軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27-20 宇宙船視察

「さて、これで完成だ」

サキの誕生日の翌日、蓬莱島。

サキとグースが地底蜘蛛に関して調査を始めていたとき、仁は『コンロン3』を完成させていた。

老君が、仁の呟きを耳にし、下準備をしていてくれたので完成も早かった。

「見た目は、『コンロン2』と同じに見える」

そうエルザが言った通り、『コンロン3』は、『コンロン2』と同じ外見にすることを心掛けて仁が作った『宇宙船』なのである。

とはいえ、今の段階ではまだ宇宙へ行くには色々と問題がある。

今のところ、大気圏内航行用に限定した宇宙船……それを『宇宙船』と呼んでいいかは疑問であるが……であった。

メリットは航行速度、安定性、積載量、それに安全性である。

普段の使用ではまったく変わらないが、いざという時に違いが出る。

速度的には、大気圏内でマッハ5という超音速を出せるのだ。

ヘリウムで浮かぶ『コンロン2』と違い、浮遊も推進も、全て『 力場発生器(フォースジェネレーター) 』で行う。

普段は気嚢型の船体下部に取り付けたゴンドラに搭乗するが、実際には船体内部にもキャビンがあり、超音速を出すときにはこちらが操縦室となる。

重量もより重いため、風に対しての安定性が段違い。積載量も増えている。

『普段から使って、いろいろと試験データを集める』が、『コンロン3』のコンセプトであった。

一方で、建造中の宇宙船の進捗状況はというと、60パーセントくらいである。

艦体はもう出来上がり、直径300メートルという巨体を、研究所裏の『宙港』に建てられた巨大造船ドック内に聳え立たせている。

支えているのは、望遠鏡のように伸び縮みする12本の着陸脚だ。

少々高低差のある地面でも船体を安定させることができる。

『 御主人様(マイロード) 、今は推進装置の取り付け中です』

確認にやってきた仁とエルザ、そして礼子に、老君が説明する。

「うん、順調そうでよかった」

『はい。今回は特に丁寧な作業を心掛けております』

「内装はどうなっている?」

『はい、階層に分けるまでは終わっておりますので、中をご覧になっていただくことは可能です。ただし移動はまだ徒歩で、となりますが』

そこへ礼子がすかさず、

「お父さま、わたくしが 力場発生器(フォースジェネレーター) を使ってお連れいたします」

と言いながら仁に寄り添ってきた。

「うーん……それじゃあ頼むか」

「はい、お任せ下さい!」

礼子は一言答えると、仁を後ろから抱え込むようにして抱きついた。そして 力場発生器(フォースジェネレーター) を起動。

「では、まいります」

「お、おう」

「行ってらっしゃい」

笑顔で手を振るエルザに見送られ、ふわり、と仁の身体が浮く。礼子に持ち上げられているのだが、強引に、という感じはしない。

礼子が 力場発生器(フォースジェネレーター) の効果範囲をわずかに広げ、仁の身体まで包んでいるからだ。

まずは一番下の階層から。

「まだ隔壁は未実装なんだな」

「そのようですね」

床と天井はほぼ完成しているが、壁がないのでがらんとした感がある。

いずれエレベーターが取り付けられると思われる開口部を通って、仁と礼子は1つ上の階層へ上がった。

「ここは倉庫にする予定でしたね?」

「ああ、そうだ。修理用の資材や、予備の魔導具なんかを置くつもりさ」

とは言っても、何も置かれていないので、見るべきものは皆無。

仁と礼子は更に上へと移動した。

「ここも倉庫、ですか」

「ああ。だが、一部は搭載艇の格納庫になる筈だ」

「お父さまがお作りになったあれですね」

「そうだ」

とはいえ、何も置かれていない殺風景な眺め。そこもそのまま通過。

その上の階層は、多少の機材が運び込まれていた。

「水タンクや食料庫はこの階層になるんだな」

「みたいですね」

水は『 浄化(クリーンアップ) 』『 殺菌(ステリリゼイション) 』を掛けて再利用するが、それでもロスは出るものだし、汚水を再利用して食事に……というのも、精神衛生上よろしくないので、十分すぎる水のストックは必要なのである。

