軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

67 本日の予定その9 まさかのコテコテ大成功

「ーーー……ちゃん、おーい、ユーリちゃん」

トントントンと肩を連打され、声を掛けられるのが聞こえる。

うーん、もう少しだけこのポカポカに浸っていたい。

「セリエル様の背中にへばり付いて離れないトコとか、本当にこの子リュシエル様の小さい頃にそっくりだなぁ」

「笑うより先に降ろせ」

グリグリと擦り寄っていると、その熱源から溜息混じりの声が響くのが聞こえた。

「セリエル様も少し懐かしいでしょう?」

「……このままにしておくと背中が涎まみれにされる」

「ははっ、そう言えば涙と涎の顔面スタンプもよく服に押されてましたよね」

そんなやり取りに、ハッとして顔を上げる。

私ってば、セリエルさんに背負われたまま寝てたのか。

あ、涎垂れてる。

「お、起きた。目的地に着いたよ、ユーリちゃん。セリエル様の背中から降りようなー」

すぐ隣に立っていたシエルさんが言いつつ手早く装着していた金具やらの装備を外してひょいっと地面に降ろされた。

状況を把握すべく辺りをキョロキョロと見回してみると、魔大陸とは違う、何だか柔らかな光の粒子が漂う明るい芝生のような草原と森。何だか影の色合いも見知っているモノより薄い気がする。

これが環境的な属性の違いなのかな。

そんな中でセリエルさんとシエルさん、それと母子ドラゴン二組、茶色の長老ドラゴン、ツェンさん、フォルさんが側にいた。

「他の面々と長老達は、念の為に周囲の安全確認をしてくれてるから、戻ってくるまでもう少しここで待機なー」

「あい」

周りを見ていたからか、シエルさんが状況説明をしてくれたので、なるほどと納得してのお返事。

それにしても。

母子ドラゴン、凄くピッタリと母竜の前脚に子竜が収まってるんだよなー。あれ、もの凄く居心地良さそう。

とは言え、生まれたばかりの子竜を押し退けてまで試す訳には絶対にいかないし。

長老ドラゴンの方が大柄だから、その脚元なら私もスッポリ収まるんじゃないかなーなんて。

そんな好奇心で茶色の長老ドラゴンに近付いて行くと、長老が首を下ろしてくれた。

〈どうした? 『愛し子』〉

「おじいちゃま、前脚そろえられましゅか?」

〈…………こうかの?〉

ドッシリと構えるように広げられた前脚ではお試しできないので、母竜のような姿勢をお願いしてみる。

それに快く応じてくれる長老ドラゴンに、周囲が何事かと視線を向けてくる。

「お邪魔しましゅー」

ニッコリ笑顔でご挨拶してから、長老の揃えて貰った前脚の間に収まってみる。

「ボクも二頭とお揃いでしゅ」

思わずドヤ顔で周囲に自慢すると、ツェンさんが思いっきり噴出した。

他の人型の大人達は呆気に取られた表情。

子竜二頭は嬉しそうに鳴き、成竜達は揃って長い首で空を大きく仰ぎ見ている。

そこへ、四方から周囲の探索に出ていた面々が戻って来た。

〈茶色の、雌みたいな格好で何をナヨナヨしとるんじゃ〉

〈嫁に見られたらぶん殴られるぞ?〉

〈と言うか、揃いも揃って空を見とるが何かあるんか?〉

茶色の長老ドラゴンの脚元にいる私に気付いていないらしい他の三頭の長老ドラゴン達が不思議そうに声を掛けて来る。

〈……嫁とて殴れんよ。いや、嫁が戻ったら逆に殴ってでもお役御免にされてしまうじゃろ。今しかできんから何を言われても痛くも痒くもないわ。………………はぁ、『 愛し子(まご) 』が可愛い過ぎてしんどい〉

