軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1036話 地道な調べ物④集会(前編)

すぐに録画を見たいと思ったけれど、また寝不足になるともふさまに言われ、明日聖樹さまのところでみんなと一緒に見ることにした。それが正解。寝不足にならず、クリアな頭で登園できた。

アダムは情報屋さんとホーキンスさんから報告があがってきているようだけど、映像を見たいと駄々っ子のように言うので、朝っぱらから聖樹さまに呼んでもらう。みんな気になっていたみたいなので、問題なかったけど。

集会がどんなものか、初めてメスが入るわけである。聞きはしたけど、目で見るのとは違うよね。

わたしは不謹慎ながらワクワクしていた。

馬車に乗るところから始まる。

制服ではないワンピースを着込んだクラリベルとニーナ嬢。前にはカドハタ嬢だ。

カドハタ嬢。婚約者に利用されているのか、利用している方なのかはまだわからない。

「台本は覚えてるわよね?」

彼女も制服ではない、簡素なワンピースだ。

茶色の髪に茶色の瞳。顔立ちは可愛い系なのに、ツンツンした態度が不協和音となっている。少々つり上がった目が、クラリベルを巻き込みやがってと思っているせいか、意地悪げに見えてしまう。

「覚えました」

ニーナ嬢の声が可愛い。

「はい」

短く言い切るクラリベル。

グレーン酒がどれだけ影響の出るものかわかっていないので、あんまり自我を出さないようにと言ったせいか、言葉数を少なくしている。

「人前で演技をするなんて初めてのことじゃなくて? よかったわね」

うーん、クラリベルを巻き込みや……(自粛)フィルターがかかっているからか、貶しの言葉に聞こえてしまう。

「ふたりとも綺麗な金髪。見栄えするわ。だから選ばれたの。大好きなお芝居できて、お金も手に入る、よかったわね」

嫌なやつ。

みんなはなんとも思ってないみたい。不快な顔をしているのはわたしだけだ。

わたしをイラッとさせながらも馬車は進み、キリエ邸についたみたい。

とても空き家とは思えなかった。庭に雑草なども生えてない。花は咲いてなかったけれど、それは今の季節そこまで不思議ではない。

掃除や手入れが行き届いている、普通のお屋敷。そんな感じ。

馬車から降りる前に、ふたりはカドハタ嬢から白い布を渡された。

あれ、アサに似てるけど、アサネリヤじゃない?

違いはアサネリヤの方がもっと風を通す。質感が似ていて、風を通すけど、アサより丈夫。

はた織りの村で繊維を染めるのに、アサネリヤの方が丈夫だからアサより色が入らないかと思ったんだけど、逆でアサの方が入らなかったんだよね。夏物に良さげと目をつけていた繊維だ。

けれど南でしか取れないもので、まだ流通のパイプが細い。だからウッドのおじいさまに頼み込んだのに、あまり手に入らなかった。

ウッド商会が手に入れられなかったアサネリヤを、この集団はあっさり手に入れてるわけ?

南といえばレミゼト王国。あそこに知り合いは……ひとりいるけれど、わたしから手紙がいったらやっぱ嫌だよな。

あ、アイリス嬢がいる!

ダンジョンで強化していたとき、なんの話から流れたのかは忘れたけど。

アイリス嬢は文通しているっていうから驚いたんだ。

仲良くはなったけど、ふたりが文通するまでの仲とは思えなかったからだ。

手紙でどんなことを話すんだろうと思ってしまったのがわかったように、彼女は言った。

聖女になったときに、〝聖女になったわよ、あなたは候補だったのね。あたしを褒めてもいいのよ?〟的な手紙を送ったらしい。強者!

おめでとうございますという手紙と、最上級の真珠のネックレス、それから王族に献上する最高級の紅茶が贈られてきたという。

みなさまもお元気でしょうか?ってあったから、リディアさまも無事に帰ってこられて、お元気よって伝えておきました、と元気よく教えてくれたっけ。

アイリス嬢はわたしと彼女との関係に何も言わなかったけれど、何かを察しているみたいだった。失礼だけどちょと驚いた。かなり空気の読めない人だと思っていたから。

アイリス嬢に頼んで聞いてみよう。

考えている間にも映像はどんどこ進んでいく。

白い布をかぶり、お屋敷の中に入っていく。

ドアのところでグレーン酒のグラスをもらう。そして中へと促される。

中も布をかぶった人たちばかり。

ゆっくり歩き、少し歩くと足を止め振り返り、ニーナ嬢を気にしている。

いや違う。一時足が悪かったアニーを気遣っているんだ、イライザは。

ふたりはもうお芝居を始めているのだ。

映像を見ているだけなのに、わたしの方がドキドキしてくる。

やがてドアが閉まった。

司会がいるわけではないのに、ぽっかり空いた中央にひとりが進み出ると静かになる。その人は罪を告白したいと言って、みんながそれを許す。なんだか異様な光景に見えた。

その人は自分が人殺しだと言った。

自分には弟がいた。弟は階段で足を踏み外し、事故で死んだことになっているが、それは嘘だ。普段から人懐こく誰からも愛される弟が妬ましかった。自分は弟を大嫌いだったのに、弟は自分に懐いてくる。どんなに邪険にしても自分に甘えてくる。その日も遊んでと手に絡んでくるから、鬱陶しくて払ったらバランスを崩し下まで転がっていき、動かなくなったのだと。

音に驚いて使用人や家族が集まってきた。

どうした?と言われて、階段から落ちたと答えた。自分が手を払ったとはとてもいえなかった。家族たちは嘆き悲しんだが、自分のことを責めなかった。

誰にも疑われずそのときはほっとしたけれど、それから何をしていても弟の影がちらついた。何をしても楽しくないし、どうしていいかわからなかった。

世界の終焉を聞いて、やっと終わるんだと喜んだぐらいだと。

そのとき天啓がくだった。十分苦しんだと。罪を告白しなさい。それは罪を認められないものの目指す在り方となる。さすれば終焉の先で許され、新しい世界で佳いものを授かることができると。

自分は集会に通い、原罪を告白する資格を得ました。罪を許されようとは思っていません。でも自分のように苦しむ人の力になれるならと思って、告白することにしました。

破れんばかりの拍手。

拍手しないと祟られる霊に取り憑かれているかのように。

熱狂的というか、何か異様に映った。