軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1035話 地道な調べ物③9区の楽器店

「弦を買いに行ったことがあります。他のお店を回って、9区のお店なら大きいから置いてあるんじゃないかって言われて。住所が分かりづらくて大変だったんです」

お店だったら人に聞けば記憶にありそうなものだけど、住宅街であまり人出がなく聞けなくてグルグルしたとか。

9区はクジャクのおじいさまの家がある。確かにあのあたりはのどかで静かで広いお屋敷が多かった。

「それにお店、のような店構えではなく、普通のお屋敷の1階に楽器を集めたスペースにしたようなところで。なんか不思議な店だったなー。ここは楽器屋の裏あたりかもしれません」

へー。

わたしは思い立って王都の簡単な地図をノートに描いた。

王都はゆる楕円。ほぼ真ん中に王宮がある。王宮が1区。王都から王宮を除くとできるバームクーヘン。これを8等分にわけ、北から時計回りに2区、3区とナンバリングされている。どの区も1区、つまり王宮に近いところと王都の端となるところが存在する。斜めに突っ切ることができればどの区も近いけれど、真ん中に王宮がありそこは通り過ぎることができないので、地道に内回りか外回りかで近い方から向かうしかない。

わかっている中での1番目の集会のあった空き家は2区。マハリス邸は3区だった。

「そのお店の大体の位置でいいから、バツ印を入れてくれる?」

スタンガンくんは、少し悩んでからこの辺だと思うとバツを描き込んでくれた。

わたしは1番目と2番目のおおよその位置にバツを書き込む。

なんて話しているうちに鐘が鳴って下校時刻になってしまった。

今日はここまで、明日はロンナイ邸のことからまた始めようと図書室を出た。

そこで別れるつもりだったけど、寮まで送ると言ってくれる。わたしは辞退したんだけど、頑なだ。わたしが敵と関わりがあるとかなり疑ってるね。

押し問答になると面倒なので、送ってもらう。

部屋に戻ってからアダムに無事寮に戻った報告と、ウッドのおじいさまにセレクタ商会のことを尋ねる手紙を書いた。伝達魔法で送る。

実は今日早速、クラリベルが集会で初芝居の日。ホーキンスさんも参加している。

今日は5区。わたしの王都の家のある地区だ。

場所は元キリエ邸。おばあさんだけが残って静かに暮らしていたんだけど、遠い親戚が少しの間だけ泊めてといって好き放題することに嫌気がさして、長屋タイプに建て替え、余っている部屋はない、暮らすなら家賃を払えの方針に切り替えるそうだ。おばあさんは借り家に引っ越していて、それで取り壊しを待っているところなんだけど、その家で集会を開かれる。持ち主のおばあさんが集会と関わりはなさそうだと調べはついている。

クラリベルとニーナ嬢をそんな集会に誘ったリン・カドハタ嬢。お茶会があったり、家に呼ばれているので、カドハタ家がその思想団体と関係があると思い込んでいたけれど、実はリン嬢の婚約者ヤコブ・ミューエ、20歳の指示だったことがわかった。アダムの情報屋さんがリン嬢を追ったら、婚約者とラブラブしていたそうで。このミューエ氏がどうやら運営側と見られた。ミューエ伯爵家自体は真っ当に生きているらしく、このヤコブ氏が思想団体に取り憑かれていると思われる。まだ規模やら何やら謎だらけなので、泳がせておくとのことだ。

クラリベル、大丈夫かな。

と思っていると、ウッドのおじいさまから返信がきた。今情報があることをとりあえず記す。調べてまた報告する、と。

セレクタ商会はまだ申請があったばかりの商会で、倒産したタールバッハ商会の従業員たちが共同経営しようと立ち上げた。タールバッハ商会は南のブッシュ地方で展開していた商会。ブッシュ地方でしか取れない花の香水とか、真珠系のアクセサリーを取り扱っていた。真珠の取れるあたりに魔物が巣を作るようになってから、真珠が取れなくなり、冒険者に魔物を倒す依頼とかもしたみたいだけどダメで倒産に至った。

香水のルートは生きているらしく、その香水と商品にできるならなんでもの心がまえで、いきなり王都に乗り込んできた、メンタル強しの商会と見ている、と。

地方から来たなら、関係ないかもな。

おじいさまにお礼と、そして何かわかったらお願いしますと結んで手紙を送る。

一区切りついたので食堂に行くと、クラリベルはまだ帰ってきていなかった。演劇部の活動で今日はお芝居を見てくることになっていて、帰りの馬車で車輪トラブルがあり、帰りが遅くなりそうだと連絡があったそうだ。

クラリベルにはホーキンスさん、アダムの情報屋さん、クイとベアもついている。みんなクラリベルたちに危険がありそうなときは身の安全を第一に動いてくれるそうだ。だから心配ないってわかってはいても不安は拭いきれない。

夜にベアが忍んできた。

「ベア! 大丈夫だった?」

『実に堂々とあの子はやりきりましたよ』

え。

『聞いている人は皆感動していました。迫真の演技だったのでね。それから、グレーン酒は飲んでいませんよ。頭はしっかりしています。もう一人の方は飲んでしまわれたようで、飲んだ後は目が空になっていましたが。深く考えなくなる、聞いたことを繰り返すって言うか、そんな効果があるようです。でも馬車に乗る頃には目がしっかりしていました』

グレーン酒は一時的に効果があるものなのかな。

今日の記録だと、チップを渡してくれた。

わたしはベアとクイ用に蜜のたっぷりかかったケーキクッキーと、クラリベルにひと口チョコを贈った。

クラリベルのところに戻るというので、ドアをほんの少し開けるとベアはスッと通り抜ける。

あっという間に暗闇の中に見えなくなった。