「あとはここに『植物工場』を作ろうかと思う」

「植物工場、ですか?」

「うん。新鮮な野菜や果物、いずれは米や麦も収穫できるようにするんだ」

「自給自足、ですね」

「まあ1日1食、が原則だけどな」

それでも、宇宙船内で食糧が自給できるとしたら画期的であることに間違いはない。

おまけに、空気中の二酸化炭素の活用にもなるのだから。

更に数階層を経て、ちょうど真ん中の階層にやって来た仁と礼子。

『ようこそ、 御主人様(マイロード) 』

宇宙船の魔導頭脳、『大聖』の声が響いた。

「『大聖』か、調子はどうだ?」

『はい、 御主人様(マイロード) 。『 魔力による繋がり(マギリンク) 』が宇宙船全域に及んでおりますので、把握に努めております』

ほとんどの合金にミスリル銀を添加しているので、『 魔力による繋がり(マギリンク) 』を形成するのが非常に楽なのだ。

『現在は、推進装置の取り付けが行われておりますね。『 力場発生器(フォースジェネレーター) 』ですか。素晴らしい 魔導機(マギマシン) です』

製造工程を全て把握する事で、修理する際にスムーズな指示を出せるようになる。

『この中央階は司令室を除くと、ほぼ全部が 力場発生器(フォースジェネレーター) と 魔力反応炉(マギリアクター) です。一部に重力制御魔導装置も備えられており、加速圧に対処したり1Gを発生させたりすることになります』

『大聖』が説明してくれる。

『1つ上の階層には、生命維持関係の装置、医務室、貴重品倉庫、 障壁発生器(バリアプロジェクター) などが設置される予定です』

「うん」

おおまかな構成は仁も知っているが、こうして説明されるとより理解が深まるというもの。

『さらにその上には武器関係が設置されます。中央階を挟んで下方、対称位置にある階層にも武器関係が設置されるはずです』

通過してきた階の説明もしてくれる『大聖』であった。

『その上の階層には娯楽室、疑似温泉、資料庫など。もう1つ上にはゴーレムの待機部屋があります。待機部屋は他にも数箇所設置される予定です』

「うん、それじゃあ一番上まで行ってみることにするよ」

『はい。一番上は展望室です。 地底蜘蛛樹脂(GSP) ・キュービックジルコニア・軟質魔導樹脂・コランダムの4層構造の透明ドームがございます』

キュービックジルコニアは、天然には産しないので、今回は魔族領から輸入した物である。近々、蓬莱島でも天然ジルコンから変成・合成する試みが開始される予定だ。

「眺めが良さそうだな」

『はい。マギ・インバーとハイパーアダマンタイトの2層構造を持つドームカバーが最終的には取り付けられ、保護することになります』

いずれも、硬度と靱性、耐熱性を備えた素材であり、間に入れた軟質魔導樹脂により、小さな穴も塞ぐことができる構造になっているということである。

説明を聞き終わった仁は、礼子に連れられて上へ。

「おお、ここが展望室か」

透明度の高いドーム越しに、今は海まで見える。

何せ、着陸脚の高さを加えると、展望室の高さは320メートル程。

東京タワーに迫る高さ、しかも、東京タワーの展望台よりも高い位置なのである。

「完成が楽しみだな」

「はい、お父さま」

満足した仁は、再び下降し、宇宙船を出た。

下から見上げると、重厚感がある。

「そうすると、あとは衛生設備かな」

トイレや洗面所を、無重量状態でも使えるように考えよう、と仁は思った。

「気流で吸引する様にすれば良さそうだな」

とりあえずアイデアはあるので、その線で試作を作ってみようと考える仁であった。

「問題は、どうやってテストするか、だな……」

『アンにも手伝ってもらいましょう』

「そうだな。そうしよう」

老君の意見に頷く仁。多面的な見方は重要である。

宇宙船開発はまだまだ始まったばかりなのだから。