「……おばあちゃまもいるー?」

長老達の会話から浮かび上がる、茶色の長老ドラゴンのお嫁さん。どうやらお出掛けして不在みたい。

どんなドラゴンなんだろう。聞きたい。

と言うか、茶色の長老ドラゴンの声が滅茶苦茶震えてるんだけど、大丈夫かしらん。

小首を傾げていると、私の声に気付いた他の長老ドラゴン達が一斉に目を剥いて茶色の長老ドラゴンの脚元にいた私に視線を向けて来る。

それは探索に出ていた人型の面々も同じくで。

〈〈〈『愛し子』!!?〉〉〉

「ボクも弟と妹とおそろいでしゅ」

再びのドヤ顔でドヤァと決めると、実は小さく肩を震わせていたソフィエさんがその震えを徐々に大きくさせ、終いには笑いを堪える為に口元を押さえる。

〈『愛し子』、じぃじの脚元でもいいんじゃぞ!〉

〈いや、儂の脚元にっ!〉

〈イヤイヤ、こっちじゃろっっ!〉

言いつつ、三頭の長老ドラゴン達が勢いよく前脚を揃えて差し出してくる。

やだ、居所が選り取り見取り。

そんな光景がますますソフィエさんとツェンさんの腹筋に特攻をかけているのか、遂には二人が膝から崩れ落ちた。

「いや、何この 混沌(カオス) 。ここに来た目的忘れてないっスか?」

シエルさんの冷静な突っ込みに、ドラゴン達がハッとする。

一緒に私もハッとする。

笑ってる二人はまだ立ち直れていない。

「これだけドラゴンがいるお蔭で危なそうな野生動物や魔獣も姿形全く見えませんから、心置きなく遊んで大丈夫そうですよ」

ルートヴィヒ少年の取りまとめた報告に、茶色の長老ドラゴンの脚元から飛び出る。

それに釣られてか、子竜二頭もぴょっこりと母竜の脚元から出てきた。

こほんと咳払いを一つして、いざ仕切り直し。

「探検に出発でしゅー!」

〈〈きゅっ!〉〉

言うが早いか、とっとこ駆け出すと二頭も一緒に駆け出した。

とは言っても、勿論大人達の目の届く所でだけど。

小さな花を見つけてみたり、昆虫を見つけてみたり。

柔らかい草の上に転がってみたり。

そのままちょっぴり日向ぼっこでポカポカの日光を浴びてみたり。

サラサラとどこからか水の流れる音に気付き、二頭と顔を見合わせてまたとっとこ駆け出し。

音を頼りに、少し森に入った所で小さな小さな清涼なせせらぎを見つけて手で水をパシャパシャしてみたり。

生まれたばかりの二頭には全て初めての刺激ばかり。

クリクリの円らな瞳がそんな一つ一つにキラキラ輝く。

そんな姿を微笑ましく見守っていると、ふと水面に別のキラキラした光が映っているのに気付いた。

目を凝らすと、それはそれは綺麗なお姉さんの姿で私達の後ろに映っていた。

そっと振り返ると、風景の透けたキラッキラの光を纏う美女が私達の少し上空で微笑んでいて。

そんな美女と私の視線がバッチリぶつかる。

それだけなのに、凄く驚いたように目を瞠っていた。

幽霊、ではなさそう。というか、悪い気配は全く感じない。

むしろ何だか心地良い気配がする。

それに、本能的にこのままこの美女を逃してはいけない気がしてならない。

「……キレイなおねーしゃん、えと、あの、ボク達とお茶しませんかっ?」

咄嗟に手を差し出しつつ口を衝いて出たのは、それはそれは使い古された安い口説き文句。

き、気まずい……。

〈……きゅっきゅ〉

〈……きゅきゅい?〉

どうしようかと思っていたら、私の横にいた二頭がそれはそれは無垢な瞳で同じようなポーズで一緒に美女を見上げていた。

すると、元々キラキラだった美女が更にキラッキラに輝く。

その上、「まぁまぁまぁ」と言わんばかりに少し紅潮した頬に手を当てている。

あれ。

もしかして、まさかのナンパ成功……?

色々な意味でドキドキしていると、輝いていた美女が何やら手を動かすなり現れた魔法陣らしきモノ。

すると、次の瞬間、その美女の側に今度は水や炎、風、砂を纏ったタイプの違う美女達がそこから姿を現した。

突然呼び出されたのか何事かと目を瞬かせる美女達に、最初の輝く美女がこちらを指し示すと四対の視線がこちらを向く。

あれ、こんな事がさっきもあったよなー(現実逃避)

子竜達まで私を見上げてくれば、最早腹を括るしかない。

えぇい、なるようになぁれ!

「キレイなおねーしゃんたち、ボク達と一緒にお茶しなーい?」

〈……きゅー?〉

〈……きゅい?〉

小首を傾げて、ユーリの持てるポテンシャルをフル活用。

それに同じく小首を傾げ、恐らく「しなーい?」と語尾だけ真似したっぽいそれはそれは可愛い子竜二頭を添えて。

途端に目を輝かせたり、両手で口元を押さえたり、心臓の位置を押さえたり、キラキラ輝く美女の腕をバシバシ叩いたりな四人(?)。

どうやら、新しい美女達にもあのナンパが有効だったみたい。

とは言え、この状況。……本当にどうしようかしら。

怒られる気しかしない。トホホ。