、兄さまがそこまで疲弊するほど魔力を使うことになる。

払えたということは、やはり〝何か〟の力が入っていた。

おとぎ話通りなら、祈りに応えた神の力が。

それも酒の神、享楽神・バッカス。名を剥奪され川を流されている禁忌の神。

……禁忌の神に祈れば応えがあるって、どこの誰がどこで知ったのよ、全く。

込められるのは〝お酒に〟だけじゃない。けれどその何かしらの媒体がないと込められた〝何か〟は発揮しない。そしてそれは燃やすとおかしな燃え方をする。