軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

04-05 ギヤボックスと魔導タービン、そして

翌朝、目覚めた仁は、朝食後、歯車作りにとりかかった。

まず、基準となる直線状の歯車を作ることになる。

アダマンタイトを帯状に伸ばしたものを用意。そして歯車の歯を作る。モジュール(歯の大きさ)は気にしない。仁だけの規格だからだ。

「このくらいでいいか」

自動車に使うので、強度が必要だが、アダマンタイトを使う事を考えれば、小さめでも大丈夫そうだ。大きくするのは簡単なので、まずは自分に可能な限り小さいものから始めることに決める。

1つ作った歯と同じものをとりあえず200個作る。これは問題なくできる。

それを向かい合わせに並べれば、歯の間隔は自ずと一定になるというわけだ。

「よし、これで片方だけを帯と『 融合(フュージョン) 』させれば……出来た!」

直線状の歯、ラックの完成である。

「あとは、これに合わせて望みの歯数を持ったラックを作る。……うん、成功だ。で、これを丸く『 変形(フォーミング) 』。これで歯車の外側は出来たわけだ」

この段階で、望みの歯数を持った歯車、その歯の部分が出来ている。言うなれば歯の付いたドーナツだ。

「あとはこの円の内部を埋めるように材料を『 融合(フュージョン) 』させて、と。やったぞ!」

仁の目の前には確かに平歯車が出来上がっていた。

もう1つ、歯数の違う歯車を作った仁は、2つを噛み合わせてみる。それは、綺麗に噛み合い、仁は踊り出したくなった。

平歯車が出来れば、 傘歯車(ベベルギヤ) もなんとか作れる。とは言え、同じ歯数のもの限定だが。

それでも、回転方向を90度変えられるというのは魅力的で、仁の作れる機械の種類が一気に広がった。

「よーし、自動車を作るぞ!」

シャーシはこれまた 軽銀(ライトシルバー) で作り、エンジンは悪のりして4気筒、いや4連エンジンを作った。タイヤもちゃんとゴムタイヤを作り、と、その日の午後いっぱい掛けて自動車を作り上げたのである。

「うんうん、快適だ」

トランスミッションが無いので、アクセルとブレーキだけで操作する。オートマチックというわけではない。これはゴーレムエンジンの出力がフラットだから出来るのである。

しばらく研究所前の平地を走り回って、ご満悦で降りてきた仁に、

「でもお父さま、ゴーレム馬のほうが汎用性がある気がするのですが」

「え?」

礼子の質問が一瞬理解できなかった仁だが、すぐにその意味するところを悟る。

飛行機は 魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン) 。船は 魔法型水流推進機関(マギウォータージェット) 。

