軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23-42 打ち合わせ/会議本番

仁たちの打ち合わせはまだ続いていた。

「もしかすると、他の王子を推す派閥が出てくる可能性だってあります」

アンが一つの可能性を示唆する。

『そうなると、さらにこの国の混迷は深まるでしょう。その結果、周辺国にまで飛び火しないとも限りません』

老君が続けた。

「ですので、王太子の即位をはじめとする秩序の回復は早いほどいいのです」

最後はまたアンが締めた。

「……わかった」

仁もその説明を聞き、現状を再認識することができたのである。

『場合によっては、マキナだけでも再度登場させ、他の王子を推す派閥を抑える必要も出てくるやもしれません』

老君が補足する。

「そう、か。そうならないに越したことはないが……その準備だけはしておいてくれ」

『承りました』

そして話はホムンクルスのことに。

「それじゃあ、老君、エルザがコピーしてくれた、アルシェルに似たホムンクルスの記憶はどうだった?」

マキナが蓬莱島へ戻る際に託し、老君が解析していたはずである。

『はい。それにつきましてですが、記憶は本当に無いようです』

「え?」

『つまり、彼女には、人としての記憶すら希薄だと言うことです。文字通り記憶喪失といっていい状態です』

「うーん……」

初めから記憶がないのか、それとも事故でなくしたのか、それすら分からないという。

「……ジン兄、彼女が、ベリアルスさんの捜している妹本人じゃないのはまず間違いなさそう」

エルザもそう言うが、仁は何となくすっきりしない。

「ギガントーアヴルムを率いてグロリアを襲ったアルシェルと比べたらどうなんだろう?」

『少なくともその記憶は無かったですね』

「そうか……」

仁は腕組みをしながら呟く。

「仮に、ベリアルスの妹ではないとしても、誰が作ったのか、それが問題だ」

「ん、確かに」

『彼女を見つけたというヌバリ鉱山には、調査のためレグルス16、通称『ハタル』を向かわせました』

「そうか。そうなると、そっちも報告待ちだな」

今は情報不足のため、考えても無駄になりそうである。仁は、残った懸案事項に話題を移した。

つまり、セルロア王国のゴーレムなどのこと。

「ほとんどの戦闘用ゴーレムはリシャール王にしか従わないようだな」

「はい、ごしゅじんさま。過去、個人護衛用にカスタマイズされたゴーレムの例はありますが、あくまでも少数です。この国のゴーレムのように、命令順位1位以外が空白というのはいささか異常です」

「俺もそう思う」

リシャールという王は、本当に己以外を信用しなかったのだろう。

「……寂しい人生だよな」

「……ん」

その点でのみ、同情する仁とエルザである。

「……だからといって、あの態度はいただけないけどな」

「……うん、許せない」

頷き合う仁とエルザだったが、逸れてしまった話題を元に戻すべく、老君が口をはさんだ。

『 御主人様(マイロード) 、それで、ゴーレムはどうなさるおつもりですか?』

「あ、ああ、そうだな……」

仁は、王太子の即位が決まったなら、停止させたゴーレムの 制御核(コントロールコア) を書き換えるつもりでいた。

「明日は忙しくなりそうだな」

* * *

互いの部屋を行き来するのは禁じられているわけではないが、各国毎の部屋割りをされているため、いささか面倒である。

まして夕食後ともなると、セルロア王国から派遣された護衛の兵士が廊下に詰めており、部屋間の移動は少々、いやかなり鬱陶しい。

ゆえに昨日の『世界会議』は共有スペースである談話スペースや娯楽室を使ったのである。

ショウロ皇国の一行もそれは同じであった。

「ゲーレン、貴方の意見は?」

「はい、陛下。セザール王太子に即位してもらい、当面の間、わがショウロ皇国が後見するのがよろしいかと思います」

女皇帝、ゲーレン・テオデリック侯爵、デガウズ魔法技術相、フリッツ中佐、マテウス大尉、そしてラインハルト男爵らは、そうした下打ち合わせをしていた。

「後見につきましては、我が国一国で行うというようなゴリ押しはしない方が得策かと思います」

これはラインハルトだ。

「そうね、そのあたりは拘る必要は無いと思うわ。各国から同じ人数、監査役を派遣するという方法もあるし」

「いずれにしても、王の交代に乗じた反乱や暴動をできるだけ抑えないとまずいでしょうね。暴動がセルロア王国内だけで収まるという保証もないし」

フリッツが難しい顔で言った。暴動を起こした者たちにとって、国境などと言うものは意味をなさないだろうからだ。隣接する国に暴れ込んで来る可能性も十分にある。

セルロア王国の地方都市の危うさを知っているからこその意見であった。

「そう、ね。そのためには各国から軍を派遣することと、食糧の援助が必要になるでしょうね……」

頭が痛いことばかり、と言って、女皇帝は疲れた笑いをその顔に浮かべ、思わず愚痴をこぼさずにはいられなかった。

「ああ、昨日の会議は楽しかったわね……」

* * *

明けて2月23日の朝がやって来た。

朝食もそこそこに、仁たちは迎賓館の大会議室に集まっていた。

ショウロ皇国女皇帝、ゲルハルト・ヒルデ・フォン・ルビース・ショウロが声を掛け、参加者全員を集めたのである。

「……これで全員かしら?」

とりあえず、列席者の中で最も地位が高い、という理由で、議長を務めている女皇帝が確認を行った。

「陛下、フランツ王国のオランジュ公がいないようです」

「……困ったわね。今日は全ての国で話し合いをしたかったんだけれど」

とはいえ、時間がないことも事実。

「仕方ないわ。集まった者たちだけで話を進めましょう。オランジュ公には後ほど議事録を渡すということにします」

そして女皇帝は、『木紙』を取り出し、各国代表にまずは1枚ずつ配った。

「会議の前に、これを見て欲しいのです」

『木紙』を手に取った各国代表は感心した。

「ほう! これは、セルロア王に贈った紙ですな!」

「確かに手触りの良い紙ですな! しかも薄い」

「これは『木紙』といいまして、木から作った紙です。詳細は今は省きますが、この紙に議事録を記録しようと思っています。……本当は、もっとのんびりした場でお渡ししたかったのですが」

最後の一言は、女皇帝としても言わずにはいられなかったのであろう。

そして臨時の世界会議が始まった。今度は仮ではなく、喫緊の問題についての討議である。

「議題は、セルロア王国の次王をどうするか、ということです」

そのことについては、各国代表たちも考えていたようで、皆一様に大きく頷いたのであった。

「まず、 国選治癒師(ライヒスアルツト) 、エルザ・ランドル媛に要請します。現セルロア王国国王、リシャール・ヴァロア・ド・セルロア王の容態について説明してちょうだい」

「はい。わかりました。リシャール国王は、ワインに含まれていた薬物により……」

エルザは、昨夜仁にした説明と同じ内容を、専門用語抜きで、噛み砕きながら説明していった。

「……で、脳細胞……脳味噌が駄目になっており、魔法でも回復は非常に困難と判断します……」

皆、難しい顔でそれを聞いている。

「……以上です」

「ありがとう。……皆さん、お聞きの通りです。リシャール王は回復の見込みがないようです。これを参考に、意見を述べて下さい。盗聴されている心配もしなくていいですよ。どのみち、会議の結果はセルロア王国に正式通達するのですから」