軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28-10 特産品

トカ村収穫祭の翌朝、仁たちはリシア邸で朝食を摂り、のんびりと寛いでいた。

あとは『コンロン3』で帰るだけなので気楽なものである。

村人たちは昨日の後片付けをしているが、仁たちは眺めているだけ。手伝おうとしたら、リシアからお客様にそんなことさせられません、と止められたのだった。

今は、リシアから、村の新しい特産になるかも、というジュースをご馳走になっている。

「うん、これは美味しい。後口も爽やかだし」

「美味しい。これは受ける、と思う」

「これ、おいしい!」

「美味しいですな。大人から子供まで喜ぶでしょう」

「美味しいね。栄養もありそうだ」

「とってもおいしい、です」

仁、エルザ、ハンナ、ギーベック、サリィ、ルウがそれぞれの感想を述べると、リシアは嬉しそうに微笑んだ。

「そうですか? ありがとうございます! 自信が持てます」

「これは、何のジュース?」

初めての味なのだが、どことなく覚えがあるような気もする、と言いながら、興味深そうにエルザが尋ねた。

「これは、ランベルの実のジュースなんです」

そう言いながらリシアはカゴ一杯のランベルの実を出して見せた。

「コケモモ……じゃないな。似ているけど」

それは、地球でいうツルコケモモにそっくりであった。

名前は似ているが、コケモモとツルコケモモは別の植物である。

正確には、同じツツジ科、スノキ属であるが、コケモモは山に、ツルコケモモは湿原に生える。栽培しやすいのはツルコケモモである。

『クランベリー』の名で呼ばれている。果実は非常に酸味が強く、生で食べるよりもジャムやジュースにする。

「これがランベルの実です。山にある湿地や湿原に生えるんですけど、上手く栽培すると1年中収穫できることがわかったんですよ」

昨年のカビによる飢饉騒ぎの時に、食べられる野草・山菜を探させていたところ、北の山中にある小さな湿原でこれを見つけたそうだ。

「寒い環境で育つらしく、村外れで試しに栽培したら、冬でも花が咲いて、春には実がなったんですよ」

「へえ、すごいじゃないか」

仁は感心した。リシアには行動力がある。

この『ランベル』は、赤黒く熟すとかなり甘くなるようだ。

「ジャムも作っています」

そう言ってリシアは小さなビンを出してきた。

「お試し下さい」

仁は蓋を開け、小さなスプーンですくって味をみてみると、甘酸っぱくて美味しい。

エルザとハンナも、

「美味しい。後口が爽やかでしつこくないのがいい」

「おねーちゃん、この味、あたし、すき!」

と絶賛した。

ギーベックとサリィもまた味見をし、美味であると感想を述べる。

「これなら間違いなく特産品になると思う」

「ん」

仁とエルザは太鼓判を押した。

「皆さんにそう言っていただけて良かったです」

リシアは嬉しそうに笑った。

「リシアさんは、えらい」

やや唐突に、エルザが口を開いた。

「え?」

「自分で問題点を見つけ出し、それを解決しようとしている。まず自分でやろうとしている」

「エ、エルザさん?」

「それはとっても難しいこと。それを女性の身で実践している、えらい」

その言葉を、サリィも肯定した。

「ほんとうに、私もそう思いますよ。ともすれば誰かに頼り、縋りたくもなったでしょうに、領主として、あなたは立派です」

「そ、そんな」

予期せぬ褒詞にリシアは慌て、真っ赤になって仁を見た。

(……これがあのリシアか……)

「ジ、ジンさん?」

『私、今のままでいいんでしょうか?』と言って、不安そうにしていたリシアは、立派に己の道を見つけていた。

「あ、あの?」

「……ああ、済みません。リシアさんは立派にご自分の道を歩いていますよ」

「……お、お恥ずかしいです」

その時、なぜかエルザがちょっと膨れた顔で仁を見ていたのだが、それに気が付いたのはエドガーだけであった。

「ジャムにするなら、長持ちさせるにはじっくり煮込み、香りも楽しむなら少し煮込む時間を短くするといいかもしれません」

イチゴジャムを煮込むときのコツを仁はアドバイスしておいた。

季節外れで安くなった、不揃いなイチゴを安く買い込み、七輪に掛けた大鍋で煮てイチゴジャムを作った施設時代を思い出した仁であった。

「ジンさん、いただいた『圧力鍋』、使わせていただいて、その使用感なども報告させていただきますね」

「あ、それは是非お願いします」

実際に使った感想を聞けるというのは、モノ作りをする者にとってありがたい。それを提案してくれたリシアに、仁は感謝の意を表したのである。

* * *

午前10時半頃、仁たちは『コンロン3』でカイナ村へ帰った。

予想どおり、飛行船を見てトカ村の人々は驚いていたが。

カイナ村に戻った仁は、『家』、つまりマーサ宅向かいの方へ向かった。

マーサ宅用メイドゴーレムのサラが毎日掃除してくれているので塵一つ落ちていない。

「お帰り、ジン、エルザちゃん、ハンナ」

「ただいま、おばーちゃん」

「ただいま」

仁とエルザは、ハンナたちと昼食を摂ることにした。エルザは仕度を手伝いに行ったので、仁は手持ち無沙汰になる。

それで、近所を見て回ることにした。

具体的には井戸に設置されたポンプの点検や、温泉のチェックだ。

「うん、摩耗もないし、状態はいいな」

ポンプに関しては問題なし。何せ仁渾身の『 強靱化(タフン) 』『 硬化(ハードニング) 』が掛けられた青銅製なので、非常に丈夫である。

「温泉も大丈夫だな」

湯の花で噴出口が詰まるということもなく、また、汚れたお湯を一時沈殿させて浄化する沈殿池も問題なかった。

ついでに雪室も覗いてみたが、たっぷりと雪が詰まっており、間には野菜類や肉類が保存されていた。

(ああ、そうだ。ミロウィーナさんを温泉に連れて来たらどうだろうかな?)

などと考えつつ、仁はマーサ宅へと戻ると、ちょうどお昼ご飯が用意されたところであった。

「あ、おにーちゃん、ちょうど良かった。おひるごはんできたよ!」

「焼きたてのパン」

「お、それはいいな」

リシアにもらったランベルジャムをさっそく試すことができる。

「あ、やっぱりパンに合う。美味しい」

「こうやって食べると、おいしいね!」

エルザとハンナはすぐに気に入ったようだ。

「ああ、ほんとだね」

マーサも美味しいと言ったので、仁は蓬莱島で栽培できないか検討しよう、と思ったのである。

ランベルジャム以外にも、メープルシロップやワイリージャムの味も楽しみながら、昼食の時間は楽しく過ぎていったのだった。