軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1028話 省みる試験の始まり⑦班決め

「さて、ひとところ策はでたようじゃ。ブレドの婚約者、リノ・セローリア嬢。どうまとめる?」

空気が和らいだところで、妃殿下はまとめに入った。

「はい。今日決めることは誓約で口止めをし、以後はこの試験の見届け役としてコリン殿下が動かれるのがよろしいかと存じます。

試験であることは暗黙でありながらも皆が知ること。けれど一線を引いた見届け役であれば目眩しになり、陛下への報告などしていただければ誰もが見届け役として疑うことはないでしょう。聖女、アイリスさまには夫人へのお祈りをしていただければ、夫人にも心やすらかに過ごしていただけるのではないでしょうか」

妃殿下は扇を広げて頷く。

「コリン殿下のなさりたいことを阻む小枝を、小さな淑女たちが取り払う算段を立てた。陛下、いかがいたしましょう?」

陛下は少し顎を触った。

「コリン、余は第四王子に問う」

「はっ」

殿下は胸に手をやり、陛下に微かに頭を下げる。

「小さな淑女たちが立てた策で、お前も試験を受ける側だと受け取られる可能性はグッと減る。しかし、やはり疑う者は出てくるものだ。

王という権威に群がる者は大勢いる。牙を向いたり、引き摺り下ろそうとする者様々だ。

お前の兄である、ブレドもトスカも命を狙われたのは一桁ではない」

トスカ? 一瞬ビクッとしてしまった。そっか、トスカはバンプー殿下のお名前だ。

コリン殿下はハッとしたように、ロサとバンプー殿下を見た。

ロサは少し悲しそうに微笑み、バンプー殿下は怒ったように口を尖らせていた。

「王位継承権に関わる試験をしていることは周知の事実。勘ぐるものもいよう。だから余はお前のお披露目となる茶会にて、試験の話をする会とした。茶会を隠れ蓑にしたようにして、以後コリンが関わらなければ、お前の安全性が増すからだ。

けれどお前は、参加したいと言った。

策を講じてもお前が王太子を望んでいると、新たな勢力かと、無駄に〝踊る〟ものもでよう。命を狙われることもあるかもしれない。

それでもお前は参加することを望むか?

命を賭してまで、試験に関わる覚悟はあるか?」

なんかさー、王族ってすごい世界だな。特殊だ。起こす行動ひとつに、命をかけることも覚悟しなくてはなんて。それも成人前から。

ん、でも貴族も上の権力に逆らえば、首が飛んだりもするし。

平民も貴族に逆らったら、もっと顕著に結果に現れる。命が軽いかのように。

わたしは父さまたちに守られてお気楽に暮らせてきたけれど……。

なんかそんなのって異常だ。子供が子供らしく生きられない、なんて。

「陛下。僕は命を賭すということが分かっているか、自信がありません。兄上、母上、そして父上に守られていたから、わかっていないのかもしれません。

でも、覚悟はあります。僕は王族の一員でいたいのです。国を支えてくれる民に降りかかる火の粉を振り払うのが使命。守りたいのです。どうか、僕にも兄上たちを手伝わさせてください」

「……お前の覚悟はわかった。ブレド、トスカ。リンゼイをお前たちの試験の見届け役とする」

ロサとバンプー殿下は「ハッ」と短く言って、拳にした手で胸を2回叩く。双子のように見事に揃っていた。顔は全く似ていないのに、みんな美少年ってのも、なんか癪に障る。

「お父さま!」

可愛らしい声がした。

一斉に声をあげたアガサ王女に視線が集まる。王女は視線を集めたことではにかむ。

「陛下」

と言い直す。あ、みんないるのに「お父さん」呼びしちゃって恥ずかしかったんだね。大丈夫だよ、エリンなんか王さまに向かって〝姉さま〟呼びしてもどこ吹く風だ。

「わたくしも王族の一員です。お兄さまたちを手伝わせてください!」

なんとまぁ!

陛下は咳払いした。

「ポリー、心意気は認めるが、お前はまだ幼い」

ポリーはアガサさまの名前でもある。陛下はポリーと呼んでいるんだね、いつもは。

「陛下、同い年のエトワール嬢とノエル子息も参加されているではありませんか!」

「……それはそうであるが」

陛下は困ったようにわたしをチラッと見る。

え? いや、わたしは何もできないよ。スッと目を逸らす。

「リディア姉さま。姉さまも妹ぎみ、弟ぎみは優秀だから参加させられるけど、わたくしには無理だと思われますか?」

アガサさまのお母さま、陛下や皆の圧が凄すぎる。

ヤーメーテー。全方向からオッケーの〝答え〟なんかあるわけないじゃん。

アガサさまはまさしく箱入りのお姫さま。何があるかわからない市井に出すなんてできることじゃない。

えっと。あ!

「アガサさまからお手紙をいただいたとき、とても美しく読みやすい文字にも感激しました。うちの妹と弟は戦闘に向いていますが、デスクワーク、コホン、報告書作りにはとことん向いておりません。もし、そこらへんをアガサさまにカバーしていただけたら、捗るんじゃないかと思います」

アガサさまの目がキラキラしている。

「お父さま! わたくし、報告書、書けますわ!」

陛下は咳払いをする。

「そ、そうだな。わかった。ポリーは皆の報告書をまとめなさい」

「はい、誠心誠意尽くします。皆さま、よろしくお願いします」

にこっと笑う。2年生男子諸君が一斉に胸を押さえている。

可愛かったもんね。胸にズキューンときたか。

と、陛下がテーブルを叩いた。

「皆のもの、王女のことも頼むぞ」

圧をのせて言われ、みんな震えあがっている。大人気ないなー。

ロサとバンプー殿下がコリン殿下に司会をさせた。

そうして具体的に案が上がっていたことを行動に移すべく班分けがされた。

わたしはまだみんなには言ってないクラリベルのことがあるからだろう。

集会の情報を得る、その班となった。

班長はアダムで、わたしとロビ兄、2年生のわたしを疑うといったキャム・スタンガン侯爵子息、それからからかさお化けちゃんのミープ・ロイター伯爵令嬢。

ロサやバンプーさまは班長たちを束ねる統制役。

兄さまはイザークやルシオと同じ班で他数人とグレーン酒の出どころを探るようだ。

アラ兄はアイボリーさま、マーヤさまと2年生と組んでいて、マシュー先生をチェックするらしい。

エリンとノエルはブライが班長で、他数人の2年生と、制圧部隊だ。何かあるまではみんなで訓練をするらしいよ。

細々したことまで決めて、長い長いお茶会プラスアルファはやっと終わった。