ということで陸はゴーレムエンジン、と思った仁であるが、この世界の道路は舗装されていないどころかろくに整地されていない。

そんな世界で自動車の出番がどれだけあるだろうか。

「うーん、自己満足になるのかなあ。まあいいや、この島の中での足にすれば」

ということで、

「礼子、トパズ主導で、島内に道路網を作ってくれ。表面は舗装しなくていいが、『 固化(ソリッド) 』を施して、雑草を防ぐと共に、重い物も運べるようにするんだ」

「はい。タツミ湾、畑、空港などの主要施設優先で工事していいですね?」

「ああ、そうだな」

飛行機用の空港も作ったので、道路の整備が急務だった。各所に大型の 転移門(ワープゲート) も設置してあるが、やはり道路は必要だ。

「あー、腹減った」

もう真っ暗である。

「お父さま、今日の夕食は私が作りました」

「お、礼子がか、それは楽しみだ」

ソレイユとルーナは、飛行機と船を量産するのに忙しかったので、礼子が仁のために料理を担当していた。

「真っ白いパンじゃないか」

「はい」

礼子が小麦を一粒一粒手で皮を剥き、挽いて作った小麦粉で焼いたパンだ。

「うん、うまい」

パンを食べ、野菜と魚のスープを飲む仁。やはり皮の混じらないパンは美味い。

「お米がまだ見つからないので申し訳無く思っています」

「いや、わかってるよ。無い物ねだりはしない。今度行く西の国でも探してみないとな」

港町ポトロックでも米はみつからなかった。それなら西の国ならまた違った珍しいものがあるかも知れない、と仁は期待していた。

そして蓬莱島に戻って7日目。

「どうせならタービンも作っちまおう」

そのセリフで仁の1日が始まった。原理は至ってシンプル。密閉された容器の中に羽根車を置き、風魔法でその羽根を回すだけ。

風はうまく循環させれば空気を外から取り込む必要はないし、空気が外に漏れ出ることもない。なので簡単に出来てしまった。

「おお、やっぱり回転数が高いや」

要するに風車であるから、回転数は高い。そのかわりにトルク(回転力)はゴーレムエンジンには劣る。

「まあ、作っておけば何かの役に立つだろう」

作るのが楽しいのである。

そんな仁のそばで礼子も存在意義を噛みしめている。

仁が作り上げた作品のデータは、礼子の中にも蓄えられ、いつでも複製を作る事が出来るように整理、保存する。仁のための補助記憶装置の役割だ。

「お父さま、武器を作るというお話はどうなったのですか?」

そして、秘書のように、仁が忘れていることを指摘したりもする。

「あー、そんなこと言ったな。防衛力として必要だったな」

仁は考え込む。

「 水流の刃(ウォータージェット) や 光束(レーザー) 、 電磁誘導(インダクション) とかか……」

考えた末、レーザーを標準装備とすることに決めた。

理由は、強度を変えれば非殺傷にもしやすいこと、防御方法が限られること、狙いやすく 躱(かわ) しにくいことなど。

「よし、それじゃあ作るとするか」

さっそく礼子に材料を取ってきてもらい、作製にかかる。構造は簡単。細い懐中電灯のような形で、内部に 魔導式(マギフォーミュラ) を書き込む。

「あとは認証が欲しいな」

「お父さま、認証とはなんですか?」

聞き慣れない言葉に礼子が尋ねた。

「ああ、例えばだな、誰かに奪われたとしても、そいつには使えないようにしようと思ってな」

仁の魔力波形が無ければ作動しないようにする。 魔法波形認証(サーティフィケート) と名付けた。

仁が作ったゴーレムや礼子は全て仁の魔力波形を受け継いでいるから問題なく使用できるというわけだ。

「これでよし」

試作が完成した。見た目はただの筒に見える。拳銃型にしなかったのだ。

「試してみるか」

研究所の外に出て、広場の端に積み上げてある岩の1つに狙いを付け、レーザーを発射。

針のように細い光線が出、数秒で岩を貫通した。

「よし、成功だ」

そう言いながら、設定を少し変え、もう一度発射。今度は少し拡散した光線で、射程は短いが当たった岩をたちまち蒸発させてしまう。

「これは危険だな。緊急時以外使わせられない」

ということで、もう一つ、威力の低い武器を考えることにした。

「麻痺……そうか、スタンガン!」

ブルーランドでビーナと初めて会った時、彼女が持っていた『麻痺の杖』。そういう魔導具が存在する事はわかっている。

「よし、あれより数段上のものを作ってやる」

意気込んだ仁だが、

「お父さま、そろそろお昼ですので昼食をお食べになってからにして下さい」

と礼子に言われ、素直に研究所ではなく『館』へと向かう仁であった。

「今日のお昼はソレイユが作ってくれたのか」

献立はトースト、シトランのママレード、サラダ、目玉焼きである。なんとなく朝食っぽいが、気にしないで食べる仁。

「ごちそうさま」

食べ終わるとすぐに研究所へ向かう。

「相変わらずお父さまは作る事になると周りが見えなくなりますね」

礼子もすぐにサポートのため仁の後を追った。

スタンガンは簡単に完成。以前『麻痺の杖』を見ていたから、欠点を補い、効率を上げた。

その外見は30センチほどの 杖(ワンド) 。そしてもう1つ、警棒型の2種を作った。 杖(ワンド) は自分用に、警棒は警備用だ。

杖(ワンド) は 軽銀(ライトシルバー) で作り、警棒はアダマンタイトとミスリル銀の 複合(コンポジット) 。

「こうなったら 陸軍(アーミー) も作ろう」

仁はそう言って、ゴーレム20体を作り、ランド1から20と名前を付けたのであった。

これで蓬莱島には陸海空軍が揃ったわけである。