軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

04-06 蓬莱島のポジション判明

8日目。

「お父さま、スカイ1が報告に来てます」

「ん? 偵察の成果が出て来たのかな?」

朝食を終えてお茶を飲んでいた仁は、待っていた報告を聞くため急いで研究所へ向かった。『館』よりも研究所の方が設備が整っているからである。

仁が礼子と共に研究所の地下ホールへ行くと、既にスカイ1が待っていた。

「お、スカイ1、地上の偵察が一区切り付いたんだな?」

「はい。ここ蓬莱島中心に、周辺の概略図を作成しました」

そう言ってスカイ1は大きな紙を広げて見せた。紙と言っても、白くなめした魔獣の革である。1000年くらい平気で保つような耐久性のある素材だ。

「ふうん……」

仁はその概略図に感心した。なかなかよく描けている。

蓬莱島中心に描かれたその地図には、向かって右すなわち東側はずっと海が。そして西には大陸の一部が描かれていた。

「この大陸が、クライン王国やエリアス王国のある大陸だな」

「はい、仰る通りです」

スカイ1が仁の推測を肯定する。

「よし、この調子で空からの調査は続けてくれ。大陸上空を飛ぶ時、下の人間に気づかれないよう注意するんだぞ?」

「はい。可能な限り高空を飛びます」

「うん、そうしてくれ」

人間だと気圧や酸素濃度や寒さという問題があっても、ゴーレムには影響がない。

続けて仁は地図を見ていく。

「これがエリアス王国に違いないな。こんな形をしているのか。このあたりがきっと、ボートレースした海域だな。で、これがイオ島」

そして更によく見ていくと、

「蓬莱島と大陸の間にもう一つ島があるのか。ずっと小さいけど」

仁は、その島を別荘、というより蓬莱島防衛の前哨基地に出来ないかと考えた。

「飛行機は複座だったよな。何機かで 陸軍(アーミー) ゴーレムを連れて行って、その島を調査するように」

「了解しました」

「で、無人島だったら、そこも我々の島にしたいから、……ついでだ、主だったものを呼ぼう」

仁はソレイユとルーナ、5色ゴーレムメイド、それにマリン1、ランド1も呼んで、今後の構想を説明した。

1.今後、誰かを招く時は、まず『別荘』へ招く。

2.『別荘』はもっともらしく整備して、仁はそこで生活しているように見せる。

3.いざという時はそこをダミーの蓬莱島として扱う。

4.その島の名前は『 崑崙島(こんろんとう) 』とする。

名付け方については仁の趣味である。

「細かいところはこれから詰めるとして、方針はわかったか?」

仁の確認に、そこにいた全員がはい、と答えた。

「手が足りなかったら増やすから言ってくれ」

「はい、 御主人様(マイマスター) 、そちらも整備するのでしたら配下を増やして下さい」

5色ゴーレムメイド達が揃って願い出たので、仁は了承した。他に、マリン1、スカイ1、ランド1も同様。要するに人手不足なのである。

「あー、わかったわかった」

それで仁はその日いっぱい、配下のゴーレムを増産することになったのである。

「お父さま、魔力は大丈夫ですか?」

魔法工学師(マギクラフト・マイスター) とはいえ、魔力には限度がある。

「ああ、まだ余裕はありそうだな」

「やっぱり」

実は、仁の身体はほとんどが魔力素で補完されているため、その保有する 活性魔力素(マナ) の量が桁違い、というか有り得ない量になっているのだ。

仁がそれを他から指摘されて知るのはもう少しだけ先である。礼子は見当が付いていたが、確証がないので黙っていた。

そういうわけで、普通の魔導士ならとっくに魔力切れでへたばっている程の仕事をこなし、最終的に出来上がったゴーレムは、

ソレイユとルーナの配下に5体ずつゴーレムを。名前はプラネ1〜5がソレイユの、サテラ1〜5がルーナの配下である。型は少女型。

5色ゴーレムメイドの配下を各90体。以前からの10体と併せて100体となった。型は女性型。

スカイ、マリン、ランドの各ゴーレムを80体。それぞれ計100体となった。ナンバーは当然21〜100。型は男性型。

「あー、さすがに疲れた……」

風呂でくつろぎながら仁が呟いた。魔力よりも体力的に疲れた。

途中からはソレイユとルーナ、それにプラネ、サテラ達に手伝わせたとはいえ、1日でこれだけのゴーレムを作り上げたのは世界記録であろう。

「礼子、資材の在庫状況はどうだ?」

さすがに大量に消費したので仁も心配になったようだ。

「はい、大丈夫です。使った銅、ニッケル、ミスリル、軽銀、アダマンタイト等ですが、この1000倍のゴーレムを作っても大丈夫です」

1000年間、毎日休まず採掘を続けていただけのことはある。

「元々、この島は鉱物資源が豊富だったのでお母さまはここを拠点に選ばれたのです」

火山には豊富な地下資源が多いということを経験的に知っていたのであろう。噴火の危険は魔法で察知し、緩和していたと礼子は仁に説明した。

「先代はすごかったんだなあ」

現代地球でさえ、火山のエネルギーを御しきることは出来ていないというのに。

「明日の昼過ぎにはポトロックへ行くとするか」

ラインハルトとの約束は10日後。明後日である。

「この8日間で随分いろいろやったなあ」

「はい、さすがお父さまです」

傍らに控えた礼子が相槌を打つ。

「礼子、手伝ってくれてありがとうな」

そんな礼子に仁が礼を言った。

「いえ、私はお父さまのお役に立つために存在するのですから」

そう答えながらも礼子は嬉しそうである。

「助かってるのは本当さ。さて、上がるとするか」

風呂から上がった仁にバスタオルを差し出す礼子。仁は身体を拭って服を着ると、

「礼子、今日の夕食はなんだろう?」

と聞いた。

「確か、魚の塩焼きと、海老フライですよ」

「おお! それは楽しみだ」

油もパン粉も小麦粉も卵もあるので、天ぷらやフライも作れるのである。もちろん仁が教えた。

ウスターソースらしきものはあったので、フライには十分だ。

「あー、美味かった」

食後のペルシカを食べながら仁が満足げに呟いた。

「光栄です、お父さま」

今夜の食事担当のルーナが嬉しげに言った。ソレイユとルーナは最近、礼子の影響なのか少しだけ感情表現が垣間見える時がある。

(でもなあ、やっぱり人間とは違うんだよな)

口には出さず、仁は心の中でだけそう呟く。

礼子にしろ他のゴーレムにしろ、創造主である仁には絶対服従なので、それが時折寂しい仁なのであった。

(やっぱり人は人の中にいたいと思うものなのかなあ)

窓から夜空を見上げながらそんなことを考える仁。

「お父さま、寒くないですか?」

そう言ってくれる礼子に、

「ああ、大丈夫だ」

そう答えながらも、カイナ村での生活を懐かしく思い出す仁